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第7話 圧倒的
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「おいッ! さっさとそいつを殺して、他の乗客を大人しくさせろ。見せしめにしてやれ!」
「わかったぜ、親方」
「ッ! うぉぉぉぉぉッッッ!」
盗賊のリーダーらしき男が、他の者達に指示を出す。大声で叫ぶ青年の周りを取り囲んで、殺してしまおうと武器を振り上げる。
青年が声を上げて気合を入れると、盗賊の集団に突撃していった。今だ。私は、杖に溜めていた魔力を一気に放った。攻撃魔法を発動する。
「な!? 何事だっ!?」
「ッ! その女が何かやったぞ! ぐあっ!?」
「親方!? こ、こいつ!!」
「その女、ヤバいッ! 魔法使いだ!?」
「なんだって!? ま、魔法使いだと!?」
とりあえず、馬車の近くに居た盗賊数人に魔法を命中させて、一瞬で再起不能にした。殺してはいない。気絶させただけ。
まず、他の乗客達の危険を減らすことに成功した。だけど盗賊は、まだまだ居る。だから私は身体強化の魔法を自分に使用して、杖を武器に突撃した。
「魔法使いは危険だ! 先に囲んで仕留めろッ!」
「な、なに!? うわっ!!」
「あぐっ」
「お、おい! お前たち!?」
突然のことに慌てふためいて、対応できない盗賊たちを杖で容赦なく叩き伏せる。女の振るう杖でも、身体強化した後の一撃は強烈だろう。私は敵を、次々と気絶させていった。
「うえっ!?」
「うあぐぁ」
「ぎゃうぅっ」
「うがぁっ」
「く、くそっ! ぎゃっ!?」
猛スピードで移動して、敵の攻撃を避ける。そして、カウンターで杖で叩いて気絶させる。戦闘の訓練は受けていないが、盗賊相手なら私の技量でも通用するようだ。
「な、にげ……」
「やばい、はな、れ……」
「ぐぅ……」
後ろを向いて逃げ出そうとする敵には、睡眠の魔法を命中させて眠らせた。無益な殺生はしない。
一分も経たないうちに、敵は全滅した。
「……え?」
覚悟を決めて盗賊に立ち向かった青年が、呆然と立ち尽くしている。そして、自分の周りに倒れている盗賊達を見て、あっけにとられていた。
「……ふぅ」
「……と、盗賊は?」
「おそらく敵は、全員倒しました」
乗客の一人がビクビクしながら、私に聞いてきた。敵は全て倒したと答えた瞬間、皆が歓声を上げた。
「うぉぉぉ! 助かった!」
「ありがとう、魔法使いのお嬢ちゃん!」
「君のおかげで、俺達は生き残ることが出来た! ありがとう!」
「なんて運が良いんだッ!」
「凄かった! 強かったぞ!」
最初に大声を上げて抵抗しようとした青年は、地面に膝をついていた。
「た、たすかったぁ……」
涙声だった。とても怖かったようだ。無事だということが分かり、安堵していた。勇敢だった彼を助けることが出来て、私も嬉しい。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます。助かりました」
青年に声をかけると、彼は立ち上がって感謝してくれた。まだ少し、恐怖を感じて体が震えているようだった。それよりも、気になることが。
「腕、怪我をしてますね?」
「え? あ、確かに。い、痛ッ……。ちょっと、ここを斬られていたみたい」
青年の腕から血が流れていた。私が指摘した瞬間に気付いたようで、傷口を押さえながら顔をしかめた。戦闘の最中は興奮していて、気付かなかったのかもしれない。そして結構、深い傷のようだ。
傷の様子を、しっかり確認する。肌が切れているだけで、筋肉や骨などは大丈夫のようだ。血管の損傷などもチェックして、状態を確認する。
これなら、普通の回復魔法で治療することが出来そう。
「治しますね」
「あ、回復魔法……?」
状態を確認した後、傷ついた彼の腕に手をかざして回復魔法を発動した。すると、みるみる腕の傷が塞がっていく。その様子を見て、青年がまた驚いた。
「はい。もう、大丈夫ですよ」
「えぇ、もう!?」
「痛みはありませんか?」
「はい! 全然、痛くありません! 本当に、ありがとうございますッ!」
綺麗に完治したようだ。青年は、自分の腕を見ながら驚いていた。そして、何度も頭を下げて感謝の言葉を述べた。どうやら元気になったらしい。良かった。
「わかったぜ、親方」
「ッ! うぉぉぉぉぉッッッ!」
盗賊のリーダーらしき男が、他の者達に指示を出す。大声で叫ぶ青年の周りを取り囲んで、殺してしまおうと武器を振り上げる。
青年が声を上げて気合を入れると、盗賊の集団に突撃していった。今だ。私は、杖に溜めていた魔力を一気に放った。攻撃魔法を発動する。
「な!? 何事だっ!?」
「ッ! その女が何かやったぞ! ぐあっ!?」
「親方!? こ、こいつ!!」
「その女、ヤバいッ! 魔法使いだ!?」
「なんだって!? ま、魔法使いだと!?」
とりあえず、馬車の近くに居た盗賊数人に魔法を命中させて、一瞬で再起不能にした。殺してはいない。気絶させただけ。
まず、他の乗客達の危険を減らすことに成功した。だけど盗賊は、まだまだ居る。だから私は身体強化の魔法を自分に使用して、杖を武器に突撃した。
「魔法使いは危険だ! 先に囲んで仕留めろッ!」
「な、なに!? うわっ!!」
「あぐっ」
「お、おい! お前たち!?」
突然のことに慌てふためいて、対応できない盗賊たちを杖で容赦なく叩き伏せる。女の振るう杖でも、身体強化した後の一撃は強烈だろう。私は敵を、次々と気絶させていった。
「うえっ!?」
「うあぐぁ」
「ぎゃうぅっ」
「うがぁっ」
「く、くそっ! ぎゃっ!?」
猛スピードで移動して、敵の攻撃を避ける。そして、カウンターで杖で叩いて気絶させる。戦闘の訓練は受けていないが、盗賊相手なら私の技量でも通用するようだ。
「な、にげ……」
「やばい、はな、れ……」
「ぐぅ……」
後ろを向いて逃げ出そうとする敵には、睡眠の魔法を命中させて眠らせた。無益な殺生はしない。
一分も経たないうちに、敵は全滅した。
「……え?」
覚悟を決めて盗賊に立ち向かった青年が、呆然と立ち尽くしている。そして、自分の周りに倒れている盗賊達を見て、あっけにとられていた。
「……ふぅ」
「……と、盗賊は?」
「おそらく敵は、全員倒しました」
乗客の一人がビクビクしながら、私に聞いてきた。敵は全て倒したと答えた瞬間、皆が歓声を上げた。
「うぉぉぉ! 助かった!」
「ありがとう、魔法使いのお嬢ちゃん!」
「君のおかげで、俺達は生き残ることが出来た! ありがとう!」
「なんて運が良いんだッ!」
「凄かった! 強かったぞ!」
最初に大声を上げて抵抗しようとした青年は、地面に膝をついていた。
「た、たすかったぁ……」
涙声だった。とても怖かったようだ。無事だということが分かり、安堵していた。勇敢だった彼を助けることが出来て、私も嬉しい。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます。助かりました」
青年に声をかけると、彼は立ち上がって感謝してくれた。まだ少し、恐怖を感じて体が震えているようだった。それよりも、気になることが。
「腕、怪我をしてますね?」
「え? あ、確かに。い、痛ッ……。ちょっと、ここを斬られていたみたい」
青年の腕から血が流れていた。私が指摘した瞬間に気付いたようで、傷口を押さえながら顔をしかめた。戦闘の最中は興奮していて、気付かなかったのかもしれない。そして結構、深い傷のようだ。
傷の様子を、しっかり確認する。肌が切れているだけで、筋肉や骨などは大丈夫のようだ。血管の損傷などもチェックして、状態を確認する。
これなら、普通の回復魔法で治療することが出来そう。
「治しますね」
「あ、回復魔法……?」
状態を確認した後、傷ついた彼の腕に手をかざして回復魔法を発動した。すると、みるみる腕の傷が塞がっていく。その様子を見て、青年がまた驚いた。
「はい。もう、大丈夫ですよ」
「えぇ、もう!?」
「痛みはありませんか?」
「はい! 全然、痛くありません! 本当に、ありがとうございますッ!」
綺麗に完治したようだ。青年は、自分の腕を見ながら驚いていた。そして、何度も頭を下げて感謝の言葉を述べた。どうやら元気になったらしい。良かった。
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