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悪役令嬢は王妃なんです!

第38話 因果応報って言葉、ご存じかしら?

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 園への視察は本当に久しぶりでした。
 リコネルと、何故かついてきたクリスタルと共に向かい、園長であるサーザリンにまずは会いに行きます。
 サーザリンからの報告書では、とても優秀な魔力操作が出来る元避難民の方が二人もいるという話で、私たちはホッと胸を撫でおろしつつ、他の生徒たちがどう過ごしているのかも聞かせていただきました。


「元避難民の方々で文字の読み書きや計算は今はある程度クリア段階に来ています。魔力操作の方はまだまだ時間がかかりそうですが、程なく安定するでしょう」
「それは良かったですわ」
「それで、優秀なその二名には教師として園で雇いたいとも思ってます。とても優秀な方ですので、きっとジュリアス国王陛下とリコネル王妃にとってもプラスになるのではないかと」
「そこまでですか」


 本来、魔力操作は一般庶民でも簡単に出来るものではありません。
 それでもサーザリンが言うほどの実力のある者ならば、一度会ってみたいということになりました。


 魔力操作を専門に授業をしている部屋に入ると、大人から子供まで幅広く教室にいて、私たちの突然の訪問に驚いてはいたものの、敬意をあらわしてくださりました。
 子供でも、それが出来るのは素晴らしい事ですね。


「それで、サーザリンさんが仰っていた二人とは?」
「アリオスさん、ダリルさん、いらっしゃるかしら?」


 その言葉に暫く教室は静まり返りましたが、深いため息が聞こえたと同時に二人の男性が立ち上がりました。
 そして、その二人を見て私もリコネルも息を呑んだのです。


「ラフェールに……モンド」
「お久しぶりです、リコネル王妃様」
「お久しぶりです……」


 そこにいたのは、宰相の息子であるラフェールと、伯爵の跡継ぎであったモンドでした。
 二人は名を変え、この王国の避難民として生活していたのです。


「お知合いですか?」
「……そうですわね、場所を変えてお話ししましょう」


 リコネルの言葉に何かを察したのか、サーザリンは別室へ案内してくださいました。
 無論、偽名を使っていた二人も一緒です。
 別室に到着すると、彼らの園へ入学した際の書類を見せてもらい、偽名を使って平民としてこの領地へと避難民として紛れ込んでいたことが分かりました。


「僕たちは既に屋敷から追い出された身。偽名を使って避難民になったんだ」
「リコネル様は俺たちを見捨てたりはしないだろう? な? そうだよな?」


 必死な二人に対し、リコネルは呆れたようにため息を吐き、サーザリンは私の方から説明をすると目を見開いて二人を睨みつけました。
 ――学園にいた頃、リコネルを糾弾した男たち。
 それを今になって助けろと言うのはおかしな話であり、また、公爵家に火を放ったことに言及すると、二人は慌てて弁解をしましたが、最早弁解の余地もないでしょう。


「王妃への糾弾に、王妃の実家である公爵への放火、更に言えば、この二人どちらかがアルジェナが産んだ子供の父親。頭の痛い問題ですこと」
「僕たちは心を入れ替えたんだ!」
「平民でも、リコネル商会に入ることが出来れば安泰なんだろう?」
「知った仲じゃないか! 僕たちをリコネル商会に入れてくれ!」
「お断りしますわ」


 リコネルの言葉に二人は顔を青くし、リコネルは汚物でも見るような目で二人を見つめました。
 しかし――。


「まぁ、感謝もしてますわ。あの阿保と婚約解消できたのですから、あなた方の功績はそれだけですわね」
「「……」」
「学園にいた頃を思い出しますわね? 偽物王子と一緒にわたくしに対して、血も涙もない悪女だの、チャーリーの相手としては全てがなっていないだのと、色々と悪態をついてくださりましたもの」
「そ……それは」
「でもそれと今とは」
「ええ、それと今とは別ですわ。一国の王妃に対してそれだけの事をしたあげく、王妃の実家に火を放ち逃亡し、避難民として紛れ込んで罪を償うこともしなかったという今が残ってるだけですわ」


 笑顔のリコネルに二人は口をパクパクとさせ、言葉がでようにも出ないようでした。


「公爵家に火を放ったのは紛れもない事実。お二人は法のもと裁かれるでしょう」
「そんな!」
「頼むリコネル! 僕たちを救ってくれ!」
「言葉を選んで欲しいですわね、わたくし王妃ですわよ」


 静まり返る室内。
 そして、サーザリンの深いため息と共に、今まで黙っていたクリスタルが口を開きました。


『罪には罰を、が鉄則じゃろうな。甘え腐ってリコネルにすがりに来るとはなんと情けない男たちじゃ』
「ええ、本当に」
「まぁ、リコネルへの糾弾に対しては、あなた方のご実家に既に罰を与えています。公爵家への放火は、今からあなた方を公爵家にお渡しして決めてもらいましょう」
「助けてくれ!」
「悪気はなかったんだ! ついカッとなって!」
「ついカッとなって火をつける放火魔など我が国に必要ありませんわ! それに、かわいい女の子でもいれば手籠めにしようと考えていたのでしょう? あなた方下半身がお粗末ですものね」


 リコネルの言葉に顔を真っ赤にする二人、ですが本当のことですので反論すら出来ないでしょうね。


「せめて、アルジェナが妊娠した際、誠意を見せていれば多少の余地は与えましたのに。揃いも揃って三人とも責任を放棄するんですもの。信用すらありません事よ」
「う……」
「だって誰の子か本当にわからなくて……」
「分からないから責任を取らない、のは、言い訳ですわ」
『どれ、これ以上悪さが出来ぬように玉をとってやろう、なに、すぐ終わる』


 クリスタルの言葉に怯え身を縮こませる二人に私は同情したものの、その後、意気消沈した二人を公爵家に送るため、学園の馬車を借りて逃げ出さぬよう兵士もつけ、公爵家に向かわせました。


 公爵領での放火は犯罪の中ではトップクラスで刑が重いのです。
 良くて鉱山での永久的な生活が、下手をすれば死刑でしょうね。
 しかし、ボヤ騒ぎで済んでいるので、鉱山での永久労働で済むことでしょう。


 その後、サーザリンさんからは何度も謝罪を受けましたが、偽名を使い避難民に紛れ込んでいたことに気づかなかったのはこちらの落ち度だと伝え、事なきを終えました。
 しかし、三人一緒に逃亡していたはずですし、もう一人、ネルファーがどこに行ったのかは、依然謎のまま……この領地に入ってきていることは間違いないでしょう。


「ネルファーの居場所を探らねばなりませんね」
「そうですわね、無駄に時間を使ってしまって……ほかのお店に行けませんわ!」
「近々また行きましょう。あとは二人がリコネル商会に入りたがっていたという話ですし、本屋と花屋、それに園芸店にはネルファーの似顔絵をお渡しして、注意喚起もしておかねばなりませんね」
「そうですわね……一旦屋敷に帰りましょう」



 こうして、私たちは一度屋敷に戻り、ネルファーの似顔絵を作成すると、直ぐにリコネル商会全てに似顔絵を配布し、注意喚起しました。
 ところが――。




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