女男の世界

第３章 テレビ出演編

第22話 学校前の出来事

　取材された様子がテレビに放映された番組を見た、その翌日。

　家族の皆が、朝食の時にも昨晩の番組について楽しそうに会話していた。彼女達の話を横で聞いていた僕は、恥ずかしかった。朝食の片付けをしてから、さっさと家を出る。

　いつものように、圭一と合流。電車に乗って二人で学校へ向かう。不思議と圭一は昨日の番組ついて、話題に出さなかった。昨晩は、テレビを見なかったのだろうか。昨晩から色々と言われていたので、良かったけれど。何も言われないとなると、少し気になってしまう。

　やっぱり、テレビに出演したという経験は僕にとって特別だったようだ。あまり、自慢とかしないように気をつけないと。他の皆も一緒に出演していたんだから。僕が特別というわけじゃないことを自覚しないとね。

　いつもと同じぐらいの時間に、校門前に到着する。だけどそこは、いつもとは少し違っていた。校門周りには、遠くから見ても分かるぐらいの人だかりが出来ていた。

　およそ、１００人ぐらいは居るだろうか。観察した感じ、全員女性のようだけど。彼女達は、校門前で何やら叫んでいる。

　集まっている彼女達とは関わり合いにならないよう、左右に避けながら学園の中に入っていく学生達が印象的だった。

　横に並んで一緒に登校していた圭一が、聞いてくる。

「なに？　あれ」
「さぁ？　なんだろう」

　その集団は何か叫んでいるけれど、声が混ざり合って上手く聞き取れない。学園の先生たちが対応していて、追い返そうとしているが集団は指示に従わない。

　彼女たちの大声を聞き取ろうと集中した時、僕の名前を言ってるように聞こえた。

「今、僕の名前言わなかった？」
「えっ……？　うーん。もしかして……」

　圭一は腕を組んで、何かを考え始めた。もしかして、何か知っているのかな。

　すると、集団の中の誰かが僕の顔を見た。そして、こちらを指さしてひそひそ囁き合っている。なんだ、どうした。

　何の騒ぎか気になるが、あんまり関わり合いになったら面倒そう。さっさと、通り抜けたほうが良さそう。

「さっさと学園の中に入っちゃおう」
「そうだね。行こうか」

　急いで横を通って、学園に入ろうとする。だが、誰かが叫んだ。

「優くんよッ！　ほら、優くんがいるわ。昨日のテレビで見るよりずっと美人！！」


　僕の名前が叫ばれたのが、はっきり聞こえた。集団が静まり返って、凝視される。どうやら、昨日のテレビで放映された番組を見た人達だということが判明した。

　その集団が、一気に僕に殺到する。

「う、うぁっ」
「ゆ、ゆう！　危ないッ！　逃げろ！」

　大勢の者が同時に、こちらへ向かって走り寄ってくる。彼女達の目は血走って、とんでもない迫力だ。怖い。圭一が逃げろと言ったが、足が思うように動かないうちに近づかれた。逃げ出せないほど早く、僕は周りを囲まれた。

「あぁ、私の運命の人！　会いたかった」

　あちこちから手が伸びてきて、手足をぎゅっと抱きしめられる。前から、見知らぬ女性の胸が……。

「ぐ、ぐぅぁ」

　運命って、何だ。よく分からないうちに、僕は抱きしめられた。口をふさがれて、呼吸が出来ないほど圧迫される。

「あぁ、この抱き心地。素晴らしい。想像していた以上よ」
「は、はなして……」

　見知らぬ女の腕の中から逃げられずに、僕の意識はぷつんと切れた。