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第28話 正しい決断 ※若き賢者アレクシス視点
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神殿の奥で仕事を処理していた私のもとに、老賢者の一人が慌ただしく駆け込んできた。その顔には興奮と何かしらの企みが入り混じった表情が浮かんでいる。
「アレクシス、緊急の極秘依頼だ。すぐに来い」
何事かと思いながら、老賢者の後について執務室へ向かう。そこで聞かされた内容に、私は耳を疑った。
「冒険者ギルドのチームを……抹殺?」
老賢者は当然のことのように頷く。
「そうだ。王子殿下直々のご依頼でな。とある冒険者チームを秘密裏に葬り去ってほしい、と。詳しい理由は聞いていないが、王子殿下を怒らせたらしい」
私は唖然とした。神殿の役目は王国の安全と精神を守ること、人々に祈りと癒しを提供し、生活を豊かにすること。それなのに、一般市民に危害を加えるなど、どんな理由があったとしても許されるはずがない。
「そんな依頼、受けるわけがありません」
依頼を受けることを拒否すると、老賢者の表情が一変した。
「何だと? お前は、王子殿下のご依頼を断るのか?」
「当然です。神殿の使命に反する行為など、受け入れられません」
老賢者は冷笑を浮かべた。その表情に、私は嫌な予感を覚えた。
「アレクシス、自分の立場をよく考えろ。もし断れば、お前が可愛がっている女神官たちがどうなるか、わかっているな?」
血の気が引いた。まさか、この老賢者は私の部下である神官たちを人質に取るつもりなのか。そこまでするというのか。
「彼女たちには関係ありません!」
「関係ない? お前が言うことを聞かなければ、彼女たちの身に何が起こるか……。神殿の力、そして王子殿下の怒りは恐ろしいものだぞ」
私の拳が震えた。これが神殿のやり方なのか? 権力に媚びへつらい、一般市民を害そうとする。そして、部下を人質にして脅迫まで行う。
「時間はない。返答を聞かせろ」
老賢者の催促に、私は歯を食いしばった。だが、心の中ではすでに決断していた。もう神殿には見切りをつけよう。このような腐った組織に、私も女神官たちも縛られている必要はない。そのために何としても、彼女たちの安全を確保しなければ。
「……分かりました。検討します」
「そうか。なら、早速仕事に取り掛かれ。王子殿下をお待たせするわけにはいかんからな」
一旦その場を取り繕い、部屋を出た。老賢者は満足げに頷いていたが、私の心は決まっていた。
その日の夜、私は密かに神殿を抜け出し、一人で冒険者ギルドへ向かった。急を要する事態。相手が話を聞いてくれたらいいのだが。
冒険者ギルドの個室で、私は三人の男性と向かい合っていた。事情を説明すると、彼らがすぐに来てくれた。
ギルド長のバロン氏、商会のトップであるアンクティワン氏、そしてターゲットとなったチームのメンバーだというジャメル氏。
改めて事情を説明すると、三人の表情は次第に厳しくなっていった。
「まさか、そんな。依頼を断っただけで、神殿を頼って仕返ししようとするなんて」
バロン氏が呻くように言った。アンクティワン氏も深刻な表情で頷く。
「王子殿下自ら、こんな手段に出るとは。神殿も協力的とは、最悪ですね」
「最近の神殿は、色々と問題があるようですが……まさか、そこまで堕落していたとは」
私は三人を見回した。出会ったばかりの人たちだ。彼らを信用できるのか、すぐに判断はできない。だが今は、彼らを信じて頼るしかない。
「お願いがあります。私と、私に付いている女神官たちを神殿から脱出させた後に、保護をお願いできませんか? その代わり、私は何でもお引き受けします」
神官たちを助けてもらう代わりに、自分を差し出す。三人は顔を見合わせた。私は続けた。
「私には、それなりに実力があります。神殿で培った知識も豊富です。必ずお役に立てるはずです」
しばらく沈黙が続いた後、アンクティワン氏が口を開いた。
「今の話を聞いて、協力しないといけないと感じました。どうにかしましょう」
「本当ですか!?」
協力を得られると聞いて、私は嬉しくなった。それから、この先どうするかの話し合いが行われた。
「アレクシス殿、神殿から逃げ出した者たちで協力して、新しい組織を立ち上げるというのはいかがでしょう?」
「新しい……組織?」
商人であるというアンクティワン氏の提案。
「はい。腐敗した神殿とは決別し、本来の神官としての役割を果たす新しい組織です。王権におもねることなく、純粋に人々の救済に尽くす。その組織の立ち上げに、我々は協力できると思います」
バロン氏も頷いた。
「冒険者ギルドとしても、全面的に協力しましょう。市民の安全を守るという点で、我々も同じ立場です」
ジャメル氏も同意を示した。
「我々のパーティーも、喜んで協力させていただきます。パーティーのリーダーも、あなたのような方がいてくださることを、頼もしく思いますよ」
神殿を逃げ出したあとのことまで考えてくれる。私の胸に希望の光が差し込んだ。まさか、こんな形で道が開けるとは。
「本当に……本当によろしいのですか?」
「もちろんです」
アンクティワン氏が微笑んだ。
「ただし、神殿からの脱出は慎重に行う必要があります。老賢者たちも必死になって阻止しようとするでしょうから。女神官たちの安全を最優先に、綿密な計画を立てましょう」
ジャメル氏の懸念に同意する。それから私は、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。全力で協力いたします。このまま神殿に残っていては、私も彼女たちも破滅してしまいます」
話し合いが続く中で、具体的な脱出計画と新組織設立の青写真が見えてきた。絶望的だった状況から、具体的に助かる方法が見えてきた。
私は改めて決意を固めた。腐敗した神殿から全員で無事に逃げ出して、真に人々のためになる新しい道を歩もう。女神官たちと共に、本来の使命を果たすのだ。
「アレクシス、緊急の極秘依頼だ。すぐに来い」
何事かと思いながら、老賢者の後について執務室へ向かう。そこで聞かされた内容に、私は耳を疑った。
「冒険者ギルドのチームを……抹殺?」
老賢者は当然のことのように頷く。
「そうだ。王子殿下直々のご依頼でな。とある冒険者チームを秘密裏に葬り去ってほしい、と。詳しい理由は聞いていないが、王子殿下を怒らせたらしい」
私は唖然とした。神殿の役目は王国の安全と精神を守ること、人々に祈りと癒しを提供し、生活を豊かにすること。それなのに、一般市民に危害を加えるなど、どんな理由があったとしても許されるはずがない。
「そんな依頼、受けるわけがありません」
依頼を受けることを拒否すると、老賢者の表情が一変した。
「何だと? お前は、王子殿下のご依頼を断るのか?」
「当然です。神殿の使命に反する行為など、受け入れられません」
老賢者は冷笑を浮かべた。その表情に、私は嫌な予感を覚えた。
「アレクシス、自分の立場をよく考えろ。もし断れば、お前が可愛がっている女神官たちがどうなるか、わかっているな?」
血の気が引いた。まさか、この老賢者は私の部下である神官たちを人質に取るつもりなのか。そこまでするというのか。
「彼女たちには関係ありません!」
「関係ない? お前が言うことを聞かなければ、彼女たちの身に何が起こるか……。神殿の力、そして王子殿下の怒りは恐ろしいものだぞ」
私の拳が震えた。これが神殿のやり方なのか? 権力に媚びへつらい、一般市民を害そうとする。そして、部下を人質にして脅迫まで行う。
「時間はない。返答を聞かせろ」
老賢者の催促に、私は歯を食いしばった。だが、心の中ではすでに決断していた。もう神殿には見切りをつけよう。このような腐った組織に、私も女神官たちも縛られている必要はない。そのために何としても、彼女たちの安全を確保しなければ。
「……分かりました。検討します」
「そうか。なら、早速仕事に取り掛かれ。王子殿下をお待たせするわけにはいかんからな」
一旦その場を取り繕い、部屋を出た。老賢者は満足げに頷いていたが、私の心は決まっていた。
その日の夜、私は密かに神殿を抜け出し、一人で冒険者ギルドへ向かった。急を要する事態。相手が話を聞いてくれたらいいのだが。
冒険者ギルドの個室で、私は三人の男性と向かい合っていた。事情を説明すると、彼らがすぐに来てくれた。
ギルド長のバロン氏、商会のトップであるアンクティワン氏、そしてターゲットとなったチームのメンバーだというジャメル氏。
改めて事情を説明すると、三人の表情は次第に厳しくなっていった。
「まさか、そんな。依頼を断っただけで、神殿を頼って仕返ししようとするなんて」
バロン氏が呻くように言った。アンクティワン氏も深刻な表情で頷く。
「王子殿下自ら、こんな手段に出るとは。神殿も協力的とは、最悪ですね」
「最近の神殿は、色々と問題があるようですが……まさか、そこまで堕落していたとは」
私は三人を見回した。出会ったばかりの人たちだ。彼らを信用できるのか、すぐに判断はできない。だが今は、彼らを信じて頼るしかない。
「お願いがあります。私と、私に付いている女神官たちを神殿から脱出させた後に、保護をお願いできませんか? その代わり、私は何でもお引き受けします」
神官たちを助けてもらう代わりに、自分を差し出す。三人は顔を見合わせた。私は続けた。
「私には、それなりに実力があります。神殿で培った知識も豊富です。必ずお役に立てるはずです」
しばらく沈黙が続いた後、アンクティワン氏が口を開いた。
「今の話を聞いて、協力しないといけないと感じました。どうにかしましょう」
「本当ですか!?」
協力を得られると聞いて、私は嬉しくなった。それから、この先どうするかの話し合いが行われた。
「アレクシス殿、神殿から逃げ出した者たちで協力して、新しい組織を立ち上げるというのはいかがでしょう?」
「新しい……組織?」
商人であるというアンクティワン氏の提案。
「はい。腐敗した神殿とは決別し、本来の神官としての役割を果たす新しい組織です。王権におもねることなく、純粋に人々の救済に尽くす。その組織の立ち上げに、我々は協力できると思います」
バロン氏も頷いた。
「冒険者ギルドとしても、全面的に協力しましょう。市民の安全を守るという点で、我々も同じ立場です」
ジャメル氏も同意を示した。
「我々のパーティーも、喜んで協力させていただきます。パーティーのリーダーも、あなたのような方がいてくださることを、頼もしく思いますよ」
神殿を逃げ出したあとのことまで考えてくれる。私の胸に希望の光が差し込んだ。まさか、こんな形で道が開けるとは。
「本当に……本当によろしいのですか?」
「もちろんです」
アンクティワン氏が微笑んだ。
「ただし、神殿からの脱出は慎重に行う必要があります。老賢者たちも必死になって阻止しようとするでしょうから。女神官たちの安全を最優先に、綿密な計画を立てましょう」
ジャメル氏の懸念に同意する。それから私は、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。全力で協力いたします。このまま神殿に残っていては、私も彼女たちも破滅してしまいます」
話し合いが続く中で、具体的な脱出計画と新組織設立の青写真が見えてきた。絶望的だった状況から、具体的に助かる方法が見えてきた。
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