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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる

第97話 GW明けにあると言う1年生の軍隊行動イベント①

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 GW明けにあると言う1年生の軍隊行動イベント……と、我は内心呼んでいるのだが、先輩方の時代の知恵を借りるべく放課後の部活にて聞くことにした。


「先輩、1年生が行うと言うお泊り保育みたいなものはどんな感じなんですか?」
「お泊り保育? そんな優しいもんじゃないよ。日焼け止めを塗ってないと日差しで隠れていない部分は火傷。水ぶくれ、高熱に酷い痛みだ」
「それに加えて部屋に女子が入り込んで煩かったり、先生たちの見回りの時に見つかればアウトだし、火傷の激痛でのた打ち回りながら寝れない。それなのに嫌でも軍隊行動を強制してくる教師に殺意すら覚えるよな」
「俺、余りの火傷の酷さに今も火傷が痣になってる」
「それ、火傷の痣だったんですね……」
「それでも先生は休むことをよしとしない。熱中症でぶっ倒れても水をぶっかけられてたたき起こされる。軍隊より酷いぞ」
「それを1年生にさせるんですか」
「「「そう」」」


 先輩たちの顔が凄く虚ろだ……我は人間こそ悪ではないか? と思ってしまった。


「教師と言う名の悪魔だよな」
「マジそれ」
「女子は救急車で運ばれるしよー」
「体の弱い子はドンドン運ばれるよな」
「でも夜、先生たちは集まってビール飲みながら飲み会してんだぜ」
「腹立つよな――」
「「「うわぁ」」」


 思わず我と魔法使いとアキラはドン引きした。
 苦しめるだけ苦しめた後はビールで乾杯とか人間としても教育者としても終わっている。
 我は早々にこの学校の悪意を視た。
 閉鎖的な環境だからこその問題故か……表に露見する事が無かったのだろうか?


「ただ、去年からは教育委員会が煩いとかで、余り厳しく亡くなったってのは聞いたな」
「PTA会長様の娘さんが日差しで大火傷、熱中症で倒れて救急車で運ばれたからな」
「しっかり前段階してたけど、汗で日焼け止めが取れたんだっけ?」
「そうそう」
「それでブチ切れたPTA会長とその役員たちが『この学校は隠れて子供達を虐待しているのか』ってなったよな」
「先生たちに慌てよう凄かったよな」
「校長クビになったし」
「新しい校長は優しいって話だぜ。そこまで酷い事はしないんじゃないかな」
「では、私たちは言い方は悪いですが、良い時期に入ってきたという訳ですね」
「まだ分からないぜ? 教師軍団の元々の性格なんて変わりはしねーんだから」
「色々準備しとけよ?」


 流石にそう言われてはどうしようもない。
 帰りにドラッグストアに寄って色々購入しようという話になった。
 無論これはレシートを貰い母に「必要経費です」とお金を貰う訳だが――。


「でもさー? 何で教師は止まらなくなるの? そんなにバタバタ倒れて行ってるのに」
「教師も熱でハイになってんのさ」
「そそ、頭でまともな考え出来なくなんの」
「勇者でも現れない限り無理だろうな。こんな訓練やってられるか!! みたいな」


 その言葉に魔法使いとアキラが我を見たのは理解した。
 もしそんな事になれば我が真っ先に動くと思っているのだろう……余り教師等への印象を悪くしたくないのだが……。
 多分その前にケルベロス達が動きそうではある。
 後で連絡をしに行くか。

 部活の帰り、我たちはドラッグストアで冷えるピタリ等も購入し、叩くと保冷剤になるのも幾つも購入した。
 ドラッグストアもこの時期は学生の買い物が多いのだろう、種類も豊富だ。
 水を掛けて布を回せば首を冷やせるモノも幾つかあって、それらも三つくらい購入。
 後は汗で落ちない日焼け止めを二つ、熱が出た場合の解熱剤も購入した。


「そう言えば、日差しで目もやられるって言ってたな」
「冷えるピタリを多めに買いましょうか」
「それがいいかも。僕が倒れたら看病してね?」
「可愛く言わなくても看病位しますよ。その代わり私が倒れたらお願いします」
「なんだろうな、この連帯感。死地に向かう軍隊ってこんな感じなのかな」
「まぁ、似たようなものだと思います」
「今年はどうなるんだろうねぇ……」


 今年は上級悪魔のサキュバスでルルリア……もとい、中野サトミ先生もついてくるのだろうか?
 だとしたら少しは助かるんだが……。
 そう思っていると、後ろからツンツンと突かれ振り向くとルルリアが立っていた。


「皆も集団行動へのお買い物かな?」
「ええ、死地に向かう気持ちですよ」
「今年は夏になるのも早いっていうから、そう無理はさせないように先生も気を付けるわ。今年からは保健室の先生もついてくるんですって」
「役に立つんですかね」
「熱中症アラートが出たら即解散にするって職員会議で決まっているわ。去年までは熱中層アラートが出ても外で運動させてて悲惨だったから」
「「「うわ」」」
「馬鹿な教師たちよね。生徒がバタバタ倒れて行くのを見て酒飲みつつゲラゲラ笑うのよ。流石にそう言う先生たちには後で罰がいくけれど、今年は校長も無理をさせないって決めてるみたい」
「それは僥倖」
「そう言う先生達っているんですね……」
「そりゃおバカでクソな教師なんて沢山いるしどこにでも沸くわよ。まぁ、良い先生もいるけど、馬鹿な教師が多いお陰で余り目立たないかな」
「それはとても困りますが……」
「だから、女性の先生が今年から注意しに行くのよ。それでもやらせる場合は教育委員会とPTAに報告って事になってるから、流石のクソ野郎共も辞めると思うわ」
「教師が教師をクソ野郎って……」
「うふふ」


 そう言って笑うルルリアには是非止めに来てもらいたいものだが……実際どうなるのかは分からない。
 要は三日後から始まる集団行動を如何に生き残るかが我たちの責務なのだ。


「兎に角日焼けで肌はボロボロになるし、気を付けた方が良いわ。日焼け止めは三つあると助かるわよ」
「ありがとう御座います」
「後、熱を出した次の日はベッドの上で動かなくて済むから、ワザと一日目に倒れるのをお勧めするわ。静かな部屋でのんびり過ごす方が大事よ」
「教師がそれ言っていい訳?」
「だって、祐一郎君には苦労してほしくないもの」
「贔屓って言うんだぞ先生。確かに祐一郎顔も良いけど」
「うふふ。じゃあ頑張ってね?」


 そう言うとルルリアは去って行った。
 今年は何とかなりそうかもしれないな。
 一日目は外の運動場での集団行動。
 二日目は山登り。
 三日目は帰省だった筈だ。
 二泊三日の地獄巡りと言った所だろう。


「私達も覚悟していきましょうか」
「そうだね」
「おう!」


 しかし、本当にこの三日間の集団行動が――本当の地獄になる事を、まだ我たちは知らない。
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