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第18話 新たな楽しみ
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聖女時代のことを振り返ると、もっとおしゃれに気を配るべきだったと思う。けれど、そんな余裕はまったくなかった。
私の髪は伸びっぱなしで、時には目元も隠れるほど長くなっていた。慌ただしい朝、鏡に映る自分の顔を見て「切らなきゃ」と思いながらも、次々と舞い込む仕事に追われてそのままになることの繰り返し。服装も仕事着を着ている時間が長くて、着替える暇すらないほど仕事に没頭していた。最低限の身だしなみを整えるのが精一杯で、それ以上は時間を割く余裕がなかったほど。
申し訳なかったのは、弟子のエミリーに対してのこと。彼女は私に憧れていて、そんな彼女は私の真似をして修行や仕事に没頭し、私と同じように自分の容姿を磨くことさえ後回しにしていた。そこまで真似しなくていいのにと思っていた。あれだけ可愛いのに、もったいない。
神殿から解放された私たちには、時間に余裕ができた。様々なことに自由に時間を使えるようになり、おしゃれを楽しみたいという気持ちが湧いてきた。
冒険者としての活動も軌道に乗り、それなりに依頼をこなして評価も得た。生活の基盤がしっかりと確立してきて、冒険者活動にも余裕が出てきたからこそ、他のことにも目を向けられるようになったのでしょう。
今日、私はエミリーと一緒に、アンクティワンが経営するお店の一つである服屋を訪れていた。店内は柔らかな光に包まれ、色とりどりの服が美しく並べられている。花のような香りが漂う中、エミリーは少し緊張した様子で私の隣に立っていた。
「エミリー、この服なんてどうかしら?」
柔らかな青色の生地に白い刺繍が施された上品なワンピースを手に取って彼女に見せる。優雅な曲線を描くデザインと、細やかな手仕事が光る一着だ。
「え!? ノエラ様、それお高いやつじゃないですか! 私に買うなら、もっと安いやつでも……」
「いいのよ、せっかくだから着てみなさい。店員さんが言ってくれているように、きっと似合うと思う。私があなたに着てもらいたいと思ったのだから遠慮せずに」
「はい。きっとお似合いですよ」
私の横に立つ店員も優しく微笑みかける。彼女はアンクティワンが管理するお店の従業員らしく、一流の接客で私たちをもてなしてくれていた。
「そ、そうですか……。じゃあ、着てみます!」
遠慮するエミリーを説得して、私は彼女に似合いそうな服をいくつか見繕った。自分のセンスはあまり信用していなかったので、店員たちと相談しながら選んでいく。そして、それらをエミリーに試着してもらうことにした。
「ど、どうですか……?」
おずおずと試着室から出てきたエミリーを見て、私はとても満足だった。彼女の魅力を最大限に引き出したコーディネートだった。青色のワンピースは彼女の明るい髪を引き立て、白い刺繍は清楚な雰囲気を演出している。予想していた通り、とても可愛らしく、それでいて上品さも兼ね備えている。彼女本来の愛らしさが十分に発揮されていた。
「すごく似合っているわよ、エミリー」
心からの感嘆の声を上げる。神殿の硬い雰囲気から離れた彼女は、こんなにも生き生きと輝くのだと実感する。
「はい、とてもお似合いです!」
相談に乗ってくれた店員たちも、彼女の試着した姿を見て喜びの表情を浮かべる。
「えへへ、ノエラ様や店員の皆さまに、そう言ってもらえると嬉しいです」
照れたように笑うエミリーは、やっぱり可愛くて仕方がなかった。この子の笑顔を見ていると、自然と私も笑みがこぼれる。
神殿にいた頃、こんなに素敵な表情を見られなかったのは本当に残念。仕事なんて少しは後回しにして、あの時からもっとおしゃれに取り組んでおいた方が良かったかもしれない。
でも、後悔しても遅い。ならば、今から全力で楽しめばいいのよ。
「じゃ、じゃあ次は! ノエラ様が着替える番ですよ!」
今度は私の番だと言って、エミリーが明るい声で提案してくれる。彼女だけ選んだ服を着てもらって、私が断るわけにはいかない。それに、私自身もこの機会を一緒に楽しみたい。
「そうね。せっかくだから、私に似合いそうな服をエミリーに選んでもらいましょうか」
「え!? わ、私が、ですか? ……わかりました! 全力で選びます!!」
気合の入った様子で店内を駆け回るエミリーを眺めながら、私もいくつかの服を手に取った。そうして、二人で買い物を楽しんだ。聖女時代には決してできなかったことを、今は思う存分に堪能している。
「ノエラ様も、とっても素敵です! 美しすぎます……!」
エミリーが選んでくれたドレスは、私の雰囲気にぴったりだったようだ。肩の部分が少し露出しているデザインで、聖女時代には決して選ばなかったスタイル。でも、鏡に映る自分の姿は悪くない。むしろ、新鮮で心地よい。
「ありがとう、エミリー」
お互いに選んだ服を着ながら、それぞれの姿を見て褒め合ったり、店員たちから様々なファッションの知識を教えてもらったり。今まで関心を持てなかった領域に、今は積極的に挑戦していくことができる。髪型の話から、靴の選び方、アクセサリーの合わせ方まで、私たちは新しい知識を吸収していった。
「次回は、ナディーヌも一緒に連れて来ようかしら」
彼女も、いつも実用的な服ばかり着ている。けれど、もっと女性らしい服も似合うはず。
「はい! それ、すごくいいですね! ナディーヌさんは背が高くてスタイルもいいから、きっといろんな服が似合うと思います!」
エミリーの目が輝く。彼女も同じことを考えていたのだろう。服を選ぶのがもっと楽しくなるに違いない。そんなことを想像して、私たちは笑顔を浮かべた。
そして、ジャメルの服装に関しても。彼も、神殿から出てきた後も同じような服ばかり着ている。彼にも新しい服を選んであげようかな。きっとそれも楽しいだろうと思った。
私の髪は伸びっぱなしで、時には目元も隠れるほど長くなっていた。慌ただしい朝、鏡に映る自分の顔を見て「切らなきゃ」と思いながらも、次々と舞い込む仕事に追われてそのままになることの繰り返し。服装も仕事着を着ている時間が長くて、着替える暇すらないほど仕事に没頭していた。最低限の身だしなみを整えるのが精一杯で、それ以上は時間を割く余裕がなかったほど。
申し訳なかったのは、弟子のエミリーに対してのこと。彼女は私に憧れていて、そんな彼女は私の真似をして修行や仕事に没頭し、私と同じように自分の容姿を磨くことさえ後回しにしていた。そこまで真似しなくていいのにと思っていた。あれだけ可愛いのに、もったいない。
神殿から解放された私たちには、時間に余裕ができた。様々なことに自由に時間を使えるようになり、おしゃれを楽しみたいという気持ちが湧いてきた。
冒険者としての活動も軌道に乗り、それなりに依頼をこなして評価も得た。生活の基盤がしっかりと確立してきて、冒険者活動にも余裕が出てきたからこそ、他のことにも目を向けられるようになったのでしょう。
今日、私はエミリーと一緒に、アンクティワンが経営するお店の一つである服屋を訪れていた。店内は柔らかな光に包まれ、色とりどりの服が美しく並べられている。花のような香りが漂う中、エミリーは少し緊張した様子で私の隣に立っていた。
「エミリー、この服なんてどうかしら?」
柔らかな青色の生地に白い刺繍が施された上品なワンピースを手に取って彼女に見せる。優雅な曲線を描くデザインと、細やかな手仕事が光る一着だ。
「え!? ノエラ様、それお高いやつじゃないですか! 私に買うなら、もっと安いやつでも……」
「いいのよ、せっかくだから着てみなさい。店員さんが言ってくれているように、きっと似合うと思う。私があなたに着てもらいたいと思ったのだから遠慮せずに」
「はい。きっとお似合いですよ」
私の横に立つ店員も優しく微笑みかける。彼女はアンクティワンが管理するお店の従業員らしく、一流の接客で私たちをもてなしてくれていた。
「そ、そうですか……。じゃあ、着てみます!」
遠慮するエミリーを説得して、私は彼女に似合いそうな服をいくつか見繕った。自分のセンスはあまり信用していなかったので、店員たちと相談しながら選んでいく。そして、それらをエミリーに試着してもらうことにした。
「ど、どうですか……?」
おずおずと試着室から出てきたエミリーを見て、私はとても満足だった。彼女の魅力を最大限に引き出したコーディネートだった。青色のワンピースは彼女の明るい髪を引き立て、白い刺繍は清楚な雰囲気を演出している。予想していた通り、とても可愛らしく、それでいて上品さも兼ね備えている。彼女本来の愛らしさが十分に発揮されていた。
「すごく似合っているわよ、エミリー」
心からの感嘆の声を上げる。神殿の硬い雰囲気から離れた彼女は、こんなにも生き生きと輝くのだと実感する。
「はい、とてもお似合いです!」
相談に乗ってくれた店員たちも、彼女の試着した姿を見て喜びの表情を浮かべる。
「えへへ、ノエラ様や店員の皆さまに、そう言ってもらえると嬉しいです」
照れたように笑うエミリーは、やっぱり可愛くて仕方がなかった。この子の笑顔を見ていると、自然と私も笑みがこぼれる。
神殿にいた頃、こんなに素敵な表情を見られなかったのは本当に残念。仕事なんて少しは後回しにして、あの時からもっとおしゃれに取り組んでおいた方が良かったかもしれない。
でも、後悔しても遅い。ならば、今から全力で楽しめばいいのよ。
「じゃ、じゃあ次は! ノエラ様が着替える番ですよ!」
今度は私の番だと言って、エミリーが明るい声で提案してくれる。彼女だけ選んだ服を着てもらって、私が断るわけにはいかない。それに、私自身もこの機会を一緒に楽しみたい。
「そうね。せっかくだから、私に似合いそうな服をエミリーに選んでもらいましょうか」
「え!? わ、私が、ですか? ……わかりました! 全力で選びます!!」
気合の入った様子で店内を駆け回るエミリーを眺めながら、私もいくつかの服を手に取った。そうして、二人で買い物を楽しんだ。聖女時代には決してできなかったことを、今は思う存分に堪能している。
「ノエラ様も、とっても素敵です! 美しすぎます……!」
エミリーが選んでくれたドレスは、私の雰囲気にぴったりだったようだ。肩の部分が少し露出しているデザインで、聖女時代には決して選ばなかったスタイル。でも、鏡に映る自分の姿は悪くない。むしろ、新鮮で心地よい。
「ありがとう、エミリー」
お互いに選んだ服を着ながら、それぞれの姿を見て褒め合ったり、店員たちから様々なファッションの知識を教えてもらったり。今まで関心を持てなかった領域に、今は積極的に挑戦していくことができる。髪型の話から、靴の選び方、アクセサリーの合わせ方まで、私たちは新しい知識を吸収していった。
「次回は、ナディーヌも一緒に連れて来ようかしら」
彼女も、いつも実用的な服ばかり着ている。けれど、もっと女性らしい服も似合うはず。
「はい! それ、すごくいいですね! ナディーヌさんは背が高くてスタイルもいいから、きっといろんな服が似合うと思います!」
エミリーの目が輝く。彼女も同じことを考えていたのだろう。服を選ぶのがもっと楽しくなるに違いない。そんなことを想像して、私たちは笑顔を浮かべた。
そして、ジャメルの服装に関しても。彼も、神殿から出てきた後も同じような服ばかり着ている。彼にも新しい服を選んであげようかな。きっとそれも楽しいだろうと思った。
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