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第2章 学園編
第15話 部活動
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その日の授業が終わって、鞄に教科書などを入れると立ち上がる。
「佐藤、ちょっと待ってくれ」
家に帰ろうとドアに向かい歩き出そうとした時、担任の加藤先生が教室の前にあるドアから入ってきて、僕を呼んだ。
「話がある、ちょっと来てくれないか」
「あ、はい。わかりました」
話ってなんだろうと疑問に思いながら、加藤先生の後に付いて教室を出る。何か、怒られるようなことをしたかな。
廊下に出て、先生と向かい合う。相変わらず背がデカいな。150cm対190cmだから、大きいと思うのは当たり前かと考えていると、話し始めた加藤先生の言葉を聞く。
「佐藤、部活はどうする?」
「部活、ですか?」
予想外の話だったので、疑問で返してしまった。そういえば僕、授業が終わったらすぐ家に帰っていたけれど。
「この学園は、部活動を奨励していてな。全員、何かしらの部活に入っているんだ。佐藤も、ある部活に所属していたんだが覚えているか?」
考えてみるが、記憶になかった。前の記憶でも、中学生の頃は特にどこの部活にも所属していなかったと思う。運動部とか入る気はないしなぁ。
「思い出せません。いったい僕は、何の部活に所属しているのですか?」
「料理部だ」
「料理部?」
佐藤優が料理部に所属していた。そう聞いて、あまりピンとこない。僕が目覚める以前の佐藤家は、家の食事のほとんどをスーパーのお弁当や出前などで済ませていたみたいだから。以前の佐藤優も、料理など出来ないんだと思っていたけど。
実は、料理が出来たのか。だけど、家族などには振る舞わなかったかな。
「あぁ。料理部と言って、その名の通り料理する部活だ。だが、今はほとんど活動をしていないみたいだけどな」
活動していない? どういうことだろう。
「活動していないのは、何故なのですか?」
「今の料理部は、ほとんど名前だけ所属して実際には活動していないようだ。先ほど話した通り、学園では学生全員が何かしらの部活に入るように強制されているから、何も所属しないというのが出来ない。なので部活は適当に決めて、活動に参加しないって事が結構あったりする。この料理部は、それがひどくてな」
幽霊部員というやつかな。せっかく所属しているのに、面倒だからサボっている。だとすると、生徒全員を部活に入部させる意味が、あまりないような気がするけど。とりあえず、今はその問題は置いておくとして。
「もしかして、僕も以前は所属だけしていたのですか?」
「そうらしい。悪いが、一度部室に行ってみて部長さんと話をしてくれ。さっき確認したら、部長は活動をしているようだから。この紙に書いてある場所に、行ってみてくれ」
先生に言われて、プリントを渡されたので受け取る。それは、学校の地図だった。料理室という場所に、マルが書き込まれている。ここに行け、ということらしい。
「もしも、料理部に興味がなかったら他の部活もあるから。その時は、改めて先生に言ってくれ。対応するから。それじゃ、頼んだぞ」
料理するのは好きなので、部活として活動できるなら是非参加したい。そう思った僕は、すぐに料理室へと向かった。
料理部の部室は学校の端の方にあり、教室から少し歩くことになった。
地図を頼りに来てみると、扉の上の教室名が“料理室”となっているのを発見した。ここかと思って、一応ノックをしてから中に入る。
「すみません」
教室の中を見渡すが、誰も居なかった。先生は部長が居ると言っていたが、部長も居ないようだ。少しだけ、待ってみようかと思った。それに、室内に設置されていたシステムキッチンが、とても気になった。
「これすごい」
ステンレス製でできた、広々としたクッキングカウンターに豊富な収納スペース。足元に収納する場所がある。調理道具は、その中にしまってあるのだろうな。勝手に中を見ることは止めておく。キッチンの横には、業務用と思われる冷蔵庫があった。とても立派で大きな冷蔵庫だ。何十人分の食材を入れておくことが出来そう。
学校の部活としては設備がかなり整っているので、とても驚いた。そんな風に室内を観察していると、後ろから音がしたので振り返った。扉が空いた音だった。
頭半分だけを扉から覗きこむように出して、身体の下を出さないでこちらを伺っている女性を見つけた。
「すみません、ここって料理部ですか?」
「そ、そ、そうです、けど。あの、さ、佐藤さん、よね?」
「はい、そうです」
声を掛けるとビクッと身体を飛び跳ねさせて、彼女を怯えさせてしまった。ただ、向こうは僕の事を知っているようで、“佐藤さん”と呼びかけてくる。
「あの、料理部の部長は居ますか?」
「い、居ます。しょ、少々お待ちを………」
僕の質問に答える彼女の声は、だんだんと声が小さくなった。そして、最後の方は聞き取れないぐらいの小声で、聞き逃しそうになる。今すぐ呼んできますと、言っていたと思う。
バタバタと去っていった彼女。僕は、開けっ放しになっていた扉を閉めて待つことにする。
3分程、待った。窓の外から校庭を眺めていると、ドタドタと外から大きな足音が聞こえてきた。その音に続いて、料理室の扉が開く。さっきの人が戻ってきたのか。
先ほど部長を呼んでくるといった女性と、見覚えのない男性が入ってきた。彼が、この料理部の部長だろうか。
「待たせてしまって、すまない。私がこの料理部の部長です。少し部活の話をしたいんだけれど、この後お話する時間はあるかな?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
彼の制服を見ると、上級生のようだ。だが、僕に対して気遣いながら話してくれているのを感じる。しっかりしている人のようだ。
「よし。それじゃあ、一緒に来てくれ。桜君、君も一緒に」
「えっ、わ、私もですか!?」
「もちろん。一緒についてきなさい」
「は、はいッ!」
僕に対しては優しい口調で、“桜”と呼ばれた女性の方は、拒否させないような強い口調で言って、彼は料理室の出入り口とは別の扉を開けて中へ入っていった。
僕は、素直に彼の言うことを聞いて、その後についていく。
「佐藤、ちょっと待ってくれ」
家に帰ろうとドアに向かい歩き出そうとした時、担任の加藤先生が教室の前にあるドアから入ってきて、僕を呼んだ。
「話がある、ちょっと来てくれないか」
「あ、はい。わかりました」
話ってなんだろうと疑問に思いながら、加藤先生の後に付いて教室を出る。何か、怒られるようなことをしたかな。
廊下に出て、先生と向かい合う。相変わらず背がデカいな。150cm対190cmだから、大きいと思うのは当たり前かと考えていると、話し始めた加藤先生の言葉を聞く。
「佐藤、部活はどうする?」
「部活、ですか?」
予想外の話だったので、疑問で返してしまった。そういえば僕、授業が終わったらすぐ家に帰っていたけれど。
「この学園は、部活動を奨励していてな。全員、何かしらの部活に入っているんだ。佐藤も、ある部活に所属していたんだが覚えているか?」
考えてみるが、記憶になかった。前の記憶でも、中学生の頃は特にどこの部活にも所属していなかったと思う。運動部とか入る気はないしなぁ。
「思い出せません。いったい僕は、何の部活に所属しているのですか?」
「料理部だ」
「料理部?」
佐藤優が料理部に所属していた。そう聞いて、あまりピンとこない。僕が目覚める以前の佐藤家は、家の食事のほとんどをスーパーのお弁当や出前などで済ませていたみたいだから。以前の佐藤優も、料理など出来ないんだと思っていたけど。
実は、料理が出来たのか。だけど、家族などには振る舞わなかったかな。
「あぁ。料理部と言って、その名の通り料理する部活だ。だが、今はほとんど活動をしていないみたいだけどな」
活動していない? どういうことだろう。
「活動していないのは、何故なのですか?」
「今の料理部は、ほとんど名前だけ所属して実際には活動していないようだ。先ほど話した通り、学園では学生全員が何かしらの部活に入るように強制されているから、何も所属しないというのが出来ない。なので部活は適当に決めて、活動に参加しないって事が結構あったりする。この料理部は、それがひどくてな」
幽霊部員というやつかな。せっかく所属しているのに、面倒だからサボっている。だとすると、生徒全員を部活に入部させる意味が、あまりないような気がするけど。とりあえず、今はその問題は置いておくとして。
「もしかして、僕も以前は所属だけしていたのですか?」
「そうらしい。悪いが、一度部室に行ってみて部長さんと話をしてくれ。さっき確認したら、部長は活動をしているようだから。この紙に書いてある場所に、行ってみてくれ」
先生に言われて、プリントを渡されたので受け取る。それは、学校の地図だった。料理室という場所に、マルが書き込まれている。ここに行け、ということらしい。
「もしも、料理部に興味がなかったら他の部活もあるから。その時は、改めて先生に言ってくれ。対応するから。それじゃ、頼んだぞ」
料理するのは好きなので、部活として活動できるなら是非参加したい。そう思った僕は、すぐに料理室へと向かった。
料理部の部室は学校の端の方にあり、教室から少し歩くことになった。
地図を頼りに来てみると、扉の上の教室名が“料理室”となっているのを発見した。ここかと思って、一応ノックをしてから中に入る。
「すみません」
教室の中を見渡すが、誰も居なかった。先生は部長が居ると言っていたが、部長も居ないようだ。少しだけ、待ってみようかと思った。それに、室内に設置されていたシステムキッチンが、とても気になった。
「これすごい」
ステンレス製でできた、広々としたクッキングカウンターに豊富な収納スペース。足元に収納する場所がある。調理道具は、その中にしまってあるのだろうな。勝手に中を見ることは止めておく。キッチンの横には、業務用と思われる冷蔵庫があった。とても立派で大きな冷蔵庫だ。何十人分の食材を入れておくことが出来そう。
学校の部活としては設備がかなり整っているので、とても驚いた。そんな風に室内を観察していると、後ろから音がしたので振り返った。扉が空いた音だった。
頭半分だけを扉から覗きこむように出して、身体の下を出さないでこちらを伺っている女性を見つけた。
「すみません、ここって料理部ですか?」
「そ、そ、そうです、けど。あの、さ、佐藤さん、よね?」
「はい、そうです」
声を掛けるとビクッと身体を飛び跳ねさせて、彼女を怯えさせてしまった。ただ、向こうは僕の事を知っているようで、“佐藤さん”と呼びかけてくる。
「あの、料理部の部長は居ますか?」
「い、居ます。しょ、少々お待ちを………」
僕の質問に答える彼女の声は、だんだんと声が小さくなった。そして、最後の方は聞き取れないぐらいの小声で、聞き逃しそうになる。今すぐ呼んできますと、言っていたと思う。
バタバタと去っていった彼女。僕は、開けっ放しになっていた扉を閉めて待つことにする。
3分程、待った。窓の外から校庭を眺めていると、ドタドタと外から大きな足音が聞こえてきた。その音に続いて、料理室の扉が開く。さっきの人が戻ってきたのか。
先ほど部長を呼んでくるといった女性と、見覚えのない男性が入ってきた。彼が、この料理部の部長だろうか。
「待たせてしまって、すまない。私がこの料理部の部長です。少し部活の話をしたいんだけれど、この後お話する時間はあるかな?」
「えぇ、大丈夫ですよ」
彼の制服を見ると、上級生のようだ。だが、僕に対して気遣いながら話してくれているのを感じる。しっかりしている人のようだ。
「よし。それじゃあ、一緒に来てくれ。桜君、君も一緒に」
「えっ、わ、私もですか!?」
「もちろん。一緒についてきなさい」
「は、はいッ!」
僕に対しては優しい口調で、“桜”と呼ばれた女性の方は、拒否させないような強い口調で言って、彼は料理室の出入り口とは別の扉を開けて中へ入っていった。
僕は、素直に彼の言うことを聞いて、その後についていく。
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