私は認めません~自分の愛を優先して第二王妃へ格下げすると言われたので、婚約を破棄してもらいます~

キョウキョウ

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第20話 二人の破滅※カーラ視点

 窓の外を眺めながら、爪を磨いたり、髪を弄ったり。なにもない屋敷でやることといえば、せいぜいその程度だった。

 また今日も何もない一日。

 最近のケアリオットは何やら怪しい動きばかりしているし、私との時間も減っている。「重要な会議がある」だの「計画の最終調整だ」だのと言って、私を置いて出かけてばかり。

 本当に王位を取り戻すことができるのかしら?

 不安は募るばかりだった。正直なところ、彼の言う「完璧な計画」とやらも眉唾物だと思っている。これまでの経験から言って、ケアリオットの計画に期待するのは無理がある。でも、彼に成功してもらわないと現状は変わらない。退屈な日々が続くだけ。やっぱり今は、大人しく彼の成功を願うしかないかしら。

 そんなことを考えていた時、突然部屋の扉が勢いよく開かれた。

「きゃあ!? い、いきなり何なのよ、あなたたち!」

 大きな音と共に武装した兵士たちが一斉に部屋になだれ込んできて、私は声を上げて後ずさった。心臓が激しく鼓動し、息が詰まりそうになる。

 兵士たちは容赦なく部屋の中を制圧し、私に向かって剣を向けた。その切っ先の冷たい光を見て、足がすくんでしまう。

「我々は王国軍特別捜査隊である。王室に対する謀反の罪で貴女を逮捕する」

 兵士の一人が格式張った口調で宣告する。その声は冷徹で、一切の情けがこもっていない。

 謀反? 私が?

「そんなの知らないわよ! 私は関係ない!」

 私は激しく否認した。両手を振り回して抗議するが、兵士たちの表情は微塵も変わらない。

 これは全部ケアリオットのせいよ! 本当に、私は何もしていない!

「私は被害者なのよ! 巻き込まれただけよ! お願い、信じて!」

 涙声で訴えても、兵士たちは冷ややかな視線を向けるだけだった。

「なんで、私まで捕まるのよ! 嫌! 嫌よ! 逃がして! ひっ!?」

 懸命に抵抗したけれど、兵士たちは容赦なく私の腕を掴んだ。その手は鉄のように固く、逃れることはできそうにない。

 こんなことになるなんて聞いてない!

 心の中で毒づいていた。ケアリオット、あの馬鹿! なんで、私まで捕まることになるのよ! なんで、私を巻き込むの!?

 あの男のせいで、私まで捕まることになるなんて! そんなの許せない。私は関係ないのに。どうにかして、自分だけは助かりたい。それだけが今の私の願いだった。

「お願いします! 私は本当に何も知らないんです! ケアリオット様に利用されただけなんです!」

 最後の頼みの綱として、必死に兵士に懇願する。それでもやっぱり、彼らの表情は石のように固かった。

「抵抗は無意味だ。大人しく従え」

 冷酷な言葉と共に、私の手に手枷がはめられる。その冷たい感触に、現実の重さを思い知らされた。

 こんなことで、私の人生は終わってしまうの?

 

 強制的に連行される途中、屋敷の外に出された時に見覚えのある人影が見えた。同じように手枷をはめられ、みじめな姿で兵士に連行されている男の姿。

「カーラ!」
「ケアリオット様!」

 同じく捕らえられたケアリオットとの再会。けれど、私の心に湧いてきたのは安堵ではなく、激しい怒りだった。

 この人のせいで……、この男のせいで私が……。

「君を巻き込んでしまって、すまない!」

 ケアリオットが謝罪の言葉を口にするが、そんなものは今更遅い。情けない表情を浮かべているが、それすら腹立たしい。

「謝罪なんて必要ないわ! 私、死にたくない! どうにかしてよ!」
「本当に申し訳ない……。でも、きっと何とかなる。まだ諦めるな」

 彼の情けない謝罪を聞いても、私の気持ちは少しも和らがない。脳天気な言葉に、苛立ちが募るばかり。

 謝罪されても何にもならないのよ!

 何とかなる、って何! もう私たちは助からないわよ!

 私、間違ってた。こんな男と関わってしまったのが人生最大の不幸だった。彼と出会ったことは運命なんかじゃなく、ただの災厄だったのだ。

「あんたとなんて、出会わなければよかった!」

 私の本音が口をついて出た。これまで抑えていた感情が次々と溢れ出す。もう止まらない。

「な……!? カーラ、君まで……、そんなことを俺に言うのか」

 ケアリオットはショックを受けているようだったが、私の気持ちが晴れることはなかった。今までの不満、不安、全てが爆発した。

 そして、ケアリオットも黙ってはいなかった。彼の顔に怒りの色が浮かぶ。

「君だって散々自由にしてきたじゃないか! これまで、さんざん恩恵を受けておいて、土壇場になったらそんな事を言うのか?」

 今度は彼が反撃してきた。その言葉に、私の怒りは更に燃え上がる。

 恩恵? 何それ。

「当然でしょ! 私は王妃になる女だったのに! 私を守ってくれるって言ったのに、全部嘘じゃない!」
「嘘だと? 俺は君のために王位を……」
「王位? そんなもの、あんたが勝手に失って、また欲しくなっているだけじゃない! 私のためにとか言って、本当は自分のためでしょ!」

 私は容赦なく反論した。

「私はあんたに騙されただけよ! 一番の被害者なの!」
「被害者だと? 君は俺と一緒に贅沢を楽しんでいたじゃないか! 高価な宝石も、美しいドレスも、全部俺が与えたものだ!」
「それは当然の権利よ! あんたが勝手にプレゼントしてくれたんだから! 私は、何も頼んでない!」
「権利だと……?」

 ケアリオットの呆れた声が聞こえたが、私は構わず続けた。

「そもそも、あんたがミュリーナって女との関係を上手くやってれば、こんなことにはならなかったのよ! 全部、あんたのせいじゃない!」
「ミュリーナのことについては、君が煽らなければ、俺だって……」
「煽った? 私があんたの背中を押してあげないと、何も決められなかったじゃないの! いつも優柔不断で!」
「背中を押した? 君は俺に愛してると言ってくれた! そのお返しに、俺も君を真剣に愛したのに!」

 ケアリオットの声が次第に荒くなっていく。私たちの醜い言い争いを、兵士たちが呆れた表情で見ているのが目に入った。でも、止まれないのよ。

「だから何なのよ! そんなの、あんたが勝手に受け取っただけでしょ! 私は愛してる、って言っただけよ!」

 私も叫んだ。本当に嫌になってくる。この状況も、この男も、全てが嫌だった。

「つまり君も、俺を利用しただけってことか!」

 ケアリオットが責めるような目で私を見る。

「そんなの当たり前でしょ! 私だって生き抜くのに必死だったのよ! 商人の娘として這い上がるために!」
「必死だった? 君のどこが必死だったって言うんだ! ただ、プレゼントを受け取るだけで、何もしてこなかったじゃないか!」
「あんたのために我慢してきたのよ! あんたみたいな男と一緒にいることを!」
「我慢? 俺と一緒にいることが我慢だったのか?」

 ケアリオットの声に、傷ついた響きが混じる。

「君は……、君は俺を愛していると言ったじゃないか」

 ケアリオットの声が震えている。まだそんな幻想を抱いているなんて滑稽だわ。

「愛? 無償の愛? そんなもの、あるわけないでしょ! 全部打算よ! あんたが私を王妃にしてくれるって言ったから、付き合っていただけ!」
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