4 / 38
第4話 文句なしの生活
しおりを挟む
屋敷に帰ってきた私は、パーティーでの出来事を当主である父に報告した。
話を聞き終えた父は、あごに手を当てると考え込む顔になった。私は口を挟まず、静かに待つ。これからどうするのか。それを決めるのは、当主である父。
前のような辛い食事制限を命じられる生活には、戻りたくない。もう、戻れない。我慢に耐えられなくなった。美味しいケーキの味を知ってしまったから。
しばらく沈黙の時間が流れて、やがて意を決したように父が口を開いた。
「事態が落ち着くまで、お前はおとなしくしていなさい。屋敷からも出ないように」
「わかりました」
こうして私は、屋敷で待機するように命じられた。父の命令に素直に従う。辛くて厳しい妃教育を受けなくて済むし、食事も自由に食べられるので全く不満は無かった。むしろ、大歓迎。
あれから数日後、マルク王子との婚約破棄が正式に成立したそうだ。父から報告を聞いた。
イジメの件については追及されず、うやむやになったみたい。そもそも、私は誰かをイジメた記憶はなかった。妃教育が大変で、自分のことで精いっぱいだったから。他に目を向ける余裕もない。
本当にそんなことがあったのか、調べても情報は一つも出てこないと思う。誰かの勘違いか、それとも……。
真実を追求して、婚約破棄が取り消しになるのも避けたかった。婚約の破棄は、そのまま進めてほしい。なので、イジメの件については言及しないようにお願いした。
パーティーの一件は、かなり話題になった。それだけでなく、私のケーキやけ食い事件も世間で話題になっているらしい。その内容を聞いて、私に同情してくれる人もいたという。
泣きながらケーキを食べた話なんて、恥ずかしいので広めないでほしいんだけど。まぁ、仕方ないのかしら。噂を消し去るのは難しいだろうと諦めている。
私を指導してくれていた妃教育の先生たちは、その話を聞いて激怒しているでしょうね。せっかく考えた食事制限のスケジュールが台無しになったんだから。少しだけ申し訳なく思った。
まぁ、もう終わったことだから。どうでもいいけど。私はもう、王妃になる予定は無くなったんだし。
婚約を破棄されるキッカケになってくれたアイリーンという女性には、本当に感謝している。彼女のおかげで、私は自由になれたのだから。
こんなに清々しい気分で過ごせるのは、本当に久しぶり。心の底から思う。婚約を破棄されてよかったと。王妃になる未来を失ってよかったと。
次の妃候補に選ばれる人は、大変だと思う。これから厳しい教育を受けて、王妃の座を手に入れることになるだろう。頑張ってほしい。私には無理だった。
あの事件から1か月ほど過ぎていた。もうしばらく、私は屋敷から出ないようにと言われているので、その通り過ごしている。そんな私を見て、父は申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
「不自由な生活をさせてしまい、すまないオリヴィア。もう少しすれば周りも落ち着いて、屋敷の外に出ても問題なくなるだろうから。それまでは我慢してくれ」
「お父様。私は、大丈夫ですよ。屋敷の中で、ゆっくり過ごしていますから」
私を心配してくれる父の言葉に、笑顔で返した。これから先も屋敷の中で暮らせと命じられたとしても、文句も言わずに従うでしょう。だってここでは、自由に食事をしていいから。
少しだけ不満があるとすれば、体を動かせないこと。屋敷の外に出て、思いっきり運動したい気持ちはある。でも、それだけ。
他には、特に困ったことはない。
自由に外出できないぐらい、前までの生活と比べたら全然マシだと思っている。
話を聞き終えた父は、あごに手を当てると考え込む顔になった。私は口を挟まず、静かに待つ。これからどうするのか。それを決めるのは、当主である父。
前のような辛い食事制限を命じられる生活には、戻りたくない。もう、戻れない。我慢に耐えられなくなった。美味しいケーキの味を知ってしまったから。
しばらく沈黙の時間が流れて、やがて意を決したように父が口を開いた。
「事態が落ち着くまで、お前はおとなしくしていなさい。屋敷からも出ないように」
「わかりました」
こうして私は、屋敷で待機するように命じられた。父の命令に素直に従う。辛くて厳しい妃教育を受けなくて済むし、食事も自由に食べられるので全く不満は無かった。むしろ、大歓迎。
あれから数日後、マルク王子との婚約破棄が正式に成立したそうだ。父から報告を聞いた。
イジメの件については追及されず、うやむやになったみたい。そもそも、私は誰かをイジメた記憶はなかった。妃教育が大変で、自分のことで精いっぱいだったから。他に目を向ける余裕もない。
本当にそんなことがあったのか、調べても情報は一つも出てこないと思う。誰かの勘違いか、それとも……。
真実を追求して、婚約破棄が取り消しになるのも避けたかった。婚約の破棄は、そのまま進めてほしい。なので、イジメの件については言及しないようにお願いした。
パーティーの一件は、かなり話題になった。それだけでなく、私のケーキやけ食い事件も世間で話題になっているらしい。その内容を聞いて、私に同情してくれる人もいたという。
泣きながらケーキを食べた話なんて、恥ずかしいので広めないでほしいんだけど。まぁ、仕方ないのかしら。噂を消し去るのは難しいだろうと諦めている。
私を指導してくれていた妃教育の先生たちは、その話を聞いて激怒しているでしょうね。せっかく考えた食事制限のスケジュールが台無しになったんだから。少しだけ申し訳なく思った。
まぁ、もう終わったことだから。どうでもいいけど。私はもう、王妃になる予定は無くなったんだし。
婚約を破棄されるキッカケになってくれたアイリーンという女性には、本当に感謝している。彼女のおかげで、私は自由になれたのだから。
こんなに清々しい気分で過ごせるのは、本当に久しぶり。心の底から思う。婚約を破棄されてよかったと。王妃になる未来を失ってよかったと。
次の妃候補に選ばれる人は、大変だと思う。これから厳しい教育を受けて、王妃の座を手に入れることになるだろう。頑張ってほしい。私には無理だった。
あの事件から1か月ほど過ぎていた。もうしばらく、私は屋敷から出ないようにと言われているので、その通り過ごしている。そんな私を見て、父は申し訳なさそうな顔で謝ってきた。
「不自由な生活をさせてしまい、すまないオリヴィア。もう少しすれば周りも落ち着いて、屋敷の外に出ても問題なくなるだろうから。それまでは我慢してくれ」
「お父様。私は、大丈夫ですよ。屋敷の中で、ゆっくり過ごしていますから」
私を心配してくれる父の言葉に、笑顔で返した。これから先も屋敷の中で暮らせと命じられたとしても、文句も言わずに従うでしょう。だってここでは、自由に食事をしていいから。
少しだけ不満があるとすれば、体を動かせないこと。屋敷の外に出て、思いっきり運動したい気持ちはある。でも、それだけ。
他には、特に困ったことはない。
自由に外出できないぐらい、前までの生活と比べたら全然マシだと思っている。
1,465
あなたにおすすめの小説
そちらがその気なら、こちらもそれなりに。
直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。
それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。
真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。
※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。
リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。
※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。
…ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº…
☻2021.04.23 183,747pt/24h☻
★HOTランキング2位
★人気ランキング7位
たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*)
ありがとうございます!
(完結)相談女とお幸せに!(なれるものならの話ですけども。)
ちゃむふー
恋愛
「私は真実の愛に目覚めたんだ!ミレイユ。君は強いから1人で大丈夫だろう?リリアンはミレイユと違って私がいないとダメなんだ。婚約破棄してもらう!!」
完全に自分に酔いしれながらヒーロー気分なこの方は、ヨーデリア侯爵令息のガスパル。私の婚約者だ。
私はミレイユ・ハーブス。伯爵令嬢だ。
この国では、15才から18才まで貴族の令息令嬢は貴族の学園に通う。
あろう事かもうすぐ卒業のこの時期にこんな事を言ってきた。
できればもう少し早く言って欲しかったけれど…。
婚約破棄?大歓迎ですわ。
その真実の愛とやらを貫いてくださいね?
でも、ガスパル様。
そのリリアンとやらは、俗に言う相談女らしいですわよ?
果たして本当に幸せになれるのかしら…??
伯爵令嬢ミレイユ、伯爵令嬢エミール2人の主人公設定です。
学園物を書いた事があまり無いので、
設定が甘い事があるかもしれません…。
ご都合主義とやらでお願いします!!
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
名も無き伯爵令嬢の幸運
ひとみん
恋愛
私はしがない伯爵令嬢。巷ではやりの物語のように義母と義妹に虐げられている。
この家から逃げる為に、義母の命令通り国境を守る公爵家へと乗り込んだ。王命に物申し、国外追放されることを期待して。
なのに、何故だろう・・・乗り込んだ先の公爵夫人が決めたという私に対する処罰がご褒美としか言いようがなくて・・・
名も無きモブ令嬢が幸せになる話。まじ、名前出てきません・・・・
*「転生魔女は国盗りを望む」にチラッとしか出てこない、名も無きモブ『一人目令嬢』のお話。
34話の本人視点みたいな感じです。
本編を読まなくとも、多分、大丈夫だと思いますが、本編もよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/618422773/930884405
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
〘完結〛婚約破棄?まあ!御冗談がお上手なんですね!
桜井ことり
恋愛
「何度言ったら分かるのだ!アテルイ・アークライト!貴様との婚約は、正式に、完全に、破棄されたのだ!」
「……今、婚約破棄と、確かにおっしゃいましたな?王太子殿下」
その声には、念を押すような強い響きがあった。
「そうだ!婚約破棄だ!何か文句でもあるのか、バルフォア侯爵!」
アルフォンスは、自分に反抗的な貴族の筆頭からの問いかけに、苛立ちを隠さずに答える。
しかし、侯爵が返した言葉は、アルフォンスの予想を遥かに超えるものだった。
「いいえ、文句などございません。むしろ、感謝したいくらいでございます。――では、アテルイ嬢と、この私が婚約しても良い、とのことですかな?」
「なっ……!?」
アルフォンスが言葉を失う。
それだけではなかった。バルフォア侯爵の言葉を皮切りに、堰を切ったように他の貴族たちが次々と声を上げたのだ。
「お待ちください、侯爵!アテルイ様ほどの淑女を、貴方のような年寄りに任せてはおけませんな!」
「その通り!アテルイ様の隣に立つべきは、我が騎士団の誉れ、このグレイフォード伯爵である!」
「財力で言えば、我がオズワルド子爵家が一番です!アテルイ様、どうか私に清き一票を!」
あっという間に、会場はアテルイへの公開プロポーズの場へと変貌していた。
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
婚約破棄ですか?勿論お受けします。
アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。
そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。
婚約破棄するとようやく言ってくれたわ!
慰謝料?そんなのいらないわよ。
それより早く婚約破棄しましょう。
❈ 作者独自の世界観です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる