あなたはずっと、私の光

ベル

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パーティー会場は想像以上の忙しさだった。次々と料理とワインが運ばれ、テーブルへと運ばれていく。

侯爵家や伯爵家の御令嬢たちが我先にとルカルド侯爵様へとご挨拶に向かい、その両親は侯爵様夫妻と会話を交わしている。

侯爵様は変わらず笑顔を見せながら、上手に交わしている様子だ。御令嬢たちは皆きらびやかなドレスを身に包んだ美しい方ばかり。

可愛らしく振る舞う彼女たちだが、静かに女性同士の火花が散っている様子だった。

貴族たちも大変だ。せっかくの誕生日なのに、このようなパーティーを開いて貴族たちをおもてなししなければならないなんて。

騎士の人たちは料理を楽しみつつも、護衛の役割をするためかお酒を飲む人はいなかった。


「レイラ、そろそろ他のメイドと交代しましょう。しばらく後ろで休んでなさい」

「ありがとうございます」


パーティーも中盤に差し掛かり、メイド長が声をかけてきた。
レイラはフラフラと会場を後にする。


「疲れた…」


会場では気を張っていたから気づかなかったものの、想像以上に疲労が溜まっていた。

休憩所にあるソファに腰掛け、足を伸ばして腕をぐっと天井に向けて伸ばす。

会場から少し離れた休憩場所で腰を落とす。サシャからせっかく代わってもらったのに、ルカルド侯爵様の護衛のためかマルクス様はこちらの方には来なかった。


「マルクス様はちゃんと食べれているのかな…」

「俺がどうかしたのか?」

「…っ!?」


誰もいないと思っていたところにマルクスの声がして、レイラは驚いて振り返った。


「座っていいか?」

「どうぞっ!」


マルクスはレイラと向かい合うように腰掛けた。手には料理やデザートのプレートを持っている。


「何も食べられていなかったのですか?」

「あぁ、護衛の仕事があるからな。…お前は最近ちゃんと食べてるか?」

「はいっ、もちろんです!」

「それなら良かった。…パンの差し入れはもういいのか?」

「いつの話をしてるんですか!当たり前です」

「そうだな」


ふと、マルクス様の表情が緩んだ気がした。

こんな風に話すのは、いつ以来だろうか。
ここに働きにきてから最初の方は何度か会話を交わしていた気がするけれど、ルカルド侯爵様が爵位を譲り受けてからはマルクス様も多忙になってしまった。

他の使用人たちがこの光景を見たら驚くだろう。

マルクス様は冷たい方で有名だから。
ただ不器用なだけで、本当はとても優しい人なのに。


「レイラは、ここでの生活に満足しているか?」

「もちろんです。休める場所があって、毎食美味しいご飯が食べられるんですから」

「そうか。…もっと、裕福な生活をしたいとは思わないか?」

「裕福ですか?」

「あぁ。貴族のように暮らしたいと思ったことはないか?」


どうして急にそんなことを聞くんだろう?
平民で孤児院出身の私が貴族になんてなれるはずがないのに。

不思議に思いつつも、マルクス様の表情はあまりにも真剣だった。


「幼い頃は、確かに憧れはありました。でも、憧れは憧れです」

「そうか…」

「憧れてもなれるはずがないですから。それに、私は今の生活が気に入ってます」


あなたの側で、こうして働けることがとても幸せなんです。

あなたは、私の命の恩人だから。
幼い頃に自覚してからずっと、私はマルクス様が好きだから。

騎士としての功績を残した今は、遠い存在になってしまったけれど。こうして、お話できることが何よりも嬉しいんです。

この気持ちを、お伝えできたらいいのに。
今はもう、軽い気持ちで伝えられるような立場ではなくなってしまった。


「レイラ、俺は…」


「レイラー?そろそろ交代してくれる?」


マルクス様が何か言いかけた時、ドアをノックする音が聞こえ、レイラを呼ぶ声がした。

いつのまにか時間が経ってしまったらしい。


「すぐ行きます!」


レイラは慌てて返事をして、マルクスの方を振り返った。


「マルクス様、何か言いかけて…」

「いや、たいしたことじゃない。俺もそろそろ戻るよ」


そう言うと、マルクスはずっと立ち上がり部屋を後にした。
ドアの前にいたメイドは、マルクスを見て驚いたように頭を下げた。


「びっくりした…マルクス様がどうしてここに?」

「お食事を取る時間がなくて、ここに来たらしいわ」

「でも、騎士たちの休憩場所は別にあるって聞いたわよ」

「そうなの?」


もしかして、私がいたからかな。
…ううん、そんなはずない。
たまたまここが空いていたからよ。

心の中で湧き上がる淡い期待を振り払いながらも、私のことを覚えていてくださったこと、名前を呼ばれたこと、久しぶりに会話できたことが嬉しくて仕方がなかった。
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