妹よりも劣っていると指摘され、ついでに婚約破棄までされた私は修行の旅に出ます

キョウキョウ

文字の大きさ
27 / 30

第27話 1年間の計画 ※大臣視点

しおりを挟む
 そのタイミングでマクシミリアン王子が昏睡状態になったことは、我々にとっては都合が良かったのかもしれない。邪魔者が居ない間に、全てを処理することが出来たから。

 私は、躊躇わなかった。王族達から実権を奪い取る。それが、王国存続のためにも必要なことだと思っていたから。

 今までの体制は、王族が全ての権利を握り続けたまま離さなかった。それにより、色々と不都合が生じているのに。各所で支障が出て、その負担を王国民が背負っている。その支障が徐々に大きくなり、いつか破綻してしまう。

 そんな時期が迫ってきていた。なんとか対処しなければ、大変なことになる。それなのに、彼らは変わろうとしなかった。

 そこで我々は、現在の王国の体制を変えるために行動した。

 まず、王の説得。これは、予想していたよりもスムーズに事が進んだ。話し合い、王に納得してもらった。

 次の問題は、マクシミリアン王子。彼は、それなりに優秀だった。数多くの仕事を一人で処理して、王国を動かしていた。彼の働きによって、王国は安定していた。

 だからこそ、マクシミリアン王子と話し合ったとしても、今の体制を変えることに反対する可能性が高かった。自分の力で王国は安定しているのだから、体制を変える必要はないと言い出すだろう。

 マクシミリアン王子の婚約相手であるマリアンヌという魔法使いが、次の計画の鍵だった。彼女の回復魔法が、今の王子を支えている。彼女が居るから、王子は成果を出し続けることが出来ていた。だから、まず先にマリアンヌを説得して、こちら側に引き込む。

 マクシミリアン王子よりも理性的なマリアンヌであれば、話を聞いてくれるはず。そして、王国の現状を理解して協力してくれるはず。

 マリアンヌの協力を得るために、綿密な計画を立てていた。

 そんな時に起きたのが、婚約破棄事件だった。まさかマクシミリアン王子が、婚約関係を破棄するなんて予想外だった。その突飛な行動により、今までの計画が台無しになった。だが、想定外のことも受け入れなければならない。計画を変更する必要がある。

 マクシミリアン王子を支えるパートナーが妹のルイーゼに変わってから、状況が変わった。どうやら妹のルイーゼは、姉のマリアンヌほど優秀ではなかったようだ。王子を支えるための実力が足りない。

 マクシミリアン王子の体調が悪化して、仕事の失敗も増えた。王国が不安定になってしまったけれど、体制を変える必要性が高まっていった。

 しばらくして、マクシミリアン王子が倒れた。我々は、自由に動くことが出来る時間を手に入れた。今まで準備してきた計画を一気に進める。

 邪魔者だった王子は、しばらく薬で眠り続けてもらうことになった。彼の治療を担当する魔法使いのルイーゼは、王子が目覚めない原因を特定することが出来ずに居た。それなのに、何も気にせず呑気に過ごしていた。我々にとっては好都合である。

 王国の体制は、半年ほど掛けて少しずつ変えていった。計画していた通り、王国の未来は明るくなった。



 王族と回復魔法使いの関係も、対処しておく必要がある。これからは、古い伝統に縛られて問題があった関係を解消していくべきだ。

 マクシミリアン王子を昏睡状態にさせた責任を、ルイーゼとレイモルド家に押し付ける。廃嫡を命じる準備を進めていた。

 その頃、救済の聖女という人物に関する噂が流れてきた。その人物に治療を依頼して、マクシミリアン王子を目覚めさせてもらう。

 王国の体制が変わってから、彼に任せるべき仕事もある。これからマクシミリアン王子には、王国のシンボルとして働いてもらう。

 1年間も王子の昏睡状態を回復させられなかったレイモルド家は、外部の魔法使いに劣るという評価を下される。これにより、我々の計画が完成する。

 依頼を引き受けてくれた救済の聖女がマリアンヌだと分かった時、とても驚いた。そして、急いで計画を変更した。

 優秀な魔法使いは、王国の人材として確保しておきたかった。

 もしも彼女がレイモルド家に未練があるのならば、彼女にレイモルド家を引き継いでもらう。現当主を排除して、マリアンヌを新たな当主にする。そこまで考えていた。

 しかし、すぐに計画は無駄になってしまった。マリアンヌは、レイモルド家に何の未練も無いようだったから。彼女に引き継いでもらうことは不可能だった。

 なので、当初の計画通りマクシミリアン王子の回復だけ任せて帰ってもらった。彼女の存在は非常に魅力的だったが、無理に引き止めることは出来そうにないから。



 こうして我々は、1年間で王国の体制を変えることに成功した。

 これから先、権力を一つに集中させないよう気を付けながら、国を運営していく。回復魔法使いの力だけに頼らず全員で分担しながら、王国を存続させる。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです

珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。 だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。 それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)

[異世界恋愛短編集]お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?

石河 翠
恋愛
公爵令嬢レイラは、王太子の婚約者である。しかし王太子は男爵令嬢にうつつをぬかして、彼女のことを「悪役令嬢」と敵視する。さらに妃教育という名目で離宮に幽閉されてしまった。 面倒な仕事を王太子から押し付けられたレイラは、やがて王族をはじめとする国の要人たちから誰にも言えない愚痴や秘密を打ち明けられるようになる。 そんなレイラの唯一の楽しみは、離宮の庭にある東屋でお茶をすること。ある時からお茶の時間に雨が降ると、顔馴染みの文官が雨宿りにやってくるようになって……。 どんな理不尽にも静かに耐えていたヒロインと、そんなヒロインの笑顔を見るためならどんな努力も惜しまないヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 「お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?」、その他5篇の異世界恋愛短編集です。 この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:32749945)をおかりしております。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

妹に全てを奪われるなら、私は全てを捨てて家出します

ねこいかいち
恋愛
子爵令嬢のティファニアは、婚約者のアーデルとの結婚を間近に控えていた。全ては順調にいく。そう思っていたティファニアの前に、ティファニアのものは何でも欲しがる妹のフィーリアがまたしても欲しがり癖を出す。「アーデル様を、私にくださいな」そうにこやかに告げるフィーリア。フィーリアに甘い両親も、それを了承してしまう。唯一信頼していたアーデルも、婚約破棄に同意してしまった。私の人生を何だと思っているの? そう思ったティファニアは、家出を決意する。従者も連れず、祖父母の元に行くことを決意するティファニア。もう、奪われるならば私は全てを捨てます。帰ってこいと言われても、妹がいる家になんて帰りません。

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

お義姉様ばかりずるいと義妹に婚約者を取られましたが、隣国で幸せに暮らしているのでどうぞご自由に。なので今更帰って来いと言われても困ります。

神崎 ルナ
恋愛
 フラン・サンシェルジュ侯爵令嬢は、義妹のローズに『お義姉様だけずるい』と何度も持ち物を取り上げられてきた。  ついにはアール王子との婚約も奪われてしまう。  フランは隣国へと出奔し、生計を立てることに。  一方その頃、アール王子達は――。 『おい、何でこんな簡単な書類整理ができないんだ?』 『お義姉様にできたことなら私にだってできますわ。もうしばらくお待ち下さい』  仕事をフランに押し付けていたため、書類が山のように溜まる王子の執務室では毎日のように言い合いがされていた。 『やはり、フランでないとダメだ』  ローズとの婚約はそのままに、フランをタダ働きさせるつもりのアール王子がフランを探しに行くが既にフランは隣国で新しい生活を手に入れていた。  その頃サンシェルジュ侯爵邸ではーー。 「見つけたぞっ!!」 「なっ、お前はっ!?」  冒険者風の男がローズと継母に迫っていた。

貴方との婚約は破棄されたのだから、ちょっかいかけてくるのやめてもらっても良いでしょうか?

ツキノトモリ
恋愛
伯爵令嬢エリヴィラは幼馴染で侯爵令息のフィクトルと婚約した。婚約成立後、同じ学校に入学した二人。フィクトルは「婚約者とバレたら恥ずかしい」という理由でエリヴィラに学校では話しかけるなと言う。しかし、自分はエリヴィラに話しかけるし、他の女子生徒とイチャつく始末。さらに、エリヴィラが隣のクラスのダヴィドと話していた時に邪魔してきた上に「俺以外の男子と話すな」とエリヴィラに言う。身勝手なことを言われてエリヴィラは反論し、フィクトルと喧嘩になって最終的に婚約は白紙に戻すことに。だが、婚約破棄後もフィクトルはエリヴィラにちょっかいをかけてきて…?!

処理中です...