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第三章 魔王様、中学時代をお過ごしになる
96 魔王様のスローライフは料理の中にアリ。だと思われる。
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異世界オル・ディールでは世界を相手に勇者たちと戦った魔王ダグラス。
聖女の捨て身の技で封印され現世ではこのように――。
「燻製卵は大人に人気が高いですねぇ」
「私は燻製ソーセージが好きだ。ハムも好きだな!」
「僕も勇者と同意見。やっぱり肉だよ」
「それを七輪で炙って食べるのがまた堪らないな!」
「ソーセージとハムは多めに燻製を作ってますからね。今度は燻製肉で何を作りましょうか」
勇者を妹に持ち、以前は敵であった魔法使いとスローライフを送っている等、当時の人間どもが知ったら驚く事だろう。
GW最終日、我は朝から台所に立っていた。
厚切りの味の効いたチャーシューを厚切りにして食べたいという勇者の要望を叶えるためだ。
昨夜のうちに仕込んでいたので、良い感じに味は染みわたっている。
料理とは一日にしてならず。
美味い飯は二日目こそ味が染みて美味いものが多い。
紐を千切って厚切りにし、それをさらに燻製にするものと、料理に使うものに分ける。
シッカリとした燻製にはしないが、保存食としては最適だろう。
問題はこの厚切りチャーシューをどう料理するか。
家族が多い分、一人当たりの食べる量と言うのは限られている。
多めに作ったとしてもそうなのだ。
食べ盛りがいると肉と言うのはすぐ消える。
とはいえ、ガッツリとした肉も食いたいだろう。我も食いたい。
「一本は燻製に、一本は厚切りチャーシューに、こちらの半分は炒めたチャーハンに入れますか」
チャーハンも出来れば簡単な味付けがいい。
溶き卵にネギ、それにこの味の染みついたチャーシューをサイコロにして食べるのが良いだろう。
手間暇かけて、食べるのは一瞬。
それを苦と思うか、楽しみと思うかは人それぞれだが、我としては楽しみとして楽しんでいる。
一つを燻製小屋に持って行き吊るして他の用意していたソーセージやチーズたちと燻製にし始めると、昼ご飯の為に動き出す。
勇者がいると五月蠅い為、今日は魔法使いと出かけて貰っているのだ。
昼には帰ってこないと美味い飯は食わせんぞと言っている為、尻尾を振りながら帰ってくる事だろう。
すると――。
「祐一郎」
「何でしょう」
「そのチャーシューは晩酌用あるのか?」
「ただいま燻製中です。それで我慢してください」
「そうか、では夜の楽しみにするか」
そう言ってそそくさと部屋に戻る父親。
この前更に父上達に相談し、「ドラム缶を半分にして、その上に網を置きたい」と言うと作ってくれたのだが、昨日はそれで炭火焼焼き肉を外で楽しんだ。
無論串に肉や野菜を刺して、なんちゃって串焼き風を作ったのだが、思いの他勇者たちには好評だった。
なんでも、酒場ではよくこういう料理が出されていたらしい。
うむ、我も身分を隠して酒場で食べてみたかった。
大味ではあるが、中々に美味かったのだ。
ドラム缶のお陰で我のスローライフ庭は正に我の城と言わんばかりに色々揃い始めた。
七輪は中々手に入れられない為仕方ないが、ドラム缶式ならば手に入れやすいらしい。
田舎ゆえの特権だろうか。
既に蚊の出やすい時期になった為、蚊取り線香は欠かせないが……我は蚊に食われたことが無い。
勇者は良く食われているが「魔王の血なんて不味いに決まってるだろう!?」と文句を言われたので、肉を一枚少なくしてやった。
涙ながらに苦情を訴える勇者の顔はとても見ものだった。
さて、問題のチャーシューだが、やはり炙るのが良いだろうと思い残り二つを大きく切り、少し大きめの一口サイズにしてから持って行くと、七輪に火をくべて弱火でジックリ焼いていく。
油がじわじわと出てきたころで引き上げ、いい香りがするチャーシューを串に刺していき勇者が食べれるレベルの粗挽き塩コショウで味付けする。
もう一つのチャーシューの半分は細かい四角にして味付けはシンプルに卵と塩コショウとネギで炒める。
鉄のフライパンは正に有能だ。
洗う際には手間暇がかかるが、このアイテムのお陰で料理が美味くなるのだから最高の料理道具と言えるだろう。
肉から出た油が更に米と溶き卵に混ざって最高の一品と言えるな!
それに今日は卵とわかめのスープを作れば昼食は完成だ。
野菜が少ないのが難点だが、浅漬けの白菜漬けがある為それを出そう。
我がスローライフは料理の中にあり!!
「ただいま――!! お腹空いたぞ魔王!!」
「ただいま、凄くお腹のすく匂いだね!!」
「もう直ぐ出来ますよ。すみませんがお二人は使用済みの七輪の炭を片してくれますか?」
「いいよー」
「働かざるもの食うべからずだな!」
「その通りですね」
「燻製も作ってるのか? 良い匂いがする」
「父の要望で今作ってますよ。チーズもソーセージも燻製にしていますから夜には美味しく頂けるでしょう」
「やった――!!」
「今度鳥を丸ごと一個使った料理とか食べてみたいよね。こう、野性的に」
「野性的ですか。まず鳥丸ごとと言うのが店に売ってないのが残念ですね」
「そうなんだよねぇ……」
「クリスマスに七面鳥がでるくらいか?」
「でもそれ調理済みじゃん?」
「むう、私は魔王の料理したのが食べたいのになぁ」
「機会があれば作りますよ。さ、早くしてください? 料理が出来上がりますよ」
「「は――い!!」」
こうして一日使って作ったチャーシューはその日のうちに消え、とても好評だったのでまた作ってもいいなと思いつつ、チャーシューを作る際に作った汁にさらに肉を足して味を変化させていくのも良いだろうと思いながら、家族皆で美味しく料理を食べたのは言う間でもない、最高のGW最終日だった。
GWが終われば、学校行事である一年生をまとめ上げると言う名の虐待……基、イベントが始まる。三日間施設に入って仲を深めると言う名の軍隊行動だ。
日焼け止めを沢山買って行けと言う先輩の言葉と、叩いたらアイスノンになるのも沢山持って行けと言う先輩の言葉を思い出し、今度ドラッグストアに行こうと決めたのは言う間でもない。
聖女の捨て身の技で封印され現世ではこのように――。
「燻製卵は大人に人気が高いですねぇ」
「私は燻製ソーセージが好きだ。ハムも好きだな!」
「僕も勇者と同意見。やっぱり肉だよ」
「それを七輪で炙って食べるのがまた堪らないな!」
「ソーセージとハムは多めに燻製を作ってますからね。今度は燻製肉で何を作りましょうか」
勇者を妹に持ち、以前は敵であった魔法使いとスローライフを送っている等、当時の人間どもが知ったら驚く事だろう。
GW最終日、我は朝から台所に立っていた。
厚切りの味の効いたチャーシューを厚切りにして食べたいという勇者の要望を叶えるためだ。
昨夜のうちに仕込んでいたので、良い感じに味は染みわたっている。
料理とは一日にしてならず。
美味い飯は二日目こそ味が染みて美味いものが多い。
紐を千切って厚切りにし、それをさらに燻製にするものと、料理に使うものに分ける。
シッカリとした燻製にはしないが、保存食としては最適だろう。
問題はこの厚切りチャーシューをどう料理するか。
家族が多い分、一人当たりの食べる量と言うのは限られている。
多めに作ったとしてもそうなのだ。
食べ盛りがいると肉と言うのはすぐ消える。
とはいえ、ガッツリとした肉も食いたいだろう。我も食いたい。
「一本は燻製に、一本は厚切りチャーシューに、こちらの半分は炒めたチャーハンに入れますか」
チャーハンも出来れば簡単な味付けがいい。
溶き卵にネギ、それにこの味の染みついたチャーシューをサイコロにして食べるのが良いだろう。
手間暇かけて、食べるのは一瞬。
それを苦と思うか、楽しみと思うかは人それぞれだが、我としては楽しみとして楽しんでいる。
一つを燻製小屋に持って行き吊るして他の用意していたソーセージやチーズたちと燻製にし始めると、昼ご飯の為に動き出す。
勇者がいると五月蠅い為、今日は魔法使いと出かけて貰っているのだ。
昼には帰ってこないと美味い飯は食わせんぞと言っている為、尻尾を振りながら帰ってくる事だろう。
すると――。
「祐一郎」
「何でしょう」
「そのチャーシューは晩酌用あるのか?」
「ただいま燻製中です。それで我慢してください」
「そうか、では夜の楽しみにするか」
そう言ってそそくさと部屋に戻る父親。
この前更に父上達に相談し、「ドラム缶を半分にして、その上に網を置きたい」と言うと作ってくれたのだが、昨日はそれで炭火焼焼き肉を外で楽しんだ。
無論串に肉や野菜を刺して、なんちゃって串焼き風を作ったのだが、思いの他勇者たちには好評だった。
なんでも、酒場ではよくこういう料理が出されていたらしい。
うむ、我も身分を隠して酒場で食べてみたかった。
大味ではあるが、中々に美味かったのだ。
ドラム缶のお陰で我のスローライフ庭は正に我の城と言わんばかりに色々揃い始めた。
七輪は中々手に入れられない為仕方ないが、ドラム缶式ならば手に入れやすいらしい。
田舎ゆえの特権だろうか。
既に蚊の出やすい時期になった為、蚊取り線香は欠かせないが……我は蚊に食われたことが無い。
勇者は良く食われているが「魔王の血なんて不味いに決まってるだろう!?」と文句を言われたので、肉を一枚少なくしてやった。
涙ながらに苦情を訴える勇者の顔はとても見ものだった。
さて、問題のチャーシューだが、やはり炙るのが良いだろうと思い残り二つを大きく切り、少し大きめの一口サイズにしてから持って行くと、七輪に火をくべて弱火でジックリ焼いていく。
油がじわじわと出てきたころで引き上げ、いい香りがするチャーシューを串に刺していき勇者が食べれるレベルの粗挽き塩コショウで味付けする。
もう一つのチャーシューの半分は細かい四角にして味付けはシンプルに卵と塩コショウとネギで炒める。
鉄のフライパンは正に有能だ。
洗う際には手間暇がかかるが、このアイテムのお陰で料理が美味くなるのだから最高の料理道具と言えるだろう。
肉から出た油が更に米と溶き卵に混ざって最高の一品と言えるな!
それに今日は卵とわかめのスープを作れば昼食は完成だ。
野菜が少ないのが難点だが、浅漬けの白菜漬けがある為それを出そう。
我がスローライフは料理の中にあり!!
「ただいま――!! お腹空いたぞ魔王!!」
「ただいま、凄くお腹のすく匂いだね!!」
「もう直ぐ出来ますよ。すみませんがお二人は使用済みの七輪の炭を片してくれますか?」
「いいよー」
「働かざるもの食うべからずだな!」
「その通りですね」
「燻製も作ってるのか? 良い匂いがする」
「父の要望で今作ってますよ。チーズもソーセージも燻製にしていますから夜には美味しく頂けるでしょう」
「やった――!!」
「今度鳥を丸ごと一個使った料理とか食べてみたいよね。こう、野性的に」
「野性的ですか。まず鳥丸ごとと言うのが店に売ってないのが残念ですね」
「そうなんだよねぇ……」
「クリスマスに七面鳥がでるくらいか?」
「でもそれ調理済みじゃん?」
「むう、私は魔王の料理したのが食べたいのになぁ」
「機会があれば作りますよ。さ、早くしてください? 料理が出来上がりますよ」
「「は――い!!」」
こうして一日使って作ったチャーシューはその日のうちに消え、とても好評だったのでまた作ってもいいなと思いつつ、チャーシューを作る際に作った汁にさらに肉を足して味を変化させていくのも良いだろうと思いながら、家族皆で美味しく料理を食べたのは言う間でもない、最高のGW最終日だった。
GWが終われば、学校行事である一年生をまとめ上げると言う名の虐待……基、イベントが始まる。三日間施設に入って仲を深めると言う名の軍隊行動だ。
日焼け止めを沢山買って行けと言う先輩の言葉と、叩いたらアイスノンになるのも沢山持って行けと言う先輩の言葉を思い出し、今度ドラッグストアに行こうと決めたのは言う間でもない。
応援ありがとうございます!
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