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悪役令嬢な王妃は、全てを受け止めるのです!
第52話 淘汰される国民を無くすために動くことは
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特別老人院対策室へと入ると、そこには二人の医師と、現場を警備していた兵士が顔色を青くして立っていました。
これだけの被害がでたのです……顔が青くならないほうが可笑しいと言うもの。
私は二人の元へクリスタルと向かうと、医師は二人の兵士を厳しい目で見つめ、その二人は脂汗すらそのままに顔色を青くして立っていました。
「この度の被害は――」
「「申し訳ありません!!」」
私が言葉を口にすると、それを遮るように先ほどの兵士二人がその場に土下座しました。
一体何が――と問いかけようとした時、医師はため息を吐き二人を見下した目のまま、吐き捨てるように事の内容を教えてくださいました。
「この二人が警備にあたっていた場所での重大火災でした」
「なんと?」
「ち……違うんです!」
「オレ……いえ、私たちは急に祖父母に会いたいと言ってやってきた女性に道案内を頼まれて……」
「けど、その女性は直ぐに俺たちとはぐれてしまって!」
「そしたらあっちこっちから火が!!」
彼らの言葉に眉を寄せると、二人は小さな悲鳴を上げて深く深く土下座しました。
長い沈黙……それは、私の為なのか、それとも場がそうさせたのか判断はつきませんが、少なからず言えることは――。
「アルジェナと言う女性を、ご存じですか?」
静かに、自分でも驚くほど冷静な声でした。
「アルジェナと言えば……王妃様を陥れた女性では?」
医師の一人が驚いた様子で口にすると、私は強く頷きました。
そして隣に無言で立っているクリスタルは、ため息を吐くも、それ以上は口にはしません。
「ええ、そのアルジェナがこの王都に潜んでいます。園や病院への放火は、そのアルジェナと一人の男性の犯行と解りました」
「なんと!!」
「王妃様を陥れるだけではなく、王都まで陥れようとするとは!!」
「そこの兵士には後でアルジェナの顔写真を見てもらいます。宜しいですね?」
「「はい!!」」
土下座していた二人を罪には問えない。
ですが、アルジェナとチャーリーにはしっかりと罪を償ってもらう必要がありますね。
沸々と湧き上がる怒りを抑え、私は言葉を続けました。
「非常に残念な事ですが、この度の王都での度重なる放火は、アルジェナ及び、チャーリーによる犯行です。その証拠は既に押さえました。後は捕まえるだけですが、アルジェナにそそのかされた二人には警備の仕事を辞めてもらい、顔を知っている以上、アルジェナ及びチャーリーを捕まえる方で動いていただきます」
「チャーリーと言うと……まさか!!」
「ええ、元王太子であるチャーリーですよ」
「まさか! 彼は王家の者ですよ!?」
医師たちの言葉に私は小さく首を横に振ると、その場にいた皆が顔を青ざめ「まさか」と口にします。
ですが、隠しようのない事実……これ以上は無理でしょう。
「……チャーリーに王家の血は流れておりません」
「な……」
「彼は、元宰相と元王妃の間にできた子供です。王の血は受け継がず、クリスタルに拒否され、クリスタルの怒りに触れ、王都が炎上したのです」
「では、本当に元王都が炎上したのはチャーリーの所為だと言うのですか!?」
「残念ながら、クリスタルがそう教えてくださいました。そしてこれは、重大な犯罪にも当たります。クリスタルの怒りに触れたことへ対して、何ら対応をしなかった私にも責任はありますが、出来るだけ穏便に済ませたかったのです。ですが……彼は、この王都を、弱き立場の人間を淘汰しようとしているようですね」
私の言葉に医師も集まっていた兵士たちも言葉をなくし、また、絶望の色から一変、表情に怒りがこみあげているのが分かります。
「自分が王となった時に邪魔な施設を狙っての犯行でしょう。それが、子供たちの学び舎でもあり、子供らの集まる園であったり、老い先短いご年配の方々の終の棲家を狙ったり、病気の子供たちが必死に病魔と闘っている病院を狙ったのです。チャーリーにとって、そういった社会的弱者は必要としない人間なのでしょう。決して許されることではありません。命とは誰にとってもたった一つ。命に差別があってはならないのに、チャーリーは命を己の篩にかけ、淘汰しているのです」
最早、その場にいる兵士も私たちを護衛するために付いてきていた護衛騎士も、怒りに満ちた表情で私の言葉を聞いていました。
そしてポツリと、医師が口にしたのです。
「――願わくば、一番苦しむ方法での裁きを……」
私はその言葉に強く頷きました。
苦しまない方法で裁くつもりはありません。
許しを請われても、許すことはありません。
社会的弱者を淘汰するような人間には、この世にいてもらっては困るのです。
流石の私とて……鬼になりましょう。
合同での葬式が行われるとき、その時に献花させて頂くことを告げ、家路につく中、街の中を走り回る兵士たちの手には、ディロンやディランが印刷したアルジェナとチャーリーの似顔絵が握りしめられていました。
街の中心部にもソレは多く貼られ、住民たちも怒り、二人を探し出す動きが出始めているのを感じ取っての帰宅でした。
『どこまでも追われると言う恐怖を味わうのは、どれほどのものかのう?』
「さぁ、王国民を敵に回したのです。逃げるなら王都の外でしょうね」
『検問しておるのにか? 逃げれるか?』
クスクス笑うリコネルの姿のクリスタルに私は笑顔を浮かべ、玄関を開けたのでした。
これだけの被害がでたのです……顔が青くならないほうが可笑しいと言うもの。
私は二人の元へクリスタルと向かうと、医師は二人の兵士を厳しい目で見つめ、その二人は脂汗すらそのままに顔色を青くして立っていました。
「この度の被害は――」
「「申し訳ありません!!」」
私が言葉を口にすると、それを遮るように先ほどの兵士二人がその場に土下座しました。
一体何が――と問いかけようとした時、医師はため息を吐き二人を見下した目のまま、吐き捨てるように事の内容を教えてくださいました。
「この二人が警備にあたっていた場所での重大火災でした」
「なんと?」
「ち……違うんです!」
「オレ……いえ、私たちは急に祖父母に会いたいと言ってやってきた女性に道案内を頼まれて……」
「けど、その女性は直ぐに俺たちとはぐれてしまって!」
「そしたらあっちこっちから火が!!」
彼らの言葉に眉を寄せると、二人は小さな悲鳴を上げて深く深く土下座しました。
長い沈黙……それは、私の為なのか、それとも場がそうさせたのか判断はつきませんが、少なからず言えることは――。
「アルジェナと言う女性を、ご存じですか?」
静かに、自分でも驚くほど冷静な声でした。
「アルジェナと言えば……王妃様を陥れた女性では?」
医師の一人が驚いた様子で口にすると、私は強く頷きました。
そして隣に無言で立っているクリスタルは、ため息を吐くも、それ以上は口にはしません。
「ええ、そのアルジェナがこの王都に潜んでいます。園や病院への放火は、そのアルジェナと一人の男性の犯行と解りました」
「なんと!!」
「王妃様を陥れるだけではなく、王都まで陥れようとするとは!!」
「そこの兵士には後でアルジェナの顔写真を見てもらいます。宜しいですね?」
「「はい!!」」
土下座していた二人を罪には問えない。
ですが、アルジェナとチャーリーにはしっかりと罪を償ってもらう必要がありますね。
沸々と湧き上がる怒りを抑え、私は言葉を続けました。
「非常に残念な事ですが、この度の王都での度重なる放火は、アルジェナ及び、チャーリーによる犯行です。その証拠は既に押さえました。後は捕まえるだけですが、アルジェナにそそのかされた二人には警備の仕事を辞めてもらい、顔を知っている以上、アルジェナ及びチャーリーを捕まえる方で動いていただきます」
「チャーリーと言うと……まさか!!」
「ええ、元王太子であるチャーリーですよ」
「まさか! 彼は王家の者ですよ!?」
医師たちの言葉に私は小さく首を横に振ると、その場にいた皆が顔を青ざめ「まさか」と口にします。
ですが、隠しようのない事実……これ以上は無理でしょう。
「……チャーリーに王家の血は流れておりません」
「な……」
「彼は、元宰相と元王妃の間にできた子供です。王の血は受け継がず、クリスタルに拒否され、クリスタルの怒りに触れ、王都が炎上したのです」
「では、本当に元王都が炎上したのはチャーリーの所為だと言うのですか!?」
「残念ながら、クリスタルがそう教えてくださいました。そしてこれは、重大な犯罪にも当たります。クリスタルの怒りに触れたことへ対して、何ら対応をしなかった私にも責任はありますが、出来るだけ穏便に済ませたかったのです。ですが……彼は、この王都を、弱き立場の人間を淘汰しようとしているようですね」
私の言葉に医師も集まっていた兵士たちも言葉をなくし、また、絶望の色から一変、表情に怒りがこみあげているのが分かります。
「自分が王となった時に邪魔な施設を狙っての犯行でしょう。それが、子供たちの学び舎でもあり、子供らの集まる園であったり、老い先短いご年配の方々の終の棲家を狙ったり、病気の子供たちが必死に病魔と闘っている病院を狙ったのです。チャーリーにとって、そういった社会的弱者は必要としない人間なのでしょう。決して許されることではありません。命とは誰にとってもたった一つ。命に差別があってはならないのに、チャーリーは命を己の篩にかけ、淘汰しているのです」
最早、その場にいる兵士も私たちを護衛するために付いてきていた護衛騎士も、怒りに満ちた表情で私の言葉を聞いていました。
そしてポツリと、医師が口にしたのです。
「――願わくば、一番苦しむ方法での裁きを……」
私はその言葉に強く頷きました。
苦しまない方法で裁くつもりはありません。
許しを請われても、許すことはありません。
社会的弱者を淘汰するような人間には、この世にいてもらっては困るのです。
流石の私とて……鬼になりましょう。
合同での葬式が行われるとき、その時に献花させて頂くことを告げ、家路につく中、街の中を走り回る兵士たちの手には、ディロンやディランが印刷したアルジェナとチャーリーの似顔絵が握りしめられていました。
街の中心部にもソレは多く貼られ、住民たちも怒り、二人を探し出す動きが出始めているのを感じ取っての帰宅でした。
『どこまでも追われると言う恐怖を味わうのは、どれほどのものかのう?』
「さぁ、王国民を敵に回したのです。逃げるなら王都の外でしょうね」
『検問しておるのにか? 逃げれるか?』
クスクス笑うリコネルの姿のクリスタルに私は笑顔を浮かべ、玄関を開けたのでした。
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