帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

文字の大きさ
15 / 53
ハヤトの新しい仕事

第15話 ホテルへ向かう道中

しおりを挟む
 予定通りの時間に現地の空港に到着した。

「……」

 飛行機から降りて、到着ロビーに向かう途中に、ハヤトの背筋に違和感が走った。かつて異世界で幾度となく命を救った『危険を察知する感覚』が、今ここで鋭く反応していた。

 それを察知した次の瞬間、ハヤトはごく自然な動きで周囲を見回した。一見何の変哲もない空港の光景。だが、ハヤトには複数の敵意が感じ取れた。その敵意の矛先は、明らかに仲間の剛に向けられていた。

 ハヤトは人混みの中に紛れる数人の男たちを察知した。彼らはさりげなく距離を置きながらも、常に剛の動向を追っている。互いに視線で合図を送り合っている。彼らの冷徹な眼差しと、ポケットに忍ばせている何かが、ハヤトの危険察知能力を刺激していた。

 敵の位置を感覚的に把握し、剛に視線を送った。視線を受け取った剛は、わずかに目を細め、小さく頷いて応えた。その様子を見て、城介も警戒を強める。仲間たちと危険の共有ができたことに、ハヤトは少し安心した。そのまま、警戒を続ける。

 剛は同行しているボディーガードのリーダーに近づき、小声で話しかけた。

「どうやら、怪しい人物がいるようだが?」

 護衛対象である剛から、いきなりそんな発言が飛び出て来てリーダーは内心で驚いた。しかし、プロフェッショナルとして表情を変えずに、前方を見つめながら小さな声で返答した。

「怪しい人物、ですか?」

 リーダーから見れば、周囲に怪しい人物など見当たらなかった。予兆も感じられない。彼は念の為に警戒しながら周囲を確認したが、やはりそれらしい存在は見つけられなかった。

 剛が何を見て、怪しいと感じたのか。それを理解しようとしたけれど、その原因を特定できない。

「勘違い、ではありませんか?」

 そう言われて、剛は苦笑いを浮かべた。

「そうか。俺の気のせいかな」

 彼は肩をすくめた。

「だけど、警戒だけしておいてくれ」
「わかりました。警戒を強めます」

 護衛対象からのお願いを聞いて、念のため警戒を強めることを約束するリーダー。彼は、剛が今は危険に対して過敏になっているのだと理解したようだった。不安を払拭することもまた、ボディーガードの仕事だと考えているのだろう。

 リーダーは無線で部下たちに連絡を取り、警戒レベルを上げるよう指示を出した。

 一行は空港から出ると、用意されていた大型のワゴン車に乗り込む予定だった。車両は黒塗りの高級感あるもので、大人数でも十分に乗れるサイズだ。まずは、これに乗って拠点にする予定のホテルへ向かう。

 ボディーガードの一人が車両を軽くチェックして回った。同時に、城介も自然な動きを装いながら念入りに車を調べていた。彼の目は鋭く、異常を察知する様子で車体の下や周囲を確認していた。

 城介が何も問題ないと頷いたのを見て、剛はようやく車に乗り込んだ。

 車内での座席配置は、運転席と助手席にはドライバーとリーダー格のボディーガード。後部座席の最前列中央に剛、その両脇にボディーガードが配置され、その後ろの列にハヤトと城介が陣取った。最後列には残りのボディーガード二名が座った。

 ワゴン車はゆっくりと動き出した。

 空港を出て幹線道路に入ると、交通量が増えてきた。ハヤトは窓の外を眺めるふりをしながら、実は車の動きを注視していた。彼は、ワゴン車が出発した瞬間から背後につけてくる車の存在に気がついていた。

 いったいどこで仕掛けてくるつもりなのか。

 ハヤトは警戒を緩めることなく、自然体で周囲を見張り続けた。

 一行は、拠点となるホテルへ向かう道中にいた。車内では静かな緊張感が漂う中、剛はタブレットで資料を確認し、城介はスマートフォンでメールをチェックするふりをしていた。

 その時だった。

「来るぞ!」

 ハヤトの声が車内に響いた。まっさきに危険を察知した彼が、周囲の人達に知らせるように呟いた。その言葉を聞いた剛と城介は、すぐさま衝撃に備えて身構えた。

 視界の端に、急速に接近する車の姿が捉えられた。先ほどから彼らを追跡していたセダンが、突然スピードを上げて横から迫ってきたのだ。ボディーガードたちが窓の外を確認する間もなく、車は猛スピードで接近していた。

 ボディーガードたちは疑問の表情を浮かべた瞬間、悲鳴が上がった。

「な、なに!?」
「うわっ!?」
「ぶつかってきた!?」
「危ないっ!」

 突如、車両の横から車が猛スピードで接近し、追突してきた。金属がぶつかり合う鈍い音と共に、ワゴン車は大きく横に押されて揺れた。

 激しい衝撃が車内を襲った。シートベルトの効果で大きな怪我はなかったものの、車体は大きく揺さぶられた。窓ガラスが振動で軋む音が聞こえ、車内の荷物が散乱する。ワゴン車の運転手は必死にハンドルを握りしめ、車のコントロールを失わないよう努めていた。

 ボディーガードたちが狼狽の声を上げ、慌てて状況の確認を始める中、ハヤトと剛、城介の三人は冷静さを保ち、慣れた様子で次なる攻撃に備えた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! 圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...