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出会い
37話
しおりを挟む「あ! 今誰か思い浮かべたでしょ!」
「蓮花さんのお顔が赤くなりましたね」
明苑と綉礼に指摘されて余計に頬が熱くなる。蓮花は頭を振り思い浮かべた飛の顔を消し去る。
「違うよ! 私が耐性ないだけで、そんなんじゃないって。慣れてないんだから近くで目が合ったり、ちょっと触られたりしたらドキドキしちゃうだけだもん……」
「へえ、蓮花そんなことされてたのか。いつの間に」
「聞いてないんだけど!」
「どなたなんですか? 私でも知っている方でしょうか?」
ニヤニヤした幼馴染み二人を軽く睨みつけていると綉礼が蓮花に問いかける。蓮花は少し考えたあと困ったように口を開いた。
「詳しくは名前しか知らないんです。父様のお知り合いだから変な人ではないと思うんですけど……。あ! そういえば、綉礼様が甘いものがお好きだってご存知だったんで、もしかするとお知り合いかもしれません」
「私の好物をですか? 同年代の方で雲嵐様以外となるとかなり絞られてきますね。お名前はなんとおっしゃるんですか?」
蓮花は綉礼に飛の名を教えるか悩んだ。もしかすると名前を教えることで飛の素性が明らかになるかもしれない。
「綉礼様にお願いがあるんですけど、いいですか?」
「もちろんです、なんでしょう?」
「もし、綉礼様のお知り合いだとしても、どこの誰かは私には言わないでください」
「え? どうして? 教えてもらいなよ」
明苑の疑問は最もだ。もちろん知りたいという気持ちは強い。しかし本人が知らない場所でもし知ってしまったら。飛に対する罪悪感に蓮花は苦しむことになるだろう。
「本人から聞くまでは私も探るような真似はしたくないんです。お願いします」
「蓮花さんがそう仰るなら、分かりました」
「ありがとうございます」
一呼吸置いて蓮花は綉礼に飛の名を教える。聞いた綉礼はすぐには思い当たる人物はいないようだったが、しばらくするとハッとした表情になった。
「お知り合いですか?」
「私の予想が正しければ、恐らくそうですね。――本当にお知りにならなくていいんですね?」
「はい」
蓮花の返事を聞いた明苑は面白くなさそうに机に項垂れる。こら、と深欧がその様子をたしなめるとすぐに体を元に戻していたが。
「でも蓮花が男の人にドキドキするようになっただけ進歩ね! 比較が欲しいところだけど……」
「比較?」
「だって、その人だけドキドキするのか、他の人でもそうなのか今のままじゃわかんないでしょ?」
「確かにな、逆にその人だけになるってわかった時は――」
「その方に恋をしている可能性が高いということですね! ……私が緊張してきましたわ」
ほう、と悩ましげな息を漏らす綉礼に苦笑する蓮花。そうそう比較するような接触が起こるはずもないので、皆のご期待には添えそうにない。
その後も雲嵐への恋の相談や、明苑達の結婚式の計画などを話しているとすっかり日が傾いて来た。
「いけない! もうこんな時間。長居してしまって申し訳ありません」
「楽しい時間はあっという間だね! 綉礼様も素敵な方で……。私ちょっと話しただけですけど、とっても好きになっちゃいました。また遊びに来てもいいですか?」
「私もとても楽しかったです。皆さんとお友達になれて嬉しいです! ぜひまた遊びに来てください」
「ありがとうございます、是非お願いします」
蓮花は三人とも予想通り気が合った様で良かった、と一安心する。
そうして皆で笑顔で手を振りあい、宗家の邸を後にした。
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