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第10話 全て君のせい ※デーヴィス視点
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「それで、屋敷を追い出されて戻ってきたというわけか」
報告を終えると、父上は頭を抱えて溜息をついた。失望されている。こうなってしまったのは俺のせいじゃないのに。
「なんて愚かな。せっかくのチャンスだったのに。自らチャンスを潰すようなことをするなんて。ただ、シャロット嬢のご機嫌取りをするだけで、お前は一生安泰だったかもしれないというのに。そんな事すら出来ないなんて、本当に情けない息子だ……」
父上は俺の顔を見ながらそう言って、また大きく溜息をつく。違うんです。自分でチャンスを潰したんじゃない。悪いのは、横に居る女だろう。好きだった気持ちが、一気に冷めた。こんな馬鹿な女だったなんて、知らなかった。彼女は疫病神だ。
「違います! 悪いのは俺ではなく、この女です」
「何言ってるの!? キッカケは、貴方が婚約を破棄したいって漏らしたからでしょう!? 人のせいにしないでよッ!」
「違う! 君が、シャロットに伝えるなんておかしなことをしたからだ!」
「私はただ、デーヴィスが言っていたことを伝えただけでしょ!? それの、どこが悪いのよっ!?」
俺と彼女の口論が、どんどん激しくなっていく。でも俺は悪くないはずだ。だって彼女が余計なことさえ言わなければ、こんなことにはならなかったんだ。全部彼女のせいだ。そうに決まっている。
「もういい! 黙れっ!!」
「「ッ!?」」
父上が大声をあげて、机を強く叩いた。大きな音にびっくりして、俺も彼女も言葉を失う。父上は怒りで震えているのか、手がブルブルと揺れている。こんなに怒っている父を見るのは初めてだ。父は俺を睨んだまま立ち上がった。その迫力に負けて、思わず一歩後ずさった。
「お前はもう、何もせず大人しくしていろ。必要最低限の生活だけは保証してやる。ただ、生きるだけ。それ以外は何もするな。いいな?」
「……はい」
俺は頷くしかなかった。その後、話は終わりだから出て行けと言われた。部屋を出た瞬間、バタンッと強く扉を閉められた。
もう終わったと思った。何もかも終わりだ。父上に失望されて、何もするなと命じられた。貴族としての価値がないと。
「お前のせいだ」
「まだ言っているの? しつこいんじゃない?」
「何度だって言ってやる。お前のせいだ。お前が馬鹿ことをしたせいで、俺は全てを失ったんだ」
俺がそう言うと、彼女は呆れたように溜息を吐いた。そしてやれやれと言った様子で首を振る。それが余計に俺を苛立たせた。
「解雇だ」
「は?」
「メイドの仕事はもうしなくていい。今すぐ俺の目の前から消えろ」
「え……?」
狼狽えている彼女を睨みつける。ちょっとだけ、気分が晴れた。
報告を終えると、父上は頭を抱えて溜息をついた。失望されている。こうなってしまったのは俺のせいじゃないのに。
「なんて愚かな。せっかくのチャンスだったのに。自らチャンスを潰すようなことをするなんて。ただ、シャロット嬢のご機嫌取りをするだけで、お前は一生安泰だったかもしれないというのに。そんな事すら出来ないなんて、本当に情けない息子だ……」
父上は俺の顔を見ながらそう言って、また大きく溜息をつく。違うんです。自分でチャンスを潰したんじゃない。悪いのは、横に居る女だろう。好きだった気持ちが、一気に冷めた。こんな馬鹿な女だったなんて、知らなかった。彼女は疫病神だ。
「違います! 悪いのは俺ではなく、この女です」
「何言ってるの!? キッカケは、貴方が婚約を破棄したいって漏らしたからでしょう!? 人のせいにしないでよッ!」
「違う! 君が、シャロットに伝えるなんておかしなことをしたからだ!」
「私はただ、デーヴィスが言っていたことを伝えただけでしょ!? それの、どこが悪いのよっ!?」
俺と彼女の口論が、どんどん激しくなっていく。でも俺は悪くないはずだ。だって彼女が余計なことさえ言わなければ、こんなことにはならなかったんだ。全部彼女のせいだ。そうに決まっている。
「もういい! 黙れっ!!」
「「ッ!?」」
父上が大声をあげて、机を強く叩いた。大きな音にびっくりして、俺も彼女も言葉を失う。父上は怒りで震えているのか、手がブルブルと揺れている。こんなに怒っている父を見るのは初めてだ。父は俺を睨んだまま立ち上がった。その迫力に負けて、思わず一歩後ずさった。
「お前はもう、何もせず大人しくしていろ。必要最低限の生活だけは保証してやる。ただ、生きるだけ。それ以外は何もするな。いいな?」
「……はい」
俺は頷くしかなかった。その後、話は終わりだから出て行けと言われた。部屋を出た瞬間、バタンッと強く扉を閉められた。
もう終わったと思った。何もかも終わりだ。父上に失望されて、何もするなと命じられた。貴族としての価値がないと。
「お前のせいだ」
「まだ言っているの? しつこいんじゃない?」
「何度だって言ってやる。お前のせいだ。お前が馬鹿ことをしたせいで、俺は全てを失ったんだ」
俺がそう言うと、彼女は呆れたように溜息を吐いた。そしてやれやれと言った様子で首を振る。それが余計に俺を苛立たせた。
「解雇だ」
「は?」
「メイドの仕事はもうしなくていい。今すぐ俺の目の前から消えろ」
「え……?」
狼狽えている彼女を睨みつける。ちょっとだけ、気分が晴れた。
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