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出会い
24話
しおりを挟むハッと我に返った蓮花は、それを表に出さないよう自然な流れで椅子を引いた。見とれていたのは一瞬だったがまるで時が止まったような感覚だった。緩やかな動作で椅子に座った綉礼の横で中腰になり挨拶をする。
「本日、綉礼様の給仕をさせていただきます。柳 蓮花と申します」
「どうぞよろしくお願いしますね」
笑顔で頭を下げる彼女の口から透き通った声が発せられた。使用人に対する態度は本人の素の部分が出やすい。しかし綉礼は柔らかな口調で頭まで下げている。きっと心も美しい女性なんだろう。無意識に緊張していた蓮花の心が和らぐのを感じる。
ご令嬢が全員席について間もなく、一番上座に当たる部分へ両陛下と第一皇子が入ってくる。といっても王族の席は御簾で覆われており、向こうからはこちらが見えても、こちらからは人影程度にしかわからない。
演者たちの準備ができたのか、程なくして開会の合図が送られた。両陛下の前にある御簾だけが側近たちの手によってまくり上げられる。かなり距離はあるが、それでも雰囲気は伝わってきた。陛下の歳は四十頃と聞いたことがあるが、年齢よりも若々しく感じる。隣に寄り添う皇后も遠目から見てもわかるほど、美しい。
「皆、本日はよく集まってくれた。遠い地から来たものもいるだろう。どうかゆっくりと舞や演奏を楽しみ、美味い食事で体を休めてほしい」
陛下の挨拶が終わると料理が運ばれ始める。まずは前菜から、続々と配膳係が持ってくる器を受け取る。問題の林檎の含まれる料理は中盤に来る予定だが、念のためにしっかりと確認する。事前に聞いていた通りの料理で問題はなさそうなので、順に机へ配置した。
「綉礼様、お食事の説明をさせていただきます。こちらは前菜の小皿でございます。右から蒸し鶏の生春巻き、ほうれん草の和え物、湯豆腐になります」
「どれも美味しそうですね、ありがとうございます」
にこやかに箸を進める綉礼に笑顔で返す。そこに、横の席からボソボソと話す声が漏れ聞こえてくる。横にいるのは確か――虎州のご令嬢だ。ふと、蓮花は数日前の厨房のやり取りを思い出した。
「また品目の変更依頼だって? これで何回目だか」
「ああ、次は虎州のお嬢様だよ。嫌いな料理があるから変更しろだとよ」
「全く……。身分が高いからってこうも好き勝手言われちゃあ、準備するこっちの身にもなってほしいもんだ」
やれやれ、といった様子で話す男性たちの会話を横目に聞いていた。料理の品目を同封して宴の招待の文を各地に送った後、何人かのご令嬢から品目の変更を求める返事が届いた。それぞれの距離が違うため、新しい案が決まった後に新たに変更依頼が届くということを繰り返していた。
蘇州の綉礼の生家、宋家からは発疹が出てしまうという全うな理由があったのだがそれは少数派で、他の家に関しては自分勝手な理由ばかりらしい。
蓮花はそれ以降も宴の前日まで男性たちが頭を突き合わせて唸っている様子をたびたび見かけることになった。
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