婚約相手と一緒についてきた幼馴染が、我が物顔で人の屋敷で暮らし、勝手に婚約破棄を告げてきた件について

キョウキョウ

文字の大きさ
9 / 31

第9話 スッキリ

しおりを挟む
 疲れた表情の使用人たちから、あの2人をライトナム侯爵家に送り届けたという報告を受けた。

「お疲れ様。そんなに大変だった?」
「えぇ。ありゃ、酷いもんですよ」

 馬車の中でデーヴィスとローレインは、ずっと大声で揉めていたらしい。屋敷から追い出された責任を押し付け合い、罵倒して、喚き散らしたそうだ。

 よっぽど我慢して、問題も起こさずに仕事をしてくれた使用人たちには感謝した。彼らには追加の報酬を与えて、今日は休むように指示する。

 とりあえず、さっさと婚約破棄の手続きを済ませてしまいましょう。書類を提出して、正式に婚約を解消。受理されるまでは、気を抜けない。



 私の屋敷から彼らを追い出してから、1週間が経過していた。デーヴィスとの婚約を破棄するという書類も無事に受理されて、肩の荷が下りる。

 これで、私とデーヴィスの婚約関係は正式に解消された。

「おはようございます、シャロット様」
「おはよう。何か問題は起きていない?」
「大丈夫です。とても平和ですよ」
「あら、よかった。それじゃあ、朝食を頂きに行きましょう」

 穏やかな笑みを浮かべるメイドに挨拶して、私は朝の支度を始める。ここ一週間、何の問題もない静かな朝が続いているから嬉しいわ。

 彼らが屋敷に居た頃は、必ず一つは何か問題が起きていた。それを対処するため、朝から忙しくしていた。けれど今は、問題を起こす彼らが居なくなった。何も起きない平和な毎日だ。



 朝食を終えて、カナリニッジ侯爵家の当主として仕事に取り掛かる。今日の仕事は、領地の運営についての報告や資料の確認などだった。大きな問題はないようね。

 領民からの嘆願書を確認。今すぐに解決可能なもの、具体的な内容の精査、制度の改善について検討が必要なものを分けて整理していく。

「シャロット様」
「あら、もうこんな時間?」

 メイドに呼ばれて、仕事の手を止める。作業に没頭していると、あっという間に時間が過ぎてしまうわね。

「お疲れ様です。とても集中されていましたね」
「ええ、そうね。私が仕事をしている間に、何か問題はなかった?」
「はい、ございませんでしたよ」
「いいことね」

 予定よりも多くの仕事が片付いた。これも、仕事の最中に邪魔してくるような人が居ないおかげだろう。本当にいいことだ。

 もっと早く、決断しておけば良かったかもしれない。婚約相手の屋敷に幼馴染のメイドなんて連れてきた男を、受け入れる必要はなかった。

 あの時は、上手くいくと思った。跡継ぎ問題の解消に役立てば、それでいい。それだけを求めていた。まさか、あんなに馬鹿なことを言い出すとは予想していなかった。

 だけど、結婚前に気付けてよかった。最悪の一歩手前で踏みとどまれたのだから、良しとしましょう。そう思わないと、やってられない。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

愛に代えて鮮やかな花を

ono
恋愛
公爵令嬢エリシア・グローヴナーは、舞踏会の場で王太子アリステアより婚約破棄を言い渡される。 彼の隣には無垢な平民の娘、エヴァンジェリンがいた。 王太子の真実の愛を前にしてエリシアの苦い復讐が叶うまで。 ※ハッピーエンドですが、スカッとはしません。

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。  そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。  しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

処理中です...