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出会い
38話
しおりを挟む綉礼の邸を後にした三人は市場の方へ向かっていた。明苑は市場に家があるのでいつも深欧に送って行く。蓮花は市場とは逆の方向に邸があるのだが、今日は調味料で切らしているものがあったので、そのまま一緒に市場の方に向かうことにした。
お目当ての店に向かうまでに通る店の商品を見ながら談笑して歩く。ふと、通り過ぎた商品を二度見していた蓮花は地面にめり込んでいた石に足を取られた。
「うわぁっ!」
「蓮花!?」
前を歩く明苑達は蓮花の声に驚き振り向くが、助けようにも距離があり間に合わない。蓮花が慌てて手を前に出した時だった。
蓮花が地面にぶつかる衝撃を感じる前にお腹の辺りを強く引かれる感触があった。
「――危ないところだったな」
「り、李星!」
蓮花の背後のすぐ近くから聞き慣れた声が聞こえたため振り返ると、そこには昔からの友人である李星がいた。お腹の辺りにあった感触は、蓮花の体に腕を回し倒れるのを防いでくれたようだ。
「ありがとう、助かったわ」
「蓮花大丈夫? 李星ってば、いい時に現れてくれたわ」
「全くだ……ちゃんと前見て歩けよ」
「ごめんごめん」
深欧も呆れた様子で苦言を呈す。蓮花はいつまで経っても離れない李星を不思議に思って彼の顔を見上げた。李星はなんでもないような顔をして蓮花を抱えている。
「李星、もう大丈夫だから離してくれる?」
「つれないやつだなあ、ちょっと位いいじゃん」
離れるどころか一層強くなる腕の力に苦しさを覚えて蓮花は腕を振り上げた。
「いってえ!!」
「調子に乗るからよ、苦しいんだからさっさと離してよね」
重々しい打撃音が肩を襲い、あまりの痛みに思わず李星は手を離す。
「相変わらず容赦ないな……」
李星は明苑達ほどでは無いが昔からの友達で、蓮花より二歳上の男性である。家業の鍛冶屋の跡継ぎで家を手伝っていたがここ最近は見かけなかったので、こうやって会うのも久しぶりだ。
「最近見なかったけどどこか行ってたの?」
「隣町の鍛冶技術の情報収集に数ヶ月駆り出されてたんだ。やっとひと段落ついて帰ってこれたって訳」
「そうだったの、お疲れ様」
「あ、李星にまだ言ってなかったけど、私たち今度結婚するんだ!」
「良かったら式に来てくれよ」
「とうとうか! おめでとう!」
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「はあ? 何言ってるのよ……。大体、私達恋人でもなんでもないでしょう」
「そうだよ! 蓮花が優しいから忘れてるかもしれないけど、貴族のお嬢様なんだよ! 李星が結婚出来るような相手じゃないんだから」
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ぽんぽんとよく回る李星の口に呆れながら、蓮花は李星から離れる。
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