Sub侯爵の愛しのDom様

東雲

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───グリュッ…


「ッ…!?」

ルノーの指先が、股の間をグッと押したまま、下から上へと撫で上げた。
瞬間、股間から脳天までを突き抜けるような何かが走り抜け、体がビクリと大きく跳ねる。

「…?……へ?」

一瞬の出来事に、脳は驚いたまま、現状を理解することができない。
ただ股の間にじんわりと広がった何かに、余韻に酔ったように四肢はひくつき、心臓がドクドクと脈打った。

(なんだ…?)

言葉にし難い感覚に混乱したままルノーを見遣れば、瞳を細めて微笑む彼と目が合った。

「ル、くん…?今の、な…っ、んひゃっ!?」

問い掛けようとした言葉は、続けて訪れた謎の衝撃によって無理やり奪われ、開いていた口からはおかしな声が出た。

───くちゅ、くちゅ、くちゅ…

股間部に添えられたルノーの指先がゆるゆると動きだし、濡れた股の間をゆっくりと撫で始めた。
強くも弱くもない絶妙な力加減で股の間を押しながら、ルノーの指が上下に滑る。
その動きは優しく、緩慢なのに、皮膚の下にある肉をやんわりと揉むように押されるたび、言葉にし難い熱が込み上げ、腰が揺れた。

「やっ、や、まって…!」

先ほど味わった、脳天を突き抜けるような鋭さはない。
その代わり、腹の底を押し上げられるような鈍い圧迫感と、肉の内側を弄られているようなおかしな感覚が、じわじわと腹の奥に溜まっていった。

「うぁ…、や、まって…っ、ルゥくん…!」

痛い訳じゃない。苦しい訳でもない。
ただ性器の付け根を刺激され、吐精欲とは異なる漏れてしまいそうな刺激に、腰の震えが止まらず、開いていた股を反射的に閉じていた。
また叱られてしまう、などと考えている余裕なんてない。
ただ得体の知れない熱から逃げたくて、それでもルノーの指先は止まらなくて、徐々に体がおかしくなり始める。

「あ、あ、あっ、だめっ、だめ…!」

濡れた股を撫で上げられるたび、肌が粟立った。
内側の肉を強めに抉られるたび、おかしなほど体が跳ね、勝手に嬌声が漏れた。
両の太腿で挟んだルノーの腕。その奥で、指先だけが動き、肌を撫でる。その感触は擽ったくて、なぜか少しだけ怖くて、ルノーの手から逃げようと、下半身が勝手に暴れ出した。

「やだ…!ルゥくん…っ、ひっ!?」

それを叱るように、股を押す力は強くなり、緩やかだった動きは速さを増した。
股の間に差し込まれた手と、ぐちゅぐちゅと響く濡れた音。ルノーの指が敏感になっている肉を抉るたび、腹の底でぶわりと生まれ続ける快感に、瞳からは新たな涙が零れた。

「やだ!ルゥくん…っ、もうやめてくれ…!」

無言のまま、股の間を撫で続けるルノーが怖くて、得体の知れない熱が怖くて、ふるふるとかぶりを振る。
ルノーの空いた片腕に縋りつき、体を守るように丸めれば、ようやく股を撫でていた指先が止まった。

「はぁ…、はぁ…」

甘い疼きで痺れる股を解放され、ホッとしたのも束の間、“ルノーの手を止めてしまった”という罪の意識が即座に追いかけてきて、心臓がドクリと跳ねた。

怒らせてしまったかもしれない。
呆れさせてしまったかもしれない。
落胆させてしまったかもしれない。

勝手に行為を中断させてしまったこと以上に、ルノーへの信頼を自ら裏切ってしまったような罪悪感から、胸の臓器が騒ついた。

「…ご、ごめんなさぃ…、ルゥくんの邪魔して、ごめんなさい…っ」

膨れた罪の意識から、謝罪の言葉が溢れた。
ルノーに失望されたくなくて、嫌われるのが怖くて、怯えるように言葉を吐けば、抱き着いたルノーの腕が僅かに揺れた。

「……ベル」
「っ…!」

名を呼ばれ、ビクリと肩が跳ねる。
彼は、どんな顔をしているだろう?なんて言われるだろう?
ルノーの反応を見るのが怖くて、でもこのまま丸まっている訳にもいかなくて、恐る恐る顔を上げると、傍らのルノーを見上げた。
恐々と見上げた先───視界に映ったのは、困り顔で微笑むルノーだった。

「ベル、手を抜くから、足の力を緩めてくれる?」
「え?……あっ、は、はい」

一瞬、何を言われてるのか分からず、妙な間が生まれるも、すぐに自分の両足でルノーの腕をぎゅうぎゅうと挟んでいたことを思い出し、慌てて股を開いた。
足の力を緩めれば、するりとルノーの手が抜け、同時に身を屈めた彼の顔が、視界いっぱいに広がり、反射的に瞳を閉じていた。

「ん…」

重ねた唇の隙間から入り込んだルノーの舌が、舌先を擽るように舐め、そのままゆっくりと離れていく。
短くも優しい口づけは、気持ちを落ち着かせるには充分で、唇が離れる時には、怯えるように震えていた鼓動は鎮まっていた。

「…ごめんね。こんなにすぐ気持ち良くなってもらえると思ってなくて…いきなりで、怖かったですね」

チュッ、チュッとリップ音を立てながら、頬や目元にルノーの唇が触れる。
優しいキスの雨に、強張っていた体からは力が抜け、とろりと溶けてしまいそうな心地良さが全身に広がった。

「あの…、ごめんね…」
「謝らないで下さい。急なことで、びっくりしちゃったんですよね」
「…うん」
「先に何をするか、お伝えしておくべきでしたね」
「あ…」

そう言いながら、ルノーの手が再び股間に伸び、睾丸をゆるゆると優しく撫でた。
それだけで敏感になった体は震えたが、なんとか足を開いたまま耐えると、彼の指先がそっと股の間に触れるのを見守った。

「んぅ…」
「ふふ、これだけでベルは気持ち良いんですね」
「だ、だって…」

ルゥくんが触るから…そう言いそうになり、慌てて唇を喰めば、それを恥じらいと受け取ったのか、ルノーがクスクスと楽しげに笑った。

「僕はとても嬉しいですよ。ここで気持ち良くなれるってことは、でも気持ち良くなれるということですからね」
「…ナカ?」

「っ!?」

ナカとは?と一瞬呆けた直後、股の間に添えられていたルノーの指先が滑るように臀部の隙間に潜り込み、後孔の縁に触れるか触れないかのギリギリで止まり、息を呑んだ。

「ここ、お尻の奥に、とっても気持ち良くなれるエッチなしこりがあるんですよ」
「っ…」
「お尻の中、お腹側にあるしこりですが、こうやって外から刺激してあげることもできるんです」

囁くような声と共に、ルノーの手が後孔の縁から離れ、ゆっくりゆっくり股の間を撫で始める。

「ぁ…ゃ、や…」
「ここ…会陰と呼ばれる場所ですが、この下の辺りに、お尻で気持ち良くなれる箇所があるんですよ。…ほら」
「ひゃうっ!?」

ルノーの声と重なるように、会陰を強めに押され、先ほど味わったばかりの衝撃が足の付け根から湧き上がり、ビクンと体が跳ねた。

「ひ、や…、それや…、ひゃっ!?」
「指でぐりぐりってされてる所、気持ち良いでしょう?」
「あゃっ、やだ、やだっ、それやだぁ…っ」

さして力は入れてないだろうに、ルノーの指が会陰を緩く押しながら、円を描くように撫でるたび、漏れてしまいそうな、おかしな感覚が生まれる。
じんわりと広がるような熱は、股から腰、腰から全身に広がり、湧き上がる何かに、ふるふると首を振った。

「だめ…っ、ルゥくん…!」
「どうして?気持ち良いでしょう?」
「あや、やっ…」

くちゅくちゅと股の間から響く濡れた音と、会陰を摩るルノーの体温。
互いの熱に染まった潤滑剤は人肌に温まっており、ぬるり、ぬるりと肌を撫でられるたび、快感の波が大きくなる。
このままではイッてしまう───股を撫でられているだけで達してしまいそうな体に、僅かに焦りが生まれた、その時だ。

「アッ、やっ、まって!だめ!今は…っ、あぁぁっ!」

片手を股の奥に差し込んだまま、ルノーが身を屈め、ツンと立ったまま震えていた乳首に突然吸い付き、堪らず背が仰け反った。

「ふゃっ、まっへぇ、まってぇ…!」

つい先ほどまで、ルノーの舌と指先で延々と嬲られ、舐られ、いじめられた乳首は、立派な性感帯へと変貌していた。
会陰から響く快感が体を駆け抜けるたび、連動するように疼いていた胸の突起。
その敏感な肉を、なんの前触れもなく口の中に攫われ、熱く蕩けた舌で潰され、性器からはとぷりと愛液が漏れた。

「ルゥくん…!だめ!イッちゃう!イッちゃ…っ!」

くちゅくちゅと響くのは、乳首をしゃぶる音か、会陰を撫で回す音か。
乳首を舌先で弾かれるたび、腰は戦慄き、会陰から生まれる快感と混じり合った熱が、股間から脳天までを一気に駆け上り、呼吸を忘れさせた。

「いぅ…っ、~~~ッッ!!」

四肢が引き攣るような絶頂に、堪らず腕を伸ばすと、胸に吸い付いていたルノーの頭を抱き寄せ、彼の体に抱き着くように身を丸めた。

「ッ……!!ひはっ…、はぁっ、はぁっ…」

視界がチカチカする。頭がクラクラする。
必死に酸素を取り込みながら、揺れる視界で天井を見上げると、絶頂の余韻でぼぅっとする意識のまま、腕の中の温もりを抱き締めた。

(なんだ……今の…)

股と乳首への刺激だけで達してしまったが、それに対して恥じらっている余裕もない。
ジンジンと痺れる会陰が落ち着かなくて、未だに触られているような感覚が残る股をもじりと擦り寄せ、大きく息を吐く───と、そこでようやくルノーを全力で抱き締めていることに気づき、一瞬で意識が覚醒した。

「すっ、すまない!大丈夫か!?」

それなりに鍛えている体は、腕力だってそれ相応だ。目一杯の力で抱き締めてしまった焦りから、慌てて腕を解くと、胸に押しつけていたルノーの頬に両手を添えた。

「ルゥく…、…?」

すべらかな頬を両手で包み、急いで上向かせた顔は、今まで見たことがないほど赤く染まっていて、驚きから思わず凝視してしまった。

「…大丈夫かい?」
「……はい。大丈夫、です」

どこか歯切れの悪い返事に首を傾げつつ、淡く色づいた頬を撫で、汗ばんだ肌に眉根を寄せた。

「ルゥくん、少し休んだ方が…」

火照ったように染まった顔は、思いきり胸に顔を押し付けてしまったが故の酸欠かもしれない。
反応の薄いルノーが心配になり、一度起き上がろうと体勢を変えた───その瞬間、はたとあることに気づき、ぴたりと動きを止めた。

(あ……)

抱き寄せたことで、密着したルノーの体。
その一部、太腿に当たる不自然に固い肉の感触に、体温がぶわりと上昇した。

(……勃ってる…)

恋人同士の情事なのだ。当たり前と言えば当たり前のことなのかもしれない。
ただ自分の痴態が、ルノーにとって性的な刺激になっていたのだという事実が、無性に恥ずかしくて、でも嬉しくて、固まったまま動けなくなってしまった。

(こ、これは、どうしたら…)

熱が籠ったように茹だった頭で、この状況からどうすべきかぐるぐると考え込むこと数秒、ふぅ…と小さな吐息が零れる音が聞こえ、ハッとしてルノーを見た。

「…バレてしまいましたね」
「いや、えっと…」
「隠しておこうと思ったのですが、ベルが急に抱き締めるので…」

(……隠す?)

頬を染めたまま苦笑するルノーの言葉が胸に引っ掛かり、それと同時にある考えが脳裏に浮かんだ。

…もしや、彼は昂った熱を隠したまま、行為を終わらせるつもりだったのだろうか?

(どうして…)

なぜ、と思いつつも、なんとなくの答えは、自分の中で出ていた。
少し強引で、でも優しくて、決して無理強いはしない彼のことだ。
もしかしたら、今日は最初から前戯だけのつもりで、ルノー自身の熱を吐き出す予定はなかったのではないか…そんな考えに至り、知らず眉間に皺が寄った。

(…二人で、してることなのに…)

正直に言えば、与えられる快楽を享受するばかりで、経験も無く、知識も薄い自分がこんなことを考えるのはおかしいのかもしれない。
それでも、自分だけが気持ち良くなって終わるのは違う気がして、きゅっと唇を喰んだ。

「ル、ルゥくん…」

自分だけ気持ち良くなるのは嫌だ───僅かに芽生えた不満は、そのまま声になって口から溢れた。

「ルゥくんも、一緒に気持ち良くなってくれなきゃ嫌だ…!」

情事に相応しい誘い文句なんて知らない。
ただ想いをそのまま言葉にすれば、ルノーの瞳がパチリと瞬き、続けて緩やかに破顔した。



「服を脱ぎますから、ベルはその間にお水を飲んで下さいね」

色気も甘さもない言葉を口にしてすぐ、ルノーの手でゆっくりと体を起こされると、グラスに入った水を渡された。
ベッドの上に座り込み、受け取った水を口にすれば、長い情交で乾いていた体が心地良く潤う。
ほぅ…と息を吐きながら、ふと視線を横にずらせば、ベッドの脇で衣服を脱ぎ捨てるルノーが映り、慌てて手元のグラスに視線を落とした。

(…これから、何をするんだろう)

期待か緊張か、トクトクと鳴りだした胸にソワリとしながら、残りの水を一気に煽った。

「お待たせしました」
「んくっ…、ひゃい」

ゴクリと嚥下するのと同時にルノーに声を掛けられ、おかしな声が出るも、ルノーはクスリと笑うだけだ。
空になったグラスを彼の指先に奪われ「あ」と思う間もなく、ガウンを羽織ったルノーがベッドに乗り上げた。

「ルゥ……ん…」

そのまま優しく押し倒され、自身の濡れた唇に、少し乾いたルノーの唇が吸いつくように重なった。
それが妙に嬉しくて、潤った舌を自ら差し出せば、その先端をちゅうっと音を立てて吸いながら、ルノーの唇がそっと離れていく。

「ぁ…」
「…物欲しそうな顔をして」
「う…」

すぐに唇が離れてしまい、少しだけ寂しく思っていたことを見透かされ、恥ずかしさから目が泳ぐ。

「キスするの好き?」
「…ぅん」
「ふふ、これからもいっぱいしましょうね。…さあ、それじゃあ、ベルと一緒に気持ち良くなりたいのですが、ベルは僕に何かしたいですか?」
「?何か…?」
「例えば、性器を触りたいとか…何かご希望はありますか?」
「えっ」

そう言われて、ようやくルノーの言わんとすることに気づく。
つまりはルノーに対し、自分がどういった奉仕を望んでいるか聞かれている訳だが…そこまでは考えていなかった。

(何かって…)

自慰行為すら最低限だった身で、いきなり奉仕などできようはずもない。
ルノーに教えてもらえるのなら、性的奉仕も精一杯学ぶつもりだが、現時点で自分にできることなど手淫が精々だろう。
その上で、「それをしたいのか」と問われれば、答えに窮してしまう訳で…

「えっと…」
「はい」
「……すまない。その、ルゥくんにも気持ち良くなってもらいたいのは本当だけど、私が…その、何かしたいか…とかは、考えてなくて…」

言いながら、語尾がどんどん小さくなる。
「一緒に」と口にしておきながら、結局はルノーに身を委ねるつもりだった自分に気づき、不甲斐なさから落ち込んだ。

「…ごめんなさい」
「ベル。素直に謝れるのは良いことですが、悪いことをしてないのに謝るのはいけませんよ」
「でも…」
「僕はベルが僕のことを想って、二人で一緒に気持ち良くなりたいと言ってくれて、とても嬉しかったですよ。何かしたいことがあるか尋ねたのは、ベルの希望があるならば、と思って聞いただけです。…無いなら、僕の好きにしてもいいですか?」
「…うん」

(ルゥくんの、好きに…)

ルノーがどんな奉仕を望んでいるのかは分からなかったが、それでもコクリと頷いた。
ほんのりとDomの欲に染まった物言いに、ドキドキと高鳴る胸を押さえながらルノーを見つめれば、満月のような瞳が美しい弧を描いた。

「因みに、ベルは僕の性器を見たいですか?」
「あぇっ!?」
「僕ばかりベルの体を見るのは不公平かと思って…見たいです?」
「え…えと…」

(性器って…つまり…ルゥくんの…)

つい想像してしまい、頬がカァッと熱くなる。
唐突な二択に動揺が止まらないが、あえて見せてもらう、というのも妙に恥ずかしく、ましてや「見せてほしい」なんて、とてもじゃないが口にできない。

「ベル?」
「その…」
「…恥ずかしい?」
「う、うん…」
「それじゃあ、また次の機会までおあずけですね」
「ん」

恥ずかしさを隠すような余裕もなく、コクコクと頷けば、頬や目元に口づけが落ちた。
『次の機会』という言葉に性懲りもなくドキドキしながら、キスの雨を受けること暫く、不意に口づけが途切れ、こちらを見つめる金色と視線が絡んだ。

「…ベルが僕のことを想ってくれるのは、とても嬉しいです。でも、ベルはたくさんイッた後で、体も辛いはずです。無理をしなくても、いいんですよ?」

穏やかにそう告げるルノーに、僅かに目を見開く。
恐らく、これは最終確認なのだろう。言外に「ここでやめてもいい」と言われていることに気づくも、すぐにふるりと首を横に振った。

「大丈夫だ。…ルゥくんの、好きにしていいよ」
「!…もう、貴方は本当に……怖いことも、痛いこともしませんからね」
「ん…」

呟くような声にドキリとしながら頷けば、唇に触れるだけのキスをして、ルノーがゆっくりと上体を起こした。

「それじゃあ、まずはうつ伏せになって下さい」
「うつ伏せ…?」
「ええ。できることなら、ベルの可愛いお顔をずっと見ていたいのですが、今の体勢のままでは、少し難しいので…」
「…?分かった」

難しいとはどういう意味だろう?
ルノーのしたいことも分からぬまま、その場で体の向きを変えると、うつ伏せになった。

「じゃあ次は、そのままお尻だけ上げて下さい」
「え!?」

当然のことのように言われ、ギョッとする。思わずうつ伏せのまま振り返るも、ルノーの表情は穏やかなままだ。

「僕の好きにしていいのでしょう?ほら、お尻を上げて?」
「う…」

…確かに、好きにしていいと言った。
自分の言葉を嘘にできるはずもなく、うつ伏せのまま膝をつくと、のろのろと尻だけを上げる。
既にガウンの意味を成していない布が臀部を隠してくれるはずもなく、剥き出しの尻がルノーの前に晒されている恥ずかしさから、「ぐぅ」と喉の奥で唸り声が鳴った。

「ちゃんとお尻だけ上げられて、偉いですね。そのまま足はぴったり閉じて……そう、上手ですよ」
「うぅ…っ」

ルノーに言われるがまま構えた体勢は、尻だけを高く上げ、ルノーの前に突き出すという非常に恥ずかしいもので、顔が燃えるように熱くなる。
好きにしてとは言ったが、恥ずかしいものは恥ずかしい。が、ここで嫌がることもできない。
空気に晒された臀部にはルノーの視線が突き刺さり、込み上げる羞恥に閉じた太腿がブルブルと震えた。

「ああ…、本当にベルのお尻は美味しそうですね」
「ふひゃっ!?」

ここから何をするのだろう…そんなことを考えていると、小さな呟きと共に突然尻を撫でられ、大袈裟なほど体が跳ねた。

「…食べてしまいたい」
「えっ、まって、ルゥく、ひっ!?」

チュッ、チュッというリップ音と共に、臀部に柔らかな唇の感触が伝わり、同時に片手で尻の肉を撫で回され、ビクビクと体が震えた。

「やっ、食べないでくれ…!」
「ふふっ、そうですね。…食べるのは、また今度にしましょう」
「ひぅっ」

柔らかな肉を味わうように、ルノーの舌が臀部をベロリと舐め上げ、ふるりと肌が震えた。
それだけで落ち着いていた熱はあっという間に再熱し、吐く息にも熱が籠る。

「ルゥくん…」
「ベルったら、可愛い声を出して……僕もキツイですし、そろそろ一緒に気持ち良くなりましょうね」
「ん…!」

ああ、いよいよだ。
何をされるのかは分かっていないが、後孔を弄られる心配はないはずだ。
自然と荒くなった呼吸を整えながら身構えていると、突然臀部の間に液体を垂らされ、驚きから跳ねた爪先が宙を掻いた。

「な、なに…?」
「大丈夫。潤滑剤ですよ。もう充分濡れてますが、念のため足しておきましょうね」

ダラダラと零れる潤滑剤は、臀部の谷間に入り込み、会陰を通り、太腿を伝う。
液体が肌を伝う感覚に、そわりとしたのも束の間、 ルノーの両手が腰骨をそっと掴み、思わぬ動きに腰が跳ねた。

「ルゥくん…?」
「ベル、大丈夫ですから、怖がらないで」
「…ん」

ルノーは、嘘は言わない。
挿入されるのでは…と身構えてしまった体の強張りを解き、ホッと気を緩めた───その瞬間、閉じた太腿の間に、温かな何かがぴとりと触れ、ギクリと心臓が跳ねた。

(え…?)

肌に触れた柔らかくも固いそれに、目を見開くのと重なるように、ルノーの低く呟くような声が耳に届いた。

「いきますね」
「うそ、ま、まって、ルゥ…ッ、ひっ…!」

刹那、閉じた太腿の間をこじ開け、にゅぷりと侵入した肉───僅かな隙間を割り開くように、ぬめりを帯びたまま奥まで入り込んだに、ゾクゾクとした悪寒が背筋を駆け抜けた。


「~~~っっ!!」


反射的に逃げそうになった腰はがっちりと掴まれ、一度も止まることなく、固い肉の塊が股の間を突き進む。
そうして全部が股の間に消えると、臀部にはルノーの腰がぴたりと密着し、その体温が、今の状況をより鮮明に脳に伝えた。

(こ、これ…ルゥくんの…)

自身の太腿の間に感じる熱。
そこにあるのは、間違いなくルノーの性器で、その生々しい感触と、臀部にぐっと押し付けられた肌の温度に、体温が一気に上昇した。

「ル、ルゥくん…こ、これ、なん…」
「お尻に入れなくても、こうすれば、二人一緒に気持ち良くなれますよ」

背を向けているため、ルノーの表情は見えない。
それでも、艶めいた声は彼の感情を伝えてきて、それに悦んだ体がもじもじと体を揺らした。

「ベル、可愛いお尻を振ってどうしたの?早く動いてって、お強請りですか?」
「ち、ちが…」
「…なんて、ごめんなさい。僕がもう限界です」
「え?あっ、ひっ!」

呟くような声が聞こえたのと同時、股で挟んだルノーの性器がずるるっと引き抜かれ、抜け切る前に、再び奥まで勢いよく押し込まれた。

「ひぁっ!?」

瞬間、ルノーの性器が自身の性器と睾丸を擦り、肌が粟立つような快感が走った。

「は…、うそ、なん…、やっ…!」

じんわりと広がった快感の波が収まらぬ内に、再び性器が抜け、押し込まれ、次第に規則的な抜き差しへと変わっていく。
潤滑剤と自身精液で濡れた股の間を、ぬちゅぬちゅと淫猥な音を立てて性器が出し入れされ、そのたびに生まれる快感に、堪らず声が漏れた。

「あっ、あっ、あっ、だめ…!」

汗ばんだルノーの肌が臀部に当たり、肉同士がぶつかる振動で、体が前後に揺れる。
本当に性交しているかのように錯覚してしまう動きに、頭はクラリと揺れ、股から延々と生まれる快感は、肉体を容赦なく責め立てた。

「ひっ、やっ、だめ…!まって、止まって…!」

性器が股の間を行き来するたび、自身の性器を擦られ、ルノーが腰を打ちつけるたび、先ほどまで弄られていた会陰をぶたれ、気持ち良さが途切れず、涙が零れた。

「やだ、やだ…っ、もうや…!」
「……ベル、逃げないで」
「ひきゅっ!?」

無意識の内に逃げようとした体を引き戻され、腰を強く引かれる。そうして叱るように、一際強く腰を打ちつけられ、パンッと臀部を叩かれるような音が響いた。

「~~~…ッ!」
「もう少しだから…っ、良い子にしてて…!」
「ひぅ…ひゃ、あっ、あっ…!」

一瞬の停止の後、すぐに再開した抜き差しに、ただ喘ぐことしかできなくなった。
全身熱くて、額からじっとりと汗が流れる。
瞳からは生理的な涙が溢れ、開きっぱなしの口からは嬌声が零れた。
ルノーの動きに合わせて体が揺れ、ベッドがギシギシと軋み、そこに肉同士がぶつかる音が混じる。
尻と会陰を優しく叩かれ、性器をルノーの性器で擦られ、ぬるつく睾丸を転がされ、ゾクゾクとした快感が止まらず、閉じた太腿は痙攣するように震え続けた。

「イク…っ、イ、く…ッ、ルゥく…っ、イッちゃう…!」

本当に交わっている訳ではないのに、繋がっているような交わり方は恥ずかしくて、恥ずかしくて、でも気持ち良くて、肉体は既に絶頂寸前だった。

「ええ、僕も…イキそうです…っ」

ふと耳に届いた、乱れた呼吸に混じったルノーの声に、溶けた思考がゆるりと動く。
背後にいるルノーを探すように、無理やり首を動かすと、見えない彼に向けて懸命に言葉を紡いだ。

「ルゥく…っ、ルゥくん、きもち…?」
「…!」
「ルゥくんも…、きもちい…っ?」
「…ええ、とっても気持ち良いですよ、ベル」
「ふ…、よかった……あっ!?あっ、やっ、まって!」
「もう…っ、貴方は、本当に…!!」

ルノーと一緒に気持ち良くなれた───それが嬉しくて嬉しくて、頬がへにゃりと緩んだ。
だがそれも一瞬のことで、すぐに激しいものへと変わった律動に、緩んだ口元からは唾液が垂れ、一気に膨れ上がった吐精欲に、全身の筋肉が収縮した。

「あぁぁっ!だめ!ルゥくん…っ、イッちゃう!イッちゃう…っ、うぅ~~~…っ!!」
「ぐ…っ!」

一瞬で駆け抜けた絶頂に、ガクガクと震える太腿の間でルノーの性器が膨らんだ。
直後、股の間に液体がびしゃりと広がり、その熱さに、ぶるりと肌が粟立った。

(……あ)

ルゥくんの精液だ───数度の絶頂と疲労でぼんやりとする頭で、それを認識すれば、堪らないほどの愛しさで胸が満たされ、吐精したはずの性器がぴゅくりと蜜を吹いた。
とろとろと股の間を流れていく温かなそれは、ルノーが自分と共に気持ち良くなってくれたという何よりの証で、多幸感から頭がふわふわし始める。
そうこうしてる内に、股の間からルノーの性器がゆっくりと抜かれ、限界だった体はマットレスの上にぽふりと落ちた。

「はぁ……はぁ…」

重度の疲労感で体はまったく動かせないが、それでも今は、その倦怠感すら気持ち良い。
ただ気が抜けたせいか、肉体を酷使しすぎたせいか、信じられないほどの睡魔に襲われ、強制的に意識が薄れ始める。

「…るぅく……るぅ…」

霞み始める意識の中、朦朧としながら彼の名を呼べば、馴染んだ温もりが片手を包み込み、その甲に吸いつくようなキスが落ちた。

「たくさん頑張ってくれて、ありがとう、ベル。貴方と一緒に気持ち良くなれて、幸せで胸がいっぱいです。…後のことは僕に任せて、ゆっくりお休み下さい」
「…ん…」

閉じかけた視界の中、こちらを覗き込むルノーの顔が映る。
愛らしい笑みを浮かべたその頬は薔薇色に染まり、幸せそうなその笑顔が見れた幸福感に、緩んだ意識はふつりと途切れた。




───次に目覚めた時、時刻は既に真夜中で、生まれて初めて無断外泊をしてしまった衝撃から、飛び起きることになるのだった。










--------------------
大変長らくお待たせ致しました!これにて初エッチのターンは終わりです!
書きたいことが多すぎて(お尻叩きとか、会陰責めとか、素股とか)長々となってしまいましたが、お付き合い頂き、ありがとうございました!

また、更新が2ヶ月弱途絶えてしまい、誠に申し訳ございませんでした。
他作品や近況ボードでもご報告させて頂いたのですが、リアル諸事情によるメンタル面の問題と、熱中症による体調不良で、肉体的にも精神的にも辛く、筆が止まっておりました。。。

既に回復済みですが、なかなか調子が戻らず、更新が遅くて申し訳ない限りです…oyz
ペースを戻せるよう、頑張って書いていきたいと思いますので、今後も彼らのイチャイチャを見守って頂けましたら嬉しいです!


東雲
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