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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる

第98話 GW明けにあると言う1年生の軍隊行動イベント②

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 そしてやって来た軍隊練習初日。
 早朝からバスに乗り山奥にある誰も寄りつかないような施設に入り、割り振られた部屋へと向かう。
 今回の部屋では、余った我と魔法使いとアキラが同室で、他には誰もいない。
 ある意味ラッキーとも言えるが、荷物を置いて運動着に着替えれば直ぐに集まり移動となる。
 その前に日焼け止めや必要な物を机に出していつでも対応できるようにしておくのだ。
 三人顔や手足、首筋に足にとタップリの日焼け止めを塗った。
 汗で落ちにくいタイプだが、これが吉と出ると良いのだが。


「かなりタップリ塗りこんだな」
「そうでもしないと死ぬんでしょ? 火属性のダンジョンに潜るようなものだし一本使い切る勢いで塗ったよ」
「流石恵だな」
「私も使い切る勢いで塗りましたね。アキラは?」
「俺もだよ……死にたくねぇもん。外の日差し痛いし」
「ですよね」「だよね」


 そう、今日は夏日。
 帽子もかぶれない我たちにとっては頭皮が死ぬのではと思っているのだが、頭にはタオルを掛けて置こう。
 後は水用のペットボトルと、水で濡らせばヒンヤリするタオルは必須だろうな。


「では行きますか」
「行こうか」
「死に行く気分……はぁ」


 こうして全員が集まる場所に移動し、男子の数名は日焼け止め等塗っていなかったが、後で地獄を見るだろう。
 もしくは早く倒れる為の布石かも知れない。
 そんな事を思いつつ列に並ぶとケルベロスの面子も集まってきた。
 彼等も日焼け止めは万端なようで、飲み物も持って来ている。


「あ――これより野外での集団訓練を行う。熱中症アラートが出たら解散となるが、それが出ない間は解散とはならない。しっかりと励む様に」


 そう言って黒々とした体育教師は声を掛けたが、生徒たちの声は小さい。
 それにイラっとしたのか肩眉を上げて生徒を睨みつける教師、いるのだな、こういう屑のような教師とは。


「声が小さい!! 俺が言ったらはっきりと大きな声で返事をしろ!!」
「「「「「はい!!」」」」」


 そう言うが我は声も出さず小さい溜息だけを吐いた。
 所謂頭の腐った教師とはこういうのを言うんだろう。
 我たちの担当の体育教師ではないが、ああいうのが担当になったクラスは地獄だな。
 こうして外にでての訓練がスタートした訳だが、最初は全体でラジオ体操。
 そこからが既に地獄のスタートであった。


「全員動きがバラバラだ!! 揃うまでラジオ体操!!」


 馬鹿か!?
 思わず心の声が口から出そうになったが、全員の動きが揃うまでってどれだけ時間が掛かるんだろうな。
 そう思ってると午前中いっぱいはラジオ体操になった。
 既に汗だくだし日焼け止めもかなり落ちてきている。
 女子数名は倒れて運ばれて行った。
 熱中症だろう。
 その後は周囲の走り込みスタート。
 教師が良いというまで走るという訳の分からないモノだった。
 既に上には太陽が照り付けている。
 日焼け止めは本当に気持ち程度だなと思いながら走っていると、女子が次々倒れた。


「今年の女子は貧弱だな!! 全員ダッシュ!!」
「はぁ? マジかよ」
「やってらんねぇ!!」
「帰ろうー。クソ教師の言う事聞く必要ないって。この虐待爺!!」
「なっ!!」


 そう叫んだのはケルベロス達だ。
 よし、流石言う事は言ったな!!
 頭に来たら文句をつけろと言っていたが、正に文句を教師に言って歩き始める。


「ダッシュだと言っているだろうが!! 教師の言う事も聞けないのか!?」
「道理に適ってる事なら言う事聞くんだよ虐待先生」
「アンタの趣味に此処まで付き合ってやったんだから終わり終わり」
「やってらんないわよねー。中に帰ろうよ」
「帰るか」
「意味ねーし」
「付き合う義理も無いって言うか?」
「~~~~お前ら!!」


 そう言うと教師は三人の元に歩み寄り、一人ずつ顔を殴り飛ばした。
 これには我も足を止めたが、ルルリアも丁度来たところで「何を為さっているんです!!」と怒り声をあげる。


「泉先生!! 熱中症アラートはもう随分前になってますよ!?」
「え!」
「その上生徒を殴るなんて……PTAと教育委員会に報告します。貴方これで三回目ですよね? 流石にクビでは?」
「いやいや、何時アラートなんて」
「一時間前になりました!! はい、生徒達も直ぐ中に入って!! 日焼けで火傷した子は救護室へ急いで!! 他の生徒は水で身体を冷やしなさい!! あなた達三人は直ぐに救護室ね。血が出てるわ」
「マジ暴力のクソ教師!!」
「地獄に落ちろ!!」
「死んで二度と生まれてくるな!!」
「あっ」


 そう言うと三人はルルリアと共に救護室へと向かい、我たちも汗を拭いながら直ぐに頷くと室内へと移動した。
 携わった教師陣は呆然としているが――顔色は悪い。
 流石に三回ともなると注意だけでは済まないと分かっているのだろう。
 しかも暴力もあった訳だ。

 そもそも、ケルベロスの親はPTAに参加してる。
 これは大きな問題になるだろう。


「やれやれ、頭が悪い教師がいると苦労しますね」
「本当だね。腕も足も真っ赤だよ」
「それ、火傷ですよ」
「そう言う祐一郎も大丈夫か? 顔も手も足も真っ赤だぞ」
「ええ、頭が痛いです」
「俺もヤバいくらい頭が痛い」
「救護室で事情を説明して後は部屋で休みましょう」
「それが良いね」
「これ、前はもっと酷かったんだろう? よく問題にならなかったな」
「学校側がもみ消す……と言うのはあったんでしょうねぇ」


 そう言って室内に入り、頭から水を被って止まらない汗を流し切る。
 スッキリしたところで顔や腕、足を洗い、濡れたタオルで拭いてスッキリすると救護室へと三人で向かい、火傷と言う診断を受けたので担任にその紙を手渡し、後はゆっくり火傷の治療に専念する。


「結構な人数が火傷判定喰らってたな」
「あの人数からしてクラスの半分以上ですね」
「叩いたら保冷材になる奴結構買っておいて助かったね」
「あーマジで頭痛い」
「頭痛薬は熱中症の時は飲まない方がいいらしいので、我慢しましょう。冷えるピタリ沢山張りますよ」
「助かる」
「僕も沢山張ろう」
「正に火あぶりでしたね」
「本当、今時太陽の日差しで火あぶりの刑ってなんだよ」
「太陽馬鹿にし過ぎだろう」
「熱も測って各自様子を見ましょう」


 こうしてベッドに横になり教師への暴言を口にしながら、痛みと頭痛を堪えて行くしかなかった――。
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