帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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ハヤトの新しい仕事

第14話 手伝いの依頼

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 仲間たちとの再会から数日が過ぎた朝、ハヤトはコーヒーを飲みながらテレビ画面をぼんやり眺めていた。高層マンションの窓から見える景色は、よく晴れた空の下で輝く都会の街並み。異世界での過酷な冒険とは打って変わった平和な日常。

 そんな穏やかな時間を過ごしていたとき、新しく買った最新型のスマートフォンが鳴った。コーヒーカップを置き、画面を見ると「鉄村剛」の名前が表示されている。

「もしもし」
「やあ、ハヤト」

 電話してきた相手は、津村剛だった。声に活気が感じられる。背後では何やら書類をめくる音も聞こえた。

「実はな、頼みたいことがあるんだ」
「頼みって?」

 仲間からの頼みであれば、出来ることなら助けてあげたい。そう思いながら、話を聞くハヤト。彼は自然と背筋を伸ばし、かつて勇者だった頃のように真剣に耳を傾けた。

「うちで買収を検討している鉱山があってな。そこの視察に行く予定があるんだが、ハヤトにも同行してほしいんだ」

 ハヤトは眉を上げた。

「鉱山?」
「ああ。海外にある鉱山だ。手伝ってくれたら、報酬もきちんと支払う」

 電話越しでも、剛の声には真摯さが感じられた。

 ハヤトは少し驚いた。突然の申し出に、何か特別な理由があるのではないかと考える。

「どうして、いきなり?」

 電話の向こうで、剛が少し言葉を選ぶように間を置いた。

「仕事を探していると聞いた。ちょっとしたバイトだと思って、手伝ってほしいんだ」

 おそらく莉々か城介から聞いたのだろう。ハヤトが元の会社を辞めた後、まだ次の仕事が決まっていないことを。

「ぜひ、ハヤトの力を借りたい」

 ハヤトは、その言葉に込められた意味を考えた。もしかしたら、自分が早く仕事を見つけたいという焦りに気付いて、気遣ってくれているのかもしれない。

 わざわざ仕事を用意してくれたんだとしたら……少し申し訳ないという気持ちと、大きな感謝の気持ちが胸に広がった。ハヤトは自分の今後について少し考えてから、決意を固めて答えた。

「わかった。手伝わせてもらう」

 そう答えると同時に、ハヤトはこの仕事を全力でやり遂げ、剛の期待に応えようと心に誓った。

「ありがとう!」

 剛の嬉しそうな声。受話器越しでも、その喜びが伝わってくる。

「詳細は後で送るが、2週間後に出発する予定だ。パスポートは持っているよな?」
「ああ、幸い持ってるよ」

 以前の会社で取得するように言われていたが、結局使わないままだったもの。まだ有効期限は大丈夫なはず。後で確認しないと。

「よし、じゃあメールで詳細を送る。来週、打ち合わせをしよう」

 通話が終わった後、ハヤトはしばらく考え込んだ。急な話だったが、何かできることがあるなら力になりたい。それに、自分の能力が役立つなら、それに越したことはない。

 その後、剛から送られてきた詳細を読み、ハヤトは視察旅行の全容を把握した。行き先は東南アジアのとある国。そこにある鉱山を剛は買収しようか検討しているという。

 添付されていた写真には、山々に囲まれた広大な鉱山地帯が映っていた。周囲の自然は美しいが、採掘場は荒々しい地形を形作っている。

 その旅には鉄村財閥が契約している警備会社から、ボディーガードたちが数名同行するという情報も含まれていた。彼らから見れば、ハヤトも護衛対象の一人ということになるそうだ。

 それから、城介も相談役として同行するらしい。「二人とも頼りにしている」と剛は書いていた。

 ハヤトは微笑んだ。異世界での戦友たちと再び同じ目的に向かって動く。それはどこか懐かしく、心強い感覚だった。そして、自分にできることが何なのかを考える。



 出発の日、空港国際線ターミナルにて。約束の場所で、城介と一緒に待っていた。城介はノートパソコンを開き、最新の情報をチェックしている。冒険前の最終準備に余念がない。かつての情報屋としての習慣が、今も身についているようだ。

「待たせたな」

 剛はビジネススーツ姿で現れた。完璧に整えられた身なりに、財閥の人間としての威厳が漂っている。その後ろには黒いスーツに身を包んだ数名の男女が控えていた。間違いなくボディーガードだろう。彼らの目は常に周囲を警戒している。

「こちらが、お連れの方々ですね」

 そう言ったのは、筋肉質で短く刈り上げた髪の中年男性だった。警備責任者らしい。彼の立ち居振る舞いには、訓練を受けたような厳格さが感じられた。

「ああ」

 剛は、ハヤトと城介を紹介する。

「この二人は、私の大事な仲間だ。今回の件で、色々と協力してもらうことになっている」

 ボディーガードの男は一瞬だけ眉をひそめた。財閥の御曹司と、見た目はごく普通の男性二人という奇妙な組み合わせを不審に思ったのだろう。彼の鋭い目が、ハヤトと城介を一瞬だけ査定するように見た。しかし、彼はそれ以上の探りを入れるようなことはせず、単に頭を下げた。

「了解しました。お二人も我々の警護対象です。何かあればお申し付けください」

 手続きを済ませると、一行は出国ゲートを通過した。空港内を歩く間も、ボディーガードたちは常に周囲に目を配り、要人を守るように三人を囲むような形で移動した。

 飛行機内では、ファーストクラスに通された。生まれて初めてファーストクラスに乗るハヤトは、その広々とした空間と豪華なサービスに少し圧倒された。革張りの大きな座席は、ほとんどベッドのようだ。

「どうだ?」

 城介が横から声をかけた。彼はすでに慣れた様子で、シートを倒す操作をしている。

「俺達も、鉄村グループのVIPとして扱われているようだぞ」

 彼の口元には、少し楽しんでいるような笑みが浮かんでいた。

「ああ」

 ハヤトは革張りのシートに身を沈めながら答えた。この贅沢さは、少し居心地悪く感じられた。慣れていないからだろう。

「少し居心地が悪いくらいだよ」

 フライトアテンダントがシャンパンを持ってきたとき、剛はニヤリと笑った。財閥の御曹司としての余裕を持っている彼はシャンパングラスを手に取り、三人で乾杯した。

「遠慮するな。こういう時くらい楽しめ」

 フライト中、三人は世間話に花を咲かせながら、今回の視察についても話し合った。

「実は、問題が起きる可能性がある」

 剛は声を落として言った。彼の表情は急に引き締まり、慎重さを見せていた。

「どこかの組織が、横やりを入れてくるかもしれない」
「そういうことか」

 城介が頷いた。

「だから我々を呼んだのか」
「ああ。特にハヤト殿の直感力は、異世界でも何度も助けられた」

 剛は真剣な表情でハヤトを見た。

「今回、頼りにさせてもらいたいと思っている」
「わかった。頼ってくれ」

 ハヤトは頷きながら引き受けた。自分の能力が役立つのなら、力の限り協力するつもりだった。
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