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第3章 テレビ出演編
第20話 テレビの取材
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「テレビですか?」
作戦が成功して部員が戻ってきた。部活動に参加するようになってから、しばらく経ったある日のこと。
何やら大事な話があると僕は呼び出された。料理部の調理室で部長から話を聞いて驚く。
「そう、テレビ。なんだか、我々の活動がとあるテレビ局の人に伝わったらしくて。学園に取材の依頼が来ているらしい」
「はぁ……、そうなんですか」
突然の話に、どうも実感が湧かない。テレビの取材なんて、凄いとは思うけれど。
「それで、部活動の内容も撮影したいらしい。佐藤さんには事前にカメラが入っても大丈夫かどうか、聞いておきたいと思って」
「部活動の内容って事は、僕らが料理するところを撮るんですか?」
「うん。そう聞いている」
わざわざ僕に聞くということは、やはりそういう事だろう。僕が部員達を指導する様子を撮られるのか。
「佐藤さんが指導しているところを是非ってお願いされている。どうやら君のことをメインにして、撮影したいって向こうは考えているらしいよ」
「はぁ、そうなんですか」
テレビには前の記憶の時には良い印象がなかった。だから、あまり関わりたくないというのが正直な気持ちだけれど。
「それって、拒否することは出来ますか?」
「それが、先生方は学園の良い宣伝になるなんて、かなりヤル気みたいでねぇ……。もちろん、男子として色々と考慮してもらわないと困るような部分は言っておいて、十分注意してもらうけどね」
部長は、僕が違う部分で取材を嫌がっているのかと、考えてくれたようだ。とても真剣に、僕の顔色を伺う部長。ここで取材を断るというのも、かなり難しいかな。
仕方ない。僕は覚悟を決めて、首を縦に振る。
「わかりました。部員達を指導している様子の撮影は、お引き受けしますよ」
「本当か! すまないが、お願いするよ」
「はい」
ちょっと、気が重いなぁ。
***
どうやら今回の取材の主目的は、共学であるこの学園らしい。その撮影の一部に、部活動について取材をするという事らしい。料理部がメインじゃなくて良かったよ。それを聞いて、少しだけ気が楽になった。
テレビの取材が来ることを知らされてから、一週間後。
取材班は適当な時間に撮影しに来るらしい。なので、いつものように部活動をしていればいいと、部長は部員達に指示する。
テレビ取材という未知の体験に、みんないつもよりソワソワしているようだった。料理に集中できてないのか、所々でミスが連発していた。気が緩んでいる。さっき、部員の一人が包丁で指を切ってしまっていた。
傷は浅かったけれど、念のために保健室へと向かって行った。その部員は、とても残念そうな顔をしていた。そこまで取材を受けたかったのか。だけど、怪我しているので保健室で治療してもらわないと。
そういった諸々の事情があって、いつもより調理の時間と手間が掛かっていた。
僕は、ふぅと内心で息を吐く。その時、扉の向こう側から大勢の人達が廊下を歩く足音と話し声が聞こえてきた。とうとう来たかと、部員達のヒソヒソ声が多くなる。
「皆! 集中して」
「はい」「わかりました」「気をつけまーす」
僕は、パンパンと手を二回叩いて部員達の注目を集める。そして、集中するように指示した。皆の返事は良いけれど、やっぱり取材が気になるようだ。
「バケットに、先ほどのドレッシングを表面にかけて染み込ませてください」
「はい」
カメラが入ってきた。部員達は撮影されているのを気にしているのか、急に真剣になって集中しながら、調理に取り掛かる。
今日の料理は美味しくて見た目も良いけど簡単に出来る、バケットサンドだった。
男性のリポーターとカメラマン、その後ろには数十人も女性達が居た。あれが技術スタッフかな。かなり大人数のようだ。
リポーターは女性だと聞いていたのに。どうやら、男性のリポーターに変更されたようだ。カメラの前に立って、何やら話している男性リポーター。
技術スタッフ集団の中に、見たことある人物もいた。うちの学園の先生達も一緒に撮影について回っているようだ。
そんな彼女たちの様子を見ていると、集団の中の一人がスケッチブックを持って、部員と僕に向けて見せた。
”つづけて! つづけて!”
料理しているところを見たいのだろう。とりあえず、彼女の出したカンペに従って僕は、部員達に次の指示を出す。
「ドレッシングをかけたら、輪切りにしたトマトとカマンベールチーズをこのように乗せてください」
手元に作っておいた、トマトとチーズのバケットサンドを部員達に見せてやり方を覚えてもらう。すると、グイとカメラマンがこちらにカメラを向けて近寄ってきた。
ちょっと、鬱陶しいな。
僕は、扉から一番遠くのホワイトボードの前に立っていた。なので、僕に近づくと他の部員が映らなくなる。僕よりも、他の部員達を映してあげてくれ。
チラチラと何度か視線をカメラに向けると、すぐ後ろにさっきのスケッチブックの女性が居て、”きにせず つづけて”と書いた文字を僕に向ける。
すごく、気になるんだけど。
「完成したら、お皿に盛りつけて。盛り付け方は、それぞれ自由に」
皆が作ったものを確認するため、僕は部員達が座っているテーブルを回っていく。本日の料理は調理が簡単なので、大きく失敗しているものは無さそう。無事に料理が完成しているようだ。
「皆さん、お疲れ様でした。それでは飲み物準備しましょう」
飲み物の準備も終えて、僕も自分が作った分を食べようした。するとリポーターが話しかけてくる。
「お疲れ様でした。今日は、どういったお料理を作ったんですか?」
「これです」
聞かれたので、僕が作ったものを指さす。これを作ったんです。
「これは?」
「バケットサンドです」
「へぇ、一つ頂いてもいいですか?」
この男性リポーター、全然遠慮しないな。まぁ、取材だから仕方ないのかな。味の感想も、テレビの視聴者に伝える必要があるだろうし。
「どうぞ」
「わぁ! おいしいそうですね。パンの上に、トマトとチーズが乗ってますよ」
パンの両端を持って、カメラに向けて見た目の解説をする。
「それでは、いただきます」
僕に向けて手を合わせて、小さくお辞儀をしてから食べ始める。
「んっ、とてもおいしいです! トマトの酸味とチーズの濃厚なコクと香り。パンにしっかりとした味がついていますね! とってもおいしいです!」
テレビ番組に良くある、食レポのようなしっかりとしたコメントをくれる。それを食べ終わると、こちらに近づいてきてマイクを僕に向ける。
何か話せ、ということなのかな。コメントを求められるのは苦手だなぁ。
「おいしい料理を堪能させていただきました。まだ学生なのに、この料理部で部員に指導しているということですが、お料理はいつから勉強されていたんですか?」
「え? そうですね。料理は小さい時から、ちょっと……」
「へぇ、そうなんですか!」
僕の適当な答えは、適当に相槌される。その後、いくつか質問される。だけど僕は乗り気になれず、ほとんどを気の抜けたような適当な答えを返した。
それから10分ほど色々と質問されるのを繰り返した後、やっと解放してくれた。そして次は、部長に取材しに行く。よかった。これで、僕の出番は終わりかな。
カメラを向けられていたことで、思った以上に緊張していたようだ。
ふぅ、とため息を吐いて一旦落ち着く。そして、撮影された内容が本当にテレビで放映されるのかと思った。僕の拙いインタビューは、あまり放映してほしくないな。
部長がインタビューされている様子を横目で眺めながら、椅子に座った。そして、僕はもう一度ため息を吐いた。
作戦が成功して部員が戻ってきた。部活動に参加するようになってから、しばらく経ったある日のこと。
何やら大事な話があると僕は呼び出された。料理部の調理室で部長から話を聞いて驚く。
「そう、テレビ。なんだか、我々の活動がとあるテレビ局の人に伝わったらしくて。学園に取材の依頼が来ているらしい」
「はぁ……、そうなんですか」
突然の話に、どうも実感が湧かない。テレビの取材なんて、凄いとは思うけれど。
「それで、部活動の内容も撮影したいらしい。佐藤さんには事前にカメラが入っても大丈夫かどうか、聞いておきたいと思って」
「部活動の内容って事は、僕らが料理するところを撮るんですか?」
「うん。そう聞いている」
わざわざ僕に聞くということは、やはりそういう事だろう。僕が部員達を指導する様子を撮られるのか。
「佐藤さんが指導しているところを是非ってお願いされている。どうやら君のことをメインにして、撮影したいって向こうは考えているらしいよ」
「はぁ、そうなんですか」
テレビには前の記憶の時には良い印象がなかった。だから、あまり関わりたくないというのが正直な気持ちだけれど。
「それって、拒否することは出来ますか?」
「それが、先生方は学園の良い宣伝になるなんて、かなりヤル気みたいでねぇ……。もちろん、男子として色々と考慮してもらわないと困るような部分は言っておいて、十分注意してもらうけどね」
部長は、僕が違う部分で取材を嫌がっているのかと、考えてくれたようだ。とても真剣に、僕の顔色を伺う部長。ここで取材を断るというのも、かなり難しいかな。
仕方ない。僕は覚悟を決めて、首を縦に振る。
「わかりました。部員達を指導している様子の撮影は、お引き受けしますよ」
「本当か! すまないが、お願いするよ」
「はい」
ちょっと、気が重いなぁ。
***
どうやら今回の取材の主目的は、共学であるこの学園らしい。その撮影の一部に、部活動について取材をするという事らしい。料理部がメインじゃなくて良かったよ。それを聞いて、少しだけ気が楽になった。
テレビの取材が来ることを知らされてから、一週間後。
取材班は適当な時間に撮影しに来るらしい。なので、いつものように部活動をしていればいいと、部長は部員達に指示する。
テレビ取材という未知の体験に、みんないつもよりソワソワしているようだった。料理に集中できてないのか、所々でミスが連発していた。気が緩んでいる。さっき、部員の一人が包丁で指を切ってしまっていた。
傷は浅かったけれど、念のために保健室へと向かって行った。その部員は、とても残念そうな顔をしていた。そこまで取材を受けたかったのか。だけど、怪我しているので保健室で治療してもらわないと。
そういった諸々の事情があって、いつもより調理の時間と手間が掛かっていた。
僕は、ふぅと内心で息を吐く。その時、扉の向こう側から大勢の人達が廊下を歩く足音と話し声が聞こえてきた。とうとう来たかと、部員達のヒソヒソ声が多くなる。
「皆! 集中して」
「はい」「わかりました」「気をつけまーす」
僕は、パンパンと手を二回叩いて部員達の注目を集める。そして、集中するように指示した。皆の返事は良いけれど、やっぱり取材が気になるようだ。
「バケットに、先ほどのドレッシングを表面にかけて染み込ませてください」
「はい」
カメラが入ってきた。部員達は撮影されているのを気にしているのか、急に真剣になって集中しながら、調理に取り掛かる。
今日の料理は美味しくて見た目も良いけど簡単に出来る、バケットサンドだった。
男性のリポーターとカメラマン、その後ろには数十人も女性達が居た。あれが技術スタッフかな。かなり大人数のようだ。
リポーターは女性だと聞いていたのに。どうやら、男性のリポーターに変更されたようだ。カメラの前に立って、何やら話している男性リポーター。
技術スタッフ集団の中に、見たことある人物もいた。うちの学園の先生達も一緒に撮影について回っているようだ。
そんな彼女たちの様子を見ていると、集団の中の一人がスケッチブックを持って、部員と僕に向けて見せた。
”つづけて! つづけて!”
料理しているところを見たいのだろう。とりあえず、彼女の出したカンペに従って僕は、部員達に次の指示を出す。
「ドレッシングをかけたら、輪切りにしたトマトとカマンベールチーズをこのように乗せてください」
手元に作っておいた、トマトとチーズのバケットサンドを部員達に見せてやり方を覚えてもらう。すると、グイとカメラマンがこちらにカメラを向けて近寄ってきた。
ちょっと、鬱陶しいな。
僕は、扉から一番遠くのホワイトボードの前に立っていた。なので、僕に近づくと他の部員が映らなくなる。僕よりも、他の部員達を映してあげてくれ。
チラチラと何度か視線をカメラに向けると、すぐ後ろにさっきのスケッチブックの女性が居て、”きにせず つづけて”と書いた文字を僕に向ける。
すごく、気になるんだけど。
「完成したら、お皿に盛りつけて。盛り付け方は、それぞれ自由に」
皆が作ったものを確認するため、僕は部員達が座っているテーブルを回っていく。本日の料理は調理が簡単なので、大きく失敗しているものは無さそう。無事に料理が完成しているようだ。
「皆さん、お疲れ様でした。それでは飲み物準備しましょう」
飲み物の準備も終えて、僕も自分が作った分を食べようした。するとリポーターが話しかけてくる。
「お疲れ様でした。今日は、どういったお料理を作ったんですか?」
「これです」
聞かれたので、僕が作ったものを指さす。これを作ったんです。
「これは?」
「バケットサンドです」
「へぇ、一つ頂いてもいいですか?」
この男性リポーター、全然遠慮しないな。まぁ、取材だから仕方ないのかな。味の感想も、テレビの視聴者に伝える必要があるだろうし。
「どうぞ」
「わぁ! おいしいそうですね。パンの上に、トマトとチーズが乗ってますよ」
パンの両端を持って、カメラに向けて見た目の解説をする。
「それでは、いただきます」
僕に向けて手を合わせて、小さくお辞儀をしてから食べ始める。
「んっ、とてもおいしいです! トマトの酸味とチーズの濃厚なコクと香り。パンにしっかりとした味がついていますね! とってもおいしいです!」
テレビ番組に良くある、食レポのようなしっかりとしたコメントをくれる。それを食べ終わると、こちらに近づいてきてマイクを僕に向ける。
何か話せ、ということなのかな。コメントを求められるのは苦手だなぁ。
「おいしい料理を堪能させていただきました。まだ学生なのに、この料理部で部員に指導しているということですが、お料理はいつから勉強されていたんですか?」
「え? そうですね。料理は小さい時から、ちょっと……」
「へぇ、そうなんですか!」
僕の適当な答えは、適当に相槌される。その後、いくつか質問される。だけど僕は乗り気になれず、ほとんどを気の抜けたような適当な答えを返した。
それから10分ほど色々と質問されるのを繰り返した後、やっと解放してくれた。そして次は、部長に取材しに行く。よかった。これで、僕の出番は終わりかな。
カメラを向けられていたことで、思った以上に緊張していたようだ。
ふぅ、とため息を吐いて一旦落ち着く。そして、撮影された内容が本当にテレビで放映されるのかと思った。僕の拙いインタビューは、あまり放映してほしくないな。
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