逆ハーレムが成立した後の物語~原作通りに婚約破棄される当て馬女子だった私たちは、自分たちの幸せを目指して新たな人生を歩み始める~

キョウキョウ

文字の大きさ
22 / 42

第22話 プロポーズ

しおりを挟む
 妻になってもらいたいと言われた。これってプロポーズ。いえ、でも。

「ジャスター様には、婚約相手が居るんじゃ……?」
「私に婚約相手は居ない。何度か話が来たが、全て断っている」

 きっぱりと言われて、私は混乱した。

「本当ですか?」
「本当さ。嘘は言わない」

 ジャスター様の目をじっと見つめて、私は判断する。彼は、嘘をついていないわ。そのはず。私の願望が、そう思わせているわけではないのよね?

 彼には婚約相手が居ない。それなら、私にも希望がある。でも、ダメよ。他にも、気にしないといけない問題があるから。そうじゃないと私は……。

「私は王国の人間だったから、帝国の貴族であるジャスター様と結婚してもいいのでしょうか?」
「もちろん、問題ないよ。君の友人だって、そうしているじゃないか。既に、うちの父上には説明済みだからね。君の両親にも後で話をしないといけないけれど、必ず説得してみせる」

 私の疑問に即答するジャスター様。自信満々で、それだけの覚悟が伝わってくる。

「君は、どうしたい? 正直に答えてほしい」
「ッ!?」

 ジャスター様が、私の手を握る。私より大きくて温かい手だ。私を、心から心配してくれるのがわかる優しい瞳。この人なら信頼できる。信じたいと心が叫んでいる。

「私は……」

 どうしたいのか、考えてみる。すぐに答えは出てくる。彼と一緒に居たい。そう思っていた。だけど、本当にその答えを口に出していいのか、ためらう。

 貴族としての役目。家の発展のため、考えて結婚しなければいけない。両親の考えもある。だから、自分の意見だけで決めていいものなのか。ここで、答えを出していいのか。

 私は、素直になってもいいの? でも、迷惑じゃないかしら。

 戸惑っていた。そんな私の気持ちを察したのか、ジャスター様が微笑む。

「好きだ。一生、そばにいてほしい」
「っ!?」

 真っ直ぐな言葉。ズルい。心が刺激される。そんな事を言われたら、私は。

「私も、ジャスター様と一緒にいたいです!」

 自然と、自分の気持ちが口から出た。止まらなかった、私の本心。それが本当に正しいのか、まだわからないけれど。

「よかった」

 ジャスター様が笑って、私を抱きしめる。力強い抱擁だった。彼の体温を感じる。心臓の音が聞こえてくる。彼もドキドキしているんだわ。同じ気持ちでいる。そう思うと、とても嬉しかった。

 だから私も、彼を抱きしめ返す。



 彼と見つめ合う。顔が近づく。唇が触れる。キスされたんだと気がつくまで、少し時間がかかった。初めての経験だった。

「これから、よろしくね。エレノラ」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。ジャスター様」

 私たちは、2人で結婚することを決めた。そうと決めたら動き出す。なるべく周りに迷惑をかけないように。祝福してもらえるように。



 まず、両親に事情を説明した。ジャスター様と私の婚約はすぐに認められた。

「ようやく決めたのか」
「この子のこと、よろしくお願いしますね」

 両親は、私がジャスター様と一緒になることをずっと待っていたらしい。いつ決めるのかと、毎日ソワソワしていたとか。そんなに期待されていたなんて知らなかったわ。

 一度、両親が望んでいた婚約を破棄されてしまったから、今度は絶対に失敗しないようにしたい。

 話が決まると、それから一気に事が進んだ。彼の家も、彼の結婚を望んでいたみたい。その期待の表れなのか、あっという間に結婚式の日程が決まり、準備が完了して、結婚式の日を迎えることになった。

 自分たちが考えていたよりも早く、私たちは夫婦関係に。

「気が早くて、すまないね。うちの両親も待ち望んでいたみたいで」

 申し訳なさそうに謝るジャスター様。いえいえ、問題ありません。

「私は嬉しいです。こんなに早くジャスター様の妻にしてもらえて、幸せですよ」
「そうか、ありがとうエレノラ。改めて、これからもよろしく」
「はい。よろしくお願いします、ジャスター様」

 王国から帝国に来て、こんなに素敵なパートナーと出会えるなんて。帝国に移ってきて本当に良かったと思った。

 ここがゲームの世界だと知って、ヒロインが現れてから次々と男たちが虜にされていく場面を見せつけられて、不安で仕方なかった。

 でも、もう大丈夫。私には彼が居るもの。これからは安心して過ごせそうだ。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

聖女をぶん殴った女が妻になった。「貴女を愛することはありません」と言ったら、「はい、知ってます」と言われた。

下菊みこと
恋愛
主人公は、聖女をぶん殴った女を妻に迎えた。迎えたというか、強制的にそうなった。幼馴染を愛する主人公は、「貴女を愛することはありません」というが、返答は予想外のもの。 この結婚の先に、幸せはあるだろうか? 小説家になろう様でも投稿しています。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。

水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。 しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。 マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。 当然冤罪だった。 以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。 証拠は無い。 しかしマイケルはララの言葉を信じた。 マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。 そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。 もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

悪役令嬢に相応しいエンディング

無色
恋愛
 月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。  ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。  さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。  ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。  だが彼らは愚かにも知らなかった。  ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。  そして、待ち受けるエンディングを。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...