芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥

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出会い

49話

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 季節が夏に入り本格的に暑くなって来た頃。蓮花は今日も厨房で汗を流していた。

 今日は出来上がった料理をお皿に盛り付ける係になっていた。盛り付けは見た目も美しくなるように決められた位置へ食材を配置する。きちんと間違いがないか上役の確認が入るため気が張る仕事だ。

「あの、今よろしいですか?」
「はい?」
 
 残りあともう少しというところで背後から声を掛けられる。蓮花が振り返ると、そこには父と同じ年代の痩せ型の男性が立っていた。

「数日前から雑務係として働いている宇民ユーミンといいます。今日はこちらでお手伝いさせてもらうよう指示がありまして」
「そうだったんですね! 柳 蓮花です。よろしくお願いします」

 お互いペコペコと頭を下げる。頭に布巾を巻いた宇民は何をすればいいか蓮花に指示をあおぐ。

「じゃあこの料理をこのお皿の通りに配置して頂けますか? 最初にこの具材で――」

 ゆっくり蓮花が盛り付けながら説明をする。具材の種類が多いので、次は一緒に盛り付けて貰おうかと思い宇民に提案しようとした。

「じゃあ次は――」
「分かりました、このお皿の分で終わりですか?」
「え? あ、はい。宇民さんさっきので覚えられたんですか?」
「覚えられたと思います。確認なんですが、最初が――」

 蓮花の問いかけに頷いた宇民は具材の順番と場所を言っていく。まさか一回で覚えるとは思っていなかった蓮花は呆気に取られてしまった。

「すごいですね、ピッタリ正解です!」
「暗記は昔から得意なんです。じゃあこちらの道具お借りしますね」

 にこやかに答えた宇民はテキパキと盛り付けを進める。蓮花も横目で確認しながら自分の作業を進めた。
 二人で盛り付けたので予定より早く作業が終わり、上役からも問題なしと確認をしてもらえた。

「盛り付けは上役の方の確認が必要なので今のように見てもらってください」
「分かりました」
「宇民さんが手伝って下さったのでいつもより早く終われました! ありがとうございます」

 頭を下げる蓮花に宇民は恐縮ですと首に手をやる。

「またこちらにお邪魔することも多くなると思いますのでその時はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。あ、私これから休憩なので失礼しますね」
「はい、ありがとうございました」

 最後まで物腰柔らかな宇民に蓮花は仕事も早くていい人が入ってくれて助かるなあ、とにこやかに厨房を後にする。

 
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