リプレイスメント〜目覚めたら他国の侯爵令嬢になってました〜

ことりちゃん

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7. 最下位専用シート

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(楽しい!!)

 授業が始まってすぐ、私はここが普通の学園ではないことを思い知らされた。

 一見なんの変哲もない机と椅子だったのに、授業が始まると同時に各座席の周囲にシールドが張り巡らされたのだ。

(おしゃべり防止かしら?)

 シールドはうっすらと水色に見えるが、真正面以外は表面に波紋ができて周囲があまり見えないようになっている。
 それにただの木の椅子だと思っていた座席は、いつのまにか座り心地の良い布張りのクッションシートに変わっていた。
 
 何よりこのシールドで作られた繭のような形状が、程よく狭くて妙に落ち着く。先生の声もよく聞こえるし、さすがはサブリエ魔法学園だ。

 さらに私の席は特別仕様らしい。

『~最下位の君へ~集中しないとパチパチしちゃうぞ⭐︎』

 なんて微妙なメッセージが机の上端に浮かび上がっていた。

(ああ、これこそが大魔法師サブリエの愛の鞭なのね……)

 どうやら学年最下位だけが座ることのできる大変不名誉な座席のようだが、この愛の鞭だけは頂けない。


ーーパチッ!

ーーバチバチッッ!!


 よそ見をしたり、板書を写さなかったり。とにかく、授業に集中していないと判断されると椅子から微力ながら雷魔法が発動する仕組みになっている。しかしーー。

(あぁ、気持ちいい)

 これ、私やフェリハのような雷属性の生徒にはお灸どころか……むしろ、ご褒美レベルだ。

 まるで凝り固まった筋肉を程よくほぐしてくれるような、そんなマッサージを受けているようで眠くなる。

(ああ、それで)

 この特別席を譲りたくなくて、フェリハはずっと学年最下位をキープしていたのかもしれない。

(いや、それもどうなのよ。一応、皇太子妃狙ってたのよね??)

 いずれにせよ、学園教育どころかスミュルナのお妃教育も終えている私にとって、授業の内容自体は基礎レベルで退屈なものだった。



▪️



 昼食はランチルームで食べるか、ショップで購入したサンドイッチ等を中庭やテラスで食べるかーー

 午前の授業を終え、今のところ順調に時間を過ごしている。

 初日なのにこうしてすんなり馴染めているのは、全てミハイル殿下から教えて頂いた知識があるからだ。


(この学園の仕掛けや秘密なら、たくさん知ってるわ)


 ミハイル殿下がここに留学していた四年間、私達は一度も会えなかった。けれど月に一度、いや多い時には二度三度、とにかく留学中の四年間、私と殿下は絶えず手紙を送り合った。


(まさかこんな形で追体験できるなんてね)


 本音としてはランチルームへ行ってみたい。けれどーー

(あの人達に会いそうでイヤなのよね)

 夢だと思っていたあの出来事から察するに、「弟」は一方的に責め立てるばかりで聞く耳を持つタイプでは無さそうだ。

 そしてジェム皇太子に至っては、怪我を負ってベッドに寝ている女性わたしに対して氷魔法を使ってくるほど無慈悲で残忍な性格のようだ。


 黒髪だけを見て、一瞬でもミハイル殿下と見間違えた自分自身を張り倒してやりたいくらいだ。

 それからディララ伯爵令嬢。
 あの令嬢のことだから、確実にジェム皇太子にまとわりついていると思われる。

(あー、イヤだ。関わりたくない……)

 
 最悪な気分を振り払いたくて頭を振ったのに、前方から聞きたくもない声が聞こえてきた。


「はぁ……まさか姉上がこっちの方に来るなんて、最悪だ」

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