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魔法性年ドスケベピンク
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広々とした清潔なオフィス内にて、カタカタとキーボードを叩いていた青年が、不意にがくりと項垂れた。
「はああああぁ…………」
「んな、おっもい溜息吐くなって。別にトチってたりしてなかったじゃんか」
隣の席の先輩からの慰めに、唸りながら顔を上げる。こればかりは毎度のことながらなかなか立ち直れない。
「してない、けど……。俺、また……粗相しちゃったし、絶対ギルさんにドン引かれた……」
「あいつだってお前の中にションベンしてただろ。おあいこおあいこ。ほら、元気出せって。魔法性年がめそめそしてたら駄目だろ?」
「い、今は別に変身してないから……!」
小森奏多、25歳。
階段から足を踏み外したのが、日本で生きていた頃の最後の記憶だ。
目を覚ませば、そこは日本に似た異世界……ロエミノの国だった。街並みや食べ物、言語は日本そのものなのだが、男しか存在しないという異様な世界だ。
そんな国の一つ、トウキョウの街道に転がっていた奏多を拾ったのは、株式会社ヒーロー戦隊の社長だった。
あれよあれよという間に魔法性年ドスケベピンクという女装ヒーローにさせられた奏多だが、その仕事は悪を倒すことではない。
悪と一緒に、スケベなことをするのが目的なのだ。
古今東西の異世界ヒーローを集めた株式会社ヒーロー戦隊、略してヒロセン。そして、同じく古今東西の異世界ヴィランを集めた株式会社悪事千里、略してアクセン。そんな二つの会社が手を組み、とある深夜番組を放送している。深夜だというのに視聴率はかなりのもので、毎回トレンドワードにもあがる人気ぶりだ。
その番組こそ、正義と悪の性なる戦い、『ヒロピンアラカルト』である。
戦いは全て性行為に関連するもの、相手を含め周りの人や物を傷つけない、敢えてキャラ付けは行わず基本的に素の性格で出演すること、といった様々な制約の元、スケベで淫らな正義と悪の交わりが放映されている。ここは異世界、何でもありなのだ。
なお、それぞれのペアは固定されており、毎回ランキングが発表されている。上に行く程待遇から何からよくなっていくのだが、奏多は残念なことに最下位から上に上がったことが一度もなかった。テレビで発表されるのはトップ5までではあるが、会社から告げられるランクはいつも同じでその度に意気消沈してしまう。
美形が多いヒロセンの中で没個性な平凡な容姿、あまりにも早い即堕ち、似合わない女装、毎度のおもらし……と、奏多の中で様々な理由が浮かび上がる。
「(……いや、考えるだけ虚しくなるからやめよ……)それにしても、クロさんはすごいよな……。不動のランキング1位なのに、最下位の俺のことまで気にかけてくれてさ。普通だったら馬鹿にしてきてもおかしくないのに」
「いやいや、そんなんで馬鹿にするわけないだろ? どんだけ嫌な奴なんだよ、オレ」
クロことクロヴィス・ショコラは、快活に笑いながら奏多の背を軽く叩いた。さらさらの茶髪と垂れた緋色の瞳、整った甘いマスクは誰もが見惚れてしまう美貌だ。快楽ハニーというヒーロー名を持つクロヴィスは、毎度際どい衣装に身を包んでは相手のヴィランに様々なプレイで犯されている。
変身して女物の衣装になることは、奏多にとっては女装でしかないが、そもそも女の概念がないこの世界では至って普通に受け入れられている。魔法性年のあの服だけでも恥ずかしいのに、クロヴィスが着るような透け透けのベビードールや触手服は見ているだけでも恥ずかしすぎて駄目だった。
「(そう……、恥ずかしくても、せめて俺もクロさんのように、カメラを意識しながら立ち回って即堕ちしないようにしたいのに。ギルさんとエッチするとすぐ気持ちよくなって、馬鹿みたいにがっついてはしたない言葉ばかり叫んで……っ。挙げ句の果てにお漏らし癖がついたのかいつも漏らしちゃうし……。俺は、ギルさんのこと、すごく好きだけど……、迷惑かけたくないから相方解消した方がいいんじゃないかな……)」
「奏多? おーい、聞いてっか?」
「え?」
「やっぱ考え込んでたか。お前にお客さん。ほら、あっちで呼んでるから行ってこいよ」
「お客……?」
クロヴィスに言われるがまま視線を向けると、そこにはアクセンのギルバート・キッシュが青い薔薇の花を背景にして立っていた。もちろん花は完全に幻覚だ。クロヴィスとは方向性が違う冷たい美貌に、心臓が甘くきゅうきゅうと鳴き出してしまう。
「ギ、ギルさん! 珍しいね、ヒロセンまで来るの……。何か急ぎの用事?」
「ああ。このような話は早い方がいいからな」
「このような、って……」
高揚した気分が、足取りと共に沈んでいく。ついさっき自分でも考えてしまった、相方解消の話。もしかすると彼の方からされるのかもしれない、と。緊張で表情が固くなってしまう。
「せ、せめて、他に誰もいないところで……」
「無論、そうするつもりだ。応接室は空いているか」
「……うん。案内するね」
なるべく気取られないよう、いつも通りを装って。ギルバートに申し訳なさを感じさせては駄目だ、笑って、今までありがとうと伝えなければ。
「(俺には勿体ないくらいだもんな、ギルさんは。インラーン帝国の幹部ってだけでもすごいのに、ずっと最下位の俺とヤってくれて……。絶対泣かないようにしないと)」
「はああああぁ…………」
「んな、おっもい溜息吐くなって。別にトチってたりしてなかったじゃんか」
隣の席の先輩からの慰めに、唸りながら顔を上げる。こればかりは毎度のことながらなかなか立ち直れない。
「してない、けど……。俺、また……粗相しちゃったし、絶対ギルさんにドン引かれた……」
「あいつだってお前の中にションベンしてただろ。おあいこおあいこ。ほら、元気出せって。魔法性年がめそめそしてたら駄目だろ?」
「い、今は別に変身してないから……!」
小森奏多、25歳。
階段から足を踏み外したのが、日本で生きていた頃の最後の記憶だ。
目を覚ませば、そこは日本に似た異世界……ロエミノの国だった。街並みや食べ物、言語は日本そのものなのだが、男しか存在しないという異様な世界だ。
そんな国の一つ、トウキョウの街道に転がっていた奏多を拾ったのは、株式会社ヒーロー戦隊の社長だった。
あれよあれよという間に魔法性年ドスケベピンクという女装ヒーローにさせられた奏多だが、その仕事は悪を倒すことではない。
悪と一緒に、スケベなことをするのが目的なのだ。
古今東西の異世界ヒーローを集めた株式会社ヒーロー戦隊、略してヒロセン。そして、同じく古今東西の異世界ヴィランを集めた株式会社悪事千里、略してアクセン。そんな二つの会社が手を組み、とある深夜番組を放送している。深夜だというのに視聴率はかなりのもので、毎回トレンドワードにもあがる人気ぶりだ。
その番組こそ、正義と悪の性なる戦い、『ヒロピンアラカルト』である。
戦いは全て性行為に関連するもの、相手を含め周りの人や物を傷つけない、敢えてキャラ付けは行わず基本的に素の性格で出演すること、といった様々な制約の元、スケベで淫らな正義と悪の交わりが放映されている。ここは異世界、何でもありなのだ。
なお、それぞれのペアは固定されており、毎回ランキングが発表されている。上に行く程待遇から何からよくなっていくのだが、奏多は残念なことに最下位から上に上がったことが一度もなかった。テレビで発表されるのはトップ5までではあるが、会社から告げられるランクはいつも同じでその度に意気消沈してしまう。
美形が多いヒロセンの中で没個性な平凡な容姿、あまりにも早い即堕ち、似合わない女装、毎度のおもらし……と、奏多の中で様々な理由が浮かび上がる。
「(……いや、考えるだけ虚しくなるからやめよ……)それにしても、クロさんはすごいよな……。不動のランキング1位なのに、最下位の俺のことまで気にかけてくれてさ。普通だったら馬鹿にしてきてもおかしくないのに」
「いやいや、そんなんで馬鹿にするわけないだろ? どんだけ嫌な奴なんだよ、オレ」
クロことクロヴィス・ショコラは、快活に笑いながら奏多の背を軽く叩いた。さらさらの茶髪と垂れた緋色の瞳、整った甘いマスクは誰もが見惚れてしまう美貌だ。快楽ハニーというヒーロー名を持つクロヴィスは、毎度際どい衣装に身を包んでは相手のヴィランに様々なプレイで犯されている。
変身して女物の衣装になることは、奏多にとっては女装でしかないが、そもそも女の概念がないこの世界では至って普通に受け入れられている。魔法性年のあの服だけでも恥ずかしいのに、クロヴィスが着るような透け透けのベビードールや触手服は見ているだけでも恥ずかしすぎて駄目だった。
「(そう……、恥ずかしくても、せめて俺もクロさんのように、カメラを意識しながら立ち回って即堕ちしないようにしたいのに。ギルさんとエッチするとすぐ気持ちよくなって、馬鹿みたいにがっついてはしたない言葉ばかり叫んで……っ。挙げ句の果てにお漏らし癖がついたのかいつも漏らしちゃうし……。俺は、ギルさんのこと、すごく好きだけど……、迷惑かけたくないから相方解消した方がいいんじゃないかな……)」
「奏多? おーい、聞いてっか?」
「え?」
「やっぱ考え込んでたか。お前にお客さん。ほら、あっちで呼んでるから行ってこいよ」
「お客……?」
クロヴィスに言われるがまま視線を向けると、そこにはアクセンのギルバート・キッシュが青い薔薇の花を背景にして立っていた。もちろん花は完全に幻覚だ。クロヴィスとは方向性が違う冷たい美貌に、心臓が甘くきゅうきゅうと鳴き出してしまう。
「ギ、ギルさん! 珍しいね、ヒロセンまで来るの……。何か急ぎの用事?」
「ああ。このような話は早い方がいいからな」
「このような、って……」
高揚した気分が、足取りと共に沈んでいく。ついさっき自分でも考えてしまった、相方解消の話。もしかすると彼の方からされるのかもしれない、と。緊張で表情が固くなってしまう。
「せ、せめて、他に誰もいないところで……」
「無論、そうするつもりだ。応接室は空いているか」
「……うん。案内するね」
なるべく気取られないよう、いつも通りを装って。ギルバートに申し訳なさを感じさせては駄目だ、笑って、今までありがとうと伝えなければ。
「(俺には勿体ないくらいだもんな、ギルさんは。インラーン帝国の幹部ってだけでもすごいのに、ずっと最下位の俺とヤってくれて……。絶対泣かないようにしないと)」
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