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36 仕上がりは上々。さて、行きましてよ!!

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 ――シャルロットside――


 遠隔用通信魔道具のお陰で、王弟殿下から度々来る報告書を読み全てを把握し整理する。
 最終日と言えど、全ての大臣が王弟殿下に付き従えると言う約束を取り付けたのは想定内ですわね。
 人間の心理として、自分に都合の悪い事、自分に不利益が掛かる事柄については一気に爆発的に広がりますもの。
 その為に三日と言う時間を必要としましたの。
 ふふっ! 広がるには十分な時間だったようですわね。


「まだ国民にまでは広がっていないけれど、この分ですと国王交代の方が早く耳に入ってきそうですね」
「国民に逃げられたら各領地とてたまったものではありませんもの。国民に流すのは国王陛下の退陣及び、新たなる国王として王弟殿下が選ばれる事が耳に入るのではなくて?」
「情報操作ですか。それもまた一つの方法ではあるのでしょうね」
「どこの国とて、王室の醜聞等外に出したくないものでしてよ」
「それはそうですね。そこに付け入る隙を与えれば外交で不利になりますし」
「ほほほほほ! トーマは賢いですわね!」


 真っ黒なドレスに身を包み、黒一色だからこそ華やかに装ったわたくしは、最後の仕上げに爪を黒のマニキュアで統一し、最後の磨きをかけている所ですわ。


「でも国王陛下は心臓が弱いのでしょう? 懇親会と言う名のパーティーで死んだりしないでしょうか」
「死ねば御の字。倒れるまでは想定内ですわね」
「なるほど」
「今までは身体が弱い、心臓が弱いで同情されていた国王が、まさか自分本位な事しかしておらず贅沢三昧なんて、黙っていれば、バレなければ被害者面できても、もう被害者面は出来ませんものね」
「だとしたら断罪後幽閉が妥当ですか。その側妃もご一緒に?」
「一緒に贅沢三昧して常に一緒に居たいのでしょうから都合がいいのではないかしら?」
「国王に子がいなくて良かったと言うべきか否か……」
「種なし何でしょうね。かといって王弟殿下のお子を養子には貰うのはプライドが許さなかった……と言った所かしら」
「言うなれば我儘でボンクラで被害者面の上手い陛下だったと言うわけですね」
「言うなればそうですわね」
「厄介の極み」
「ふふふ」


 マニキュアが乾いたところで立ち上がり、フワフワのスカートをヒラリと動かすと奥から歩いてきたダーリンの手を取りますわ。
 無論ヘロスも正装ですわよ。
 ヘロスはチャイナ服にしてみましたわ。スリットから見える足がいいですわね。


「準備は出来まして?」
「ええ、ばっちりですよ」
「後は指定時間を待つのみですわね」
「小物の悪の王を倒すのが、歴代きっての悪女なんて早々なくってよ?」
「ああシャルロット……私は貴女になら断罪されたい」
「嫌ですわダーリンったら……断罪したら愛し合えませんもの」
「もう、マスター? この調子でラブラブなのよ? 見ていて恥ずかしいわ」
「一番近くにいるのですから慣れてください」


 そう会話していると他の人形達も集まってきて、準備万端整えたわたくし達を見てアンクさんとピリポさんが頷いた。


「思う存分してくるといい」
「心臓発作が起きなければいいですが」
「あら、その心臓病とて嘘かも知れませんことよ?」
「その時は更に悪事が暴かれるだけだ。トコトン追い詰めてこい。得意だろう?」
「ふふふ。歴代きっての悪女を演じ切って見せましてよ?」
「見れないのが残念です」
「ほほほほほ! 後でヘロスとモリミアにでも聞くと良いですわ!」
「そうします」
「さぁ、始めましょうか! 華やかに断罪のパーティーを!」
「私は何時でも貴女の傍に」
「護衛頑張りますわ!」


 こうしてトーマにあてがわれた部屋から外に出ると、既にモリシュが待っていて「今日楽しみにしてるからぁ~」と口にしつつも、モリシュの箱庭経由で城の中に入りましたわ。
 既に貴族たちや各大臣たちはパーティー会場に入っていて、後はわたくし達を待つのみなのだとか。


「陛下はまるで自分の功績みたいに言ってたけどぉ~。だーれも信用してなかったなぁ」
「まぁ、そうでしょうね。だって初めましてになりますものねぇ」
「全員から敵意向けられてビビってやんの。マジうけるー」
「これから本当の殺意を向けられると言うのに、呑気なものですわねぇ」
「普通なら貴族連中が陛下に挨拶する時間なんだけどぉー。だーれも挨拶にいかねーの」
「あらあら、ふふふ」
「だから凄く困惑しててぇ~」
「そこに今からわたくし達が登場と言う訳ですわね」
「そういうことぉ~」


 そう言ってパーティー会場に到着すると、重厚な扉がゆっくりと開きましたわ。


「じゃ、しっかりよろしくねぇ?」
「んふふ。しっかりその眼に焼き付ける事ですわね」
「では」
「存分に」
「楽しませて頂きましてよ!!」


 ドアが開き切り、全員の視線が降り注ぐ中――わたくしは悪女の仮面を被り真っ直ぐ前を見つめて微笑みましたわ。
 さぁ――わたくしの掌で踊るのは、まずはどちらかしら?


「古代人形、シャルロット・フィズリー様、並びにダーリン・エゾイフ様。護衛人形のヘロス様の入場です!!」

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