17 / 36
落ち着かない感情
しおりを挟む
これは一体どういうことなんだろう。
騎士の訓練に参加すると聞いていたのに、どうして私はルカと一緒に視察に来ることになったの?
遡ること数時間前。
ようやくオレフィスが戻ってきたかと思ったら、なぜかルカも一緒だった。しかも今から視察に行くから付いてくるようにとのこと。
それには隣にいたクリスティアも驚いた様子だった。
ルカが視察に行く場所は、怪物が多く出没し、被害が多いところだ。
「あの、騎士の訓練に参加すると聞いてきたのですが…」
「あぁ、君の魔力があまりにも大きくてね。騎士たちの訓練よりも実践的に学ぶ方がいいと判断した」
魔力が大きい?
オレフィスが驚いた様子だったのは、そういうことだったのね。
「気をつけて行ってきてくださいね」
クリスティアに潤んだ瞳で言われたらもう、思わず顔が緩んでしまう。デレデレになっているであろう私をよそに、ルカは顔色ひとつ変えない。
元の設定としてはこの二人が結ばれるはずなのに、状況が少し変わっただけでこんなにも違うのね。
まさかこの時ルカの視線が私の方に向いているなんて、これっぽっちも考えていなかった。
そんなわけで、私はルカと一緒に視察に行くことになったのだけれど…
「あの、私馬に乗ったことがなくて」
「あぁ、知っている」
令嬢であれば普通のことだ。
移動手段は馬車が多いし、そもそも学校やパーティー以外でどこかに行く機会なんてそうそうない。
私の場合は移動する時は瞬間移動を使っていたし。
馬車だと怪物が出た時に対処できないため、馬で移動するのだという。
「場所を教えてください。そうすれば私は瞬間移動で行きますから」
「ダメだ。今から行く場所は危険だからな」
「ではどうやって…」
「私と一緒に乗れば良いだろう」
…はい?
そう言うとルカは馬に乗り、戸惑う私の手をぐいっと力強く引いて自分の前に乗せた。
え、え、え?!
状況が理解できずにパニックになる。
「しっかり捕まっているんだぞ」
そう言うと手綱を引いて馬を颯爽と走らせた。
「あ、あのっ」
「大丈夫だ。怖ければ言ってくれ、速度を落とす」
そう言う問題じゃなくてですね!
馬に乗ること自体が嫌なわけではない。問題なのは、ルカが後ろに乗っていて背後から抱きしめられるような体制になっていること。
馬に誰かと一緒に乗る機会なんて今までなかったから分からないんだけど、こんなに近いものなの?
ふと、小さい頃にポニーの乗馬体験をした記憶が蘇ってきた。ポカポカ陽気で牧草が広がっており、心地よい風を浴びながら大人しそうなポニーが一生懸命ゆっくり歩いて進んでくれたっけ。
…って、今はそんなこと思い出してる場合じゃない。
口数が少ない私を心配しているのか、「大丈夫か?」「気分が悪くなったら言ってくれ」などと声をかけてくれるものの、その度に耳にルカの声が直に響く。
違うことを考えていなければ、なんだか落ち着かなかった。
ルカって、思ったよりも筋肉質なんだな。もう少しひょろっとした人なのかと思っていたけど、手綱を引く腕を見ると筋肉が浮き出ている。
男の人なんだなと思った途端に、顔がじわりと火照るのを感じた。急に恥ずかしくなってくる。
いったい私は何を考えているんだと悶々としていると、馬は走る速度を緩めてやがて止まった。後ろからついてきた騎士たちの集団も同じように止まる。
ここが目的地なのだろう。だけどここって…
「森の中じゃないですか?」
「あぁ。最近ここから怪物が出てくると言う目撃情報が多くてな」
ルカは馬から降りると、私に向かって手を伸ばした。自分で降りられると思ったけれど意外と高く、しかも足を滑らせてしまった私はルカにしがみつくような体制になってしまった。
引き締まった腕がグッと私を支える。さっきから何だか心臓がうるさい。
「気分は大丈夫か?」
顔を覗き込むように言われて、私は思わず後退りしてしまった。
「はい、平気です」
「そうか。これから怪物が出てくる可能性があるから注意してほしい。怪我には気をつけてくれ」
そう言うと、他の騎士たちに指示を出しながら辺りを捜索していく。
ルカは私に側から離れないようにと言い、私の先に立って奥へと進んでいった。
その時、大きな響き声がしたかと思うと、騎士たちが戦闘体制に入るのがわかった。
「皇太子様っ!怪物が現れました!!」
目の前には、今まで倒してきたサイズの怪物が2匹。これなら大丈夫そうだわ。
「マルスティア伯爵令嬢、君は横で…」
シュバっ
よし、片付いた。
ルカの声を聞く前に、私は魔力を内側に集めると、サッと手を怪物の方へと向けた。そのまま、ここだ、と思ったポイントへ魔力を送り込む。怪物たちは奇声をあげて2匹同時に倒れ込んだ。
騎士たちは何が起こったのかわからない様子だった。数名は以前倒した時に居合わせた騎士だったため、その者たちは驚きながらも納得した様子だったが、初めて見る騎士たちは混乱していた。
ルカは驚いたように私を見た後、ふはっと吹き出すように笑い出した。
「さすがだ。君は本当に、大したものだよ」
騎士の訓練に参加すると聞いていたのに、どうして私はルカと一緒に視察に来ることになったの?
遡ること数時間前。
ようやくオレフィスが戻ってきたかと思ったら、なぜかルカも一緒だった。しかも今から視察に行くから付いてくるようにとのこと。
それには隣にいたクリスティアも驚いた様子だった。
ルカが視察に行く場所は、怪物が多く出没し、被害が多いところだ。
「あの、騎士の訓練に参加すると聞いてきたのですが…」
「あぁ、君の魔力があまりにも大きくてね。騎士たちの訓練よりも実践的に学ぶ方がいいと判断した」
魔力が大きい?
オレフィスが驚いた様子だったのは、そういうことだったのね。
「気をつけて行ってきてくださいね」
クリスティアに潤んだ瞳で言われたらもう、思わず顔が緩んでしまう。デレデレになっているであろう私をよそに、ルカは顔色ひとつ変えない。
元の設定としてはこの二人が結ばれるはずなのに、状況が少し変わっただけでこんなにも違うのね。
まさかこの時ルカの視線が私の方に向いているなんて、これっぽっちも考えていなかった。
そんなわけで、私はルカと一緒に視察に行くことになったのだけれど…
「あの、私馬に乗ったことがなくて」
「あぁ、知っている」
令嬢であれば普通のことだ。
移動手段は馬車が多いし、そもそも学校やパーティー以外でどこかに行く機会なんてそうそうない。
私の場合は移動する時は瞬間移動を使っていたし。
馬車だと怪物が出た時に対処できないため、馬で移動するのだという。
「場所を教えてください。そうすれば私は瞬間移動で行きますから」
「ダメだ。今から行く場所は危険だからな」
「ではどうやって…」
「私と一緒に乗れば良いだろう」
…はい?
そう言うとルカは馬に乗り、戸惑う私の手をぐいっと力強く引いて自分の前に乗せた。
え、え、え?!
状況が理解できずにパニックになる。
「しっかり捕まっているんだぞ」
そう言うと手綱を引いて馬を颯爽と走らせた。
「あ、あのっ」
「大丈夫だ。怖ければ言ってくれ、速度を落とす」
そう言う問題じゃなくてですね!
馬に乗ること自体が嫌なわけではない。問題なのは、ルカが後ろに乗っていて背後から抱きしめられるような体制になっていること。
馬に誰かと一緒に乗る機会なんて今までなかったから分からないんだけど、こんなに近いものなの?
ふと、小さい頃にポニーの乗馬体験をした記憶が蘇ってきた。ポカポカ陽気で牧草が広がっており、心地よい風を浴びながら大人しそうなポニーが一生懸命ゆっくり歩いて進んでくれたっけ。
…って、今はそんなこと思い出してる場合じゃない。
口数が少ない私を心配しているのか、「大丈夫か?」「気分が悪くなったら言ってくれ」などと声をかけてくれるものの、その度に耳にルカの声が直に響く。
違うことを考えていなければ、なんだか落ち着かなかった。
ルカって、思ったよりも筋肉質なんだな。もう少しひょろっとした人なのかと思っていたけど、手綱を引く腕を見ると筋肉が浮き出ている。
男の人なんだなと思った途端に、顔がじわりと火照るのを感じた。急に恥ずかしくなってくる。
いったい私は何を考えているんだと悶々としていると、馬は走る速度を緩めてやがて止まった。後ろからついてきた騎士たちの集団も同じように止まる。
ここが目的地なのだろう。だけどここって…
「森の中じゃないですか?」
「あぁ。最近ここから怪物が出てくると言う目撃情報が多くてな」
ルカは馬から降りると、私に向かって手を伸ばした。自分で降りられると思ったけれど意外と高く、しかも足を滑らせてしまった私はルカにしがみつくような体制になってしまった。
引き締まった腕がグッと私を支える。さっきから何だか心臓がうるさい。
「気分は大丈夫か?」
顔を覗き込むように言われて、私は思わず後退りしてしまった。
「はい、平気です」
「そうか。これから怪物が出てくる可能性があるから注意してほしい。怪我には気をつけてくれ」
そう言うと、他の騎士たちに指示を出しながら辺りを捜索していく。
ルカは私に側から離れないようにと言い、私の先に立って奥へと進んでいった。
その時、大きな響き声がしたかと思うと、騎士たちが戦闘体制に入るのがわかった。
「皇太子様っ!怪物が現れました!!」
目の前には、今まで倒してきたサイズの怪物が2匹。これなら大丈夫そうだわ。
「マルスティア伯爵令嬢、君は横で…」
シュバっ
よし、片付いた。
ルカの声を聞く前に、私は魔力を内側に集めると、サッと手を怪物の方へと向けた。そのまま、ここだ、と思ったポイントへ魔力を送り込む。怪物たちは奇声をあげて2匹同時に倒れ込んだ。
騎士たちは何が起こったのかわからない様子だった。数名は以前倒した時に居合わせた騎士だったため、その者たちは驚きながらも納得した様子だったが、初めて見る騎士たちは混乱していた。
ルカは驚いたように私を見た後、ふはっと吹き出すように笑い出した。
「さすがだ。君は本当に、大したものだよ」
684
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる