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私はメイドになりました

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父は伯爵家の騎士に連れて行かれ、伯爵家の庭らしき場所でひどく痛めつけられていたところ、公務のため伯爵家に訪れていた公爵様がたまたまその光景を目にして、止めに入ったのだということでした。


「あの方が来られなかったら、今頃...」


そう言って父は震えていました。私も母も次の言葉を聞きたくなくて、みんなで泣きながら抱き合ったのでした。

 



「...またダメ、か」


様々なお店や商店へ雇って欲しいとお願いに行くものの、ことごとく断られておりました。


「ごめんねぇ、今は人を雇っていないのよ」


これで10回目です。流石に心が折れそうになり、私は街の中心にある噴水が流れ出ている側のベンチによろよろと座り込みました。


父と母は、この街を出て父の実家である隣町の田舎へ移動しようと計画を立てていました。


ですが、そこに行くまでにはかなりの時間とお金がかかってしまいます。せめて旅費だけでも稼いで父や母の負担を減らしたいと考えたのです。


私もそろそろ成人です。嫁ぎ先を見つけて家庭を持っていてもおかしくない年齢ですが、正直私は好きな人さえいませんでした。


田舎に帰ったら、早く嫁ぎ先を見つけて両親を安心させないと、なんて考えていました。




「お前は...」


その時、突然背後から声をかけられました。振り返ると、この間の公爵様が立っていたのです。


「あっ...」


私は気がつくと、公爵様に深々と頭を下げていました。


「こ、この間は無礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした。父から話は聞きました。父の命を助けていただいただけでなく塗り薬まで...」


「おい、顔を上げろ」


公爵様は驚いたように私に言いました。恐る恐る顔を上げると、公爵様は私の手元に持っていた紙をチラッと確認したかと思うと


「...職を探しているのか?」


と聞いてきます。「求職表」を持っていたからでしょう。この町では、働きたい店に直接行ってこの求職表を見てもらい、雇い主から許可が出ればすぐにでも働くことができるという制度がありました。


私が頷くと、公爵様はしばらく考え込むような表情になりました。


「見せてくれ」と私の求職表を確認すると、パッと私の方を見て言いました。


「メイドとして働く気はないか?」




こうして、私はメイドとしてこの公爵家で働くことになったのです。


まぁ、まだまだ色んなことがありましたが、長くなってしまいそうなのでここまで。


旦那様には感謝してもしきれません。元々は父と母と田舎へ行く予定だったのですが、公爵家のメイドとして働ける機会なんてそうそうないものでしたので、父も母も喜んで送り出してくれました。


旦那様の元へ旅立つ日、母は手作りのヘアピンを私にくれました。私の大好きなオレンジ色で作られたヘアピンは、私の宝物となりました。


今も、ここに.......




........




.....え?




な、ないんですけど!!!??
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