美形案内係と巡る無様敗北勇者展

桜羽根ねね

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①本日の貸切内覧会

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「勇者特別展の内覧会へようこそ、スロウ様」
「あ、あわわ、さっ、様なんてつけなくて大丈夫です……!僕は運良くチケットが当たっただけの底辺ですので!」
「お客様には礼を尽くすのが当館のモットーです。たとえ貴方が年端も行かない子供であろうと丁寧にご案内いたします」
「ひぇ……。う、うう、その、本当に、僕にはもったいないです……。僕は弱くて、ザコやゴミって呼ばれてばかりだから……、っ、すみません!ごめんなさい、愚痴を言いたいわけじゃなくて……っ、あ、あの、今日はよろしくお願いしますっ!」

 しどろもどろになりながら勢いよく直角に頭を下げると、頭上からくぐもった笑い声が聞こえてきた。恥ずかしい。身なりだけは綺麗にしてきたけど、中身がこんなんじゃ笑われて当然だ。ゆっくり顔を上げると、ピシッとしたスーツや『オリウス』と書かれた名札が目に入っていって、微笑みを湛えている綺麗な相貌が目に入った。予想していた嘲笑じゃない、柔らかな笑みにどぎまぎしてしまう。

 今から彼……オリウス様直々に案内してもらえると思うと、一生分の運を使い果たした気分だ。だってオリウス様も、あの最終決戦に参加されたメンバーのひとりなんだから。過去に僕が住む村に少しだけ滞在されたことがあるけど……、直接お話ししたわけじゃないから、今こうして面と向かって話してるのが夢みたいだ。

「それではスロウ様、こちらへどうぞ」
「は、はいっ。ひゃわ!?あ、あああの、手っ、オ、オリウス様、手を、にぎ、……っ!?」
「本日の貸切内覧会はこのようにご案内する決まりですので。お嫌でしたか?」
「いえっ、全然嫌じゃないです、けどっ……!」
「それならよかったです。まずはエントランスに参りましょう」

 僕より大きくてしっかりした手の体温が、すごく熱く感じる。指までぎゅっと絡まってきて、混乱と嬉しさと照れで身体が発火しそうだ。
 こんな風に触れ合うと、昔少しの間一緒に遊んだ鳥を思い出す。友達、だったと思いたいな。触った羽があったかくて、ほっこりした心地になれたんだよね。

 ……いや、現実逃避したところでオリウス様から手を握られているという恐れ多い事実は変わらない。

 特別なチケットによる一時的なものだって分かってはいるけど、まるで僕がオリウス様に認められたかのように感じて……、あああ駄目だ自重しないと。興奮で溶けちゃいそう。

 そんなぽやぽや状態の僕の前で、立派な建物の扉がゆっくり開いていった。


*****
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