女男の世界

キョウキョウ

文字の大きさ
50 / 60
第6章 姉妹喧嘩編

第39話 沙希姉さんと紗綾姉さん

しおりを挟む
 家族旅行から帰ってきて、数日ほど経過していた。今は日常生活に戻って、色々と問題も解決したので、僕は再び学園に通えるようになった。まだ周囲の警戒は続けているけれど、1人で登下校することに。家族や先生の負担にならなくて良かった。

「ただいま」

 今日も授業を受けて、自宅に帰ってきた。2階にある自分の部屋で着替えた後は、夕食の準備をするためキッチンへ向かう。

 これから、旅行先で食べた料理を参考にして作ってみようかと考えていた。いつもより、時間と手間がかかりそうだ。なので、余裕を持って調理を始めたい。ワクワクした気持ちで、楽しみながら準備できそうだ。

「あれ、今日は早いんだね」

 いつもなら部活の練習があって家に居ない沙希姉さんが、この時間にしては珍しく食卓のテーブルでアイスを食べていた。

「んー? ん!」

 彼女は制服姿だった。学校から帰ってきて、直接キッチンに来たようだ。そして、僕の声に反応してアイスを食べならが気怠そうな返事をする。

 それからアイスを食べ終えて、彼女は話し始めた。

「あー、おいしかった。早かったのは、今日から試験期間だから部活が休みでね」
「あ、なるほど。そうなんだ」

 そういえば、もうすぐ期末テストの時期になるのか。僕も、ちゃんと勉強しないといけないな。勉強する時間を確保して、悪い点数を取らないように気をつけよう。

 だけど今は、とりあえず今日の夕飯を用意することが先かな。冷蔵庫に入っている食材を確認しておく。食材は十分に足りていそうなので、大丈夫そうかな。

 頭の中で料理のレシピと調理手順を確認しながら、必要な材料を取り出していく。コレとコレを使って、こっちは後で使おうかな。今は冷蔵庫の中に入れておこうか。忘れないようにしないと。

「あら、優。こんな早い時間から、夕食の準備?」

 話しかけてきたのは紗綾姉さんだった。冷蔵庫の中を確認している僕の背後から、ひょっこり顔を出す。彼女も、帰ってきていたのか。沙希姉さんが試験期間ということは、同じ学校に通っている紗綾姉さんも同じく、試験期間ということかな。

 僕は彼女の質問に頷いて、答える。

「うん。これから家族皆の夕飯を作っていくよ」
「へー。楽しみ」

 僕の背中と彼女の胸が密着するぐらい近づいてきた。そんな体勢で、僕達は会話をしている。ちょっと、近いかもしれない。そう思ったけれど、別に不快じゃなかったから僕は何も言わなかった。

 しかし、近くで見ていた人は不快に感じたようだ。

「おい、紗綾! 優に近いぞ」

 沙希姉さんの声は、紗綾姉さんに向けられたものだった。怒気を含んだ声。彼女の方に目を向けると、不機嫌そうな表情をしていた。眉間にはシワを寄せていて、唇を尖らせている。

「別にいいじゃない。それで今日は、どんな料理を作るつもりなの?」
「え? えっと、この前の温泉宿に行った時の料理を参考にしてみようかと思って」

 紗綾姉さんは何も気にしないまま、僕との会話を続けようとした。なんだか不穏な雰囲気を感じつつ、僕は紗綾姉さんの質問に答える。沙希姉さんが怒ったまま。どうにかしないと、いけない。

「へぇ、楽しみね」
「聞いてるのか? おい、優から離れろって」

 そう言って、沙希姉さんが椅子から勢いよく立ち上がった。そして、僕らの立っていたキッチンに入ってくる。紗綾姉さんの肩に手を置くと、僕のそばから強引に引き離そうとした。

 沙希姉さんの行動を、不機嫌そうな顔で見る紗綾姉さん。ちょっとこれは、ヤバいんじゃないかな。今までにも何度か、2人の軽い争いなら見てきた。けれど今日は、いつもと雰囲気が少し違っていた。なんだか、良くない雰囲気。

 肩に置かれた手を、紗綾姉さんは手のひらで払いのけた。パシッと音が鳴るほどの強さで。そんな彼女の行動により、2人が一気に険悪なムードへと変わった。

「さっきから、うるさいわよ」
「なに……?」
「邪魔しないでくれる?」
「邪魔したのは、そっちの方だろうが! 急に割り込んできてさぁ!!」

 火花が散りそうなぐらい、目線をかち合わせている二人。僕は、オロオロと戸惑いながら2人を交互に見ることしかできない。

「ちょっと、2人とも。ケンカはダメだよ」
「「……」」

 なんとか声を出して、2人の喧嘩を止めようとする。だけど、2人は黙ったまま。

「貴方は私達に構わず、1人で椅子に座ってダラダラしてればいいのよ」
「はぁ?」

 紗綾姉さんが、沙希姉さんに向かって言い放った。どんどん良くない状況へ陥っている気がする。

 どうにかしないと。でも、どうすれば良いんだろう? どうすれば、2人の喧嘩を止めることが出来るのか。考えるが、良い方法が思い浮かばない。

「おまえは、さっきから優に近づきすぎ。離れろよ」
「だから、貴女には関係ないでしょ」

 その言葉を聞いて、沙希姉さんが腕を振り上げた。まずい、手を出す気だ。それを見た瞬間に、体が勝手に動いていた。

 僕はとっさに沙希姉さんの前に飛び出して、沙希姉さんの暴力を止めようとした。
しかし……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...