罪と罰とは

双葉

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一時間ほどでジュースを買って戻ると多少落ち着いた竹次が泣いていた位置に座っている
「買ってきたんですが、飲みますか?」
竹次はわたしからジュースを受け取ると開けて焼け酒をするかのようにジュースを飲み咽せている
わたしも何とか場を和ませようと「わたしの分もありますから、取りませんよ」と言ってみたが間違っていたらしい
竹次はわたしをみてから「さっきの続きですが、まだ聞きたいですか?」と聞いてきた
「いえ、あなたが奥様を刺したのではない事は知れましたから。ですが話を聞いて疑問に思う事がたくさんあります」
「どうぞ」
「一つ目はなぜ罪を認めたのですか?サインした調書においても裁判においても偽証罪に当たる可能性もあります」
竹次はジュースをぐびっといき、咳き込んだ
「別に嘘はついていませんよ。『お前が殺してのか』と聞かれたらので、はいと答えた。最後、ハルを殺す為に包丁を押し込んだ。殺す為に刺したんですから殺意もあったと思っています」
「でも、そうなるように仕向けた気さえする。話が本当なら殺人ではなく自殺幇助だ。司法を職としたいものとして抗議します。なぜ警察にそんなふうに言ったんですか」
「別にそうしようと思った訳ではないよ。あの時は何も考えられなかった。ただ聞かれた事に答えていたらそうなっただけだ」
「でも、警察がそんなずさんな事をするなんて」
「別にずさんではないだろう。多少の思い込みはあっただろうが、刺したと思う人間がいて、本人も『殺した』と言っている。その時の話もろくに聞けない。でも、包丁もあり、妻の血で汚れている、話も近所から聞いている」
「状況証拠だけじゃないですか。抗議するべきですよ」
「もし、抗議してなんになる?妻は帰ってこない。私が妻を殺した事実は変わらない」
「でも、あなたの名誉は少なからず回復すると思います」
「そんなものは要らない。ここで妻とのんびり暮らせるだけで良い。もしわたしが抗議するとすれば、罪の軽さだろうか」
「え?」
「わたしの罪は、妻の命の重さだ。あんなに軽くて良いのだろうか。妻の命はそんなに軽いのか。警察は妻をすぐに忘れるだろう。忘れるほどの軽さなんだろうと思う。わたしも、知らない人が殺されても気にも留めない。ご近所の方々は妻を覚えてくれている。それがありがたい。わたしが住んでいれば、妻はわたしと一緒に生きているんだ」
竹次の話で判決の時に見た悔しそうな顔を思い出した
あの時竹次は本気で腹を立て悔しがっていたのかもしれない
今わたしは、軽かったのだから良いではないかとは言えなかった
竹次は加害者であると同時に遺族なのだ
その上、本人の希望を叶える為にした事
本当は加害者より目の前で殺された一被害者に近い気がする
それでも近所から後ろ指をさされながら細々と生きている
知らぬ土地に行けば少しは楽になるかもしれないのに、頑なにここに住みたがっていると聞く
法では刑務所から出れば罪を償った事になるかもしれないが、竹次にとってはご近所に責められている事も罪を償っている事になるのかもしれない
そして、ハルが生きていた証の一つを求めているのかもしれない
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