大魔法使いは、人生をやり直す~婚約破棄されなかった未来は最悪だったので、今度は婚約破棄を受け入れて生きてみます~

キョウキョウ

文字の大きさ
16 / 49

第16話 幸せとは ※ストランド伯爵家夫人視点

 二人の娘たちが広場で横に並び、身体を動かしていた。それは、美容に効果のある体操らしい。

 とても張り切っている姉のナディーンと、面倒そうな表情のメイヤ。少し前だと、見られなかった二人の光景。以前はナディーンが、人に興味がなかったから。家族に対しても、無関心だった。

 そんな彼女が変わったから、こんな事になっている。

「お母様も一緒に! こうやって、身体を動かすんですよ」
「え、えぇ……」

 彼女たちの様子を眺めていると、私も声を掛けられた。

 戸惑いながら、娘の言う通りに身体を動かしてみる。これが、健康に良いらしい。腕を回したり、背を伸ばしたり、跳ねたりする。指示された通り、全身を動かした。

 確かに、汗を流して気持ちがスッキリしたような気がする。最近イライラしていた感情も、落ち着いたような気がした。

 私は娘のナディーンに教えてもらって、身体を動かし続けた。



 今まで私は、娘たちの教育に、とても熱心だった。それが、彼女たちが幸せになる方法だと思っていたから。

 ナディーンには特に厳しく、淑女としての立ち居振る舞いについてを教え込んだ。リカード王子と婚約した彼女は、王族に名を連ねることになる。だから、彼女が恥をかかないように完璧な振る舞い方を身に着けておく必要があると、私は考えて。

 幼い頃から厳しく指導した。娘は、私のことを嫌うだろうと思うぐらい。だけど、彼女のために嫌われても仕方ないと割り切っていた。娘に嫌われたとしても、完璧なマナーを使いこなせるようになれるのであれば、それで良いから。

 嫌われていると思っていたナディーンに誘われて、今は一緒に身体を動かして汗を流している。そしてナディーンは、楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 今まで見てきた中で、初めて見るような楽しそうな笑顔。今の時間をナディーンは満喫しているようだった。彼女は、幸せそうだった。

 最近、婚約相手のリカード王子とは関係が良くないらしい。今までの私だったら、表面上だけでも仲良くするように、と厳しく言っていただろう。それが、娘の幸せに繋がることだと信じていたので。

 しかし今は、迷っている。娘のナディーンに、リカード王子とは仲良くしなさい、と言うべきなのか。どうするのが一番良いのか、私には何も分からなかった。彼女は今という時間を、とても楽しんでいるようだったから。

 それにナディーンは既に、淑女としての振る舞いを完璧に習得していた。私から、娘に教えることはもう何も無かった。

 だから、何も言えない。

 ナディーンの好きなようにさせよう。今は、彼女の判断に任せるべきだと思った。無責任かもしれないけれど。

 彼女は、先のことをちゃんと考えているような気がする。私なんかよりも、ずっと深く将来のことを考えているようだった。

 ナディーンは、自分の力だけで幸せを掴み取れそうだった。だから、私には見守ることしか出来ない。これからは、妹のメイヤの教育に集中するべきということね。
感想 123

あなたにおすすめの小説

父上こそ、お出になって下さい

希臘楽園
ファンタジー
領地運営に尽力してきた伯爵令嬢クローデット。ある日、父親から突然の追放宣告を受ける。しかし彼女は素直に従わなかった。長年密かに積み上げてきた証拠と、領民たちの信頼を武器に、静かに反撃の狼煙を上げる。AIに書かせてみた第11弾はアンチテーゼから生まれた問題作。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

「妹にしか思えない」と婚約破棄したではありませんか。今更私に縋りつかないでください。

木山楽斗
恋愛
父親同士の仲が良いレミアナとアルペリオは、幼少期からよく一緒に遊んでいた。 二人はお互いのことを兄や妹のように思っており、良好な関係を築いていたのである。 そんな二人は、婚約を結ぶことになった。両家の関係も非常に良好であったため、自然な流れでそうなったのだ。 気心のしれたアルペリオと婚約できることを、レミアナは幸いだと思っていた。 しかしそんな彼女に、アルペリオはある日突然婚約破棄を告げてきた。 「……君のことは妹としか思えない。そんな君と結婚するなんて無理だ」 アルペリオは、レミアナがいくら説得しても聞き入れようとしなかった。両家が結んだ婚約を、彼は独断で切り捨てたのである。 そんなアルペリオに、レミアナは失望していた。慕っていた兄のあまりのわがままさに、彼女の気持ちは冷めてしまったのである。 そうして婚約破棄されたレミアナは、しばらくして知ることになった。 アルペリオは、とある伯爵夫人と交際していたのだ。 その事実がありながら、アルペリオはまだレミアナの兄であるかのように振る舞ってきた。 しかしレミアナは、そんな彼を切り捨てる。様々な要素から、既に彼女にはアルペリオを兄として慕う気持ちなどなくなっていたのである。 ※あらすじを少し変更しました。(2023/11/30) ※予想以上の反響に感想への返信が追いついていません。大変申し訳ありません。感想についてはいつも励みになっております。本当にありがとうございます。(2023/12/03) ※誤字脱字などのご指摘ありがとうございます。大変助かっています。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。