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策略トリップ★四面楚歌
1:ルゥリカワとナルーミの煩悶
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『おはよう、ルゥリカワ。今日は隣町のマルシャスでサグリラム舞踏会が行われるんだろう? 赴くことは出来んが、応援しているぞ』
「…………おはよう、ゴーシュ」
『どうしたルゥリカワ、体調でも悪いのか?』
「いや、大丈夫だ。少し考え事をしていただけだから、心配する必要はないぞ」
『そうか。……今日の朝食はお前が好きな物にしておいた。準備が出来たら降りてこい』
「ああ、そうするよ。ありがとう、ゴーシュ」
宿屋の主であるゴーシュのモーニングコールから、ルゥリカワの朝は始まる。かちゃり、と備え付けの通信具を置いたルゥリカワは、憂いを秘めた紫の瞳を太陽の光が射し込んでくる窓へと向けた。温かな光が窓の傍に置いている小さなサボテンを優しく照らす。鉢を踏まれかけて怒ったこともあったな、と脳裏に浮かぶのは愛しい彼の姿だ。
……ルゥリカワが望まずとも一週間に一回は勝手に開け放たれていた窓だが、この一ヶ月間、それが開かれることはなかった。
強姦紛いの関係から始まり、何度も身体を重ね、とある出来事によって恋人同士となれた義賊のナルーミ。恋人となる前から頻繁に窓から侵入して来ていたというのに、想いが通じ合った日からぱたりと音沙汰がなくなってしまったのだ。会いに来ないのなら自分が動けばいい話なのだが、どうも躊躇してしまう。勿論、嫌いになったわけではない。胸を燻らせる温かい炎は煌々と燃えている。
……理由としてあげるならば、ただ一つ。
「(ナルーミと会えたとして、一体、どんな風に接すればいいのだろう……)」
身体の交わりから始まってしまった関係故に、ルゥリカワは『恋』というものに対して戸惑いの感情を抱いていた。これまで、会えば即セックス、といった関係だったのだ。世の恋人のように愛を囁き合うところを想像すると、無性に恥ずかしく、むす痒くなってしまう。そうして、悶々と考えている内に結果として時間だけが過ぎていってしまっているのである。
会いたい、触れたい、繋がりたい。そういった気持ちはとめどなく溢れてくるのだが、最後の一歩がどうしても踏み出せない。
折角恋人になれたのにな、とルゥリカワは小さく独りごちる。
「……っと、そろそろ準備をしないと。朝食を食べる時間がなくなってしまう」
ばたばたと慌ただしく準備を始めたルゥリカワの脳内はすぐに踊りのことへと切り替わったが、心の中はナルーミに対する恋情で完全に染まりきっていた。それに気付かないフリをして、ルゥリカワはシンプルな普段着に着替え、身なりを整えると、踊り子の衣装等が詰められた布の鞄を肩から下げ、食堂へと足を早めていった。
──同時刻、砂漠にひっそりと存在する洞窟にて。
むくりと上体を起こしたナルーミは、中心が熱を持っていることに気が付いて自嘲めいた溜息を吐き出した。
「……夢精しなくなっただけいいけどぉ」
薄いベージュのアラビアンパンツは、一部分だけうっすら濡れてテントを張っている。ここ最近、朝勃ちが通常運転になりつつあるくらいには、ナルーミはルゥリカワに飢えていた。
これまでルゥリカワと会う度にセックスしてきたからか、あの快楽は自分の身体が嫌というほど覚えてしまっている。夢の中であられもないルゥリカワを組み敷くのは、一体これで何度目だろうか。現実の世界でもそう出来ればいいのだが、『恋人』という関係がナルーミの足を止めてしまう。会って、身体を繋げるだけならば今までにも幾度となくヤってきた。だが、恋人となった今、逆にどう接すればいいのか分からなくなってしまったのだ。元々、愛を囁くキャラではないし、だからといってセックスだけ強要する獣に戻りたいわけでもない。
どうすっかなぁ、と考えつつも、右手は勝手に下肢へと伸びていた。パンツをずらして取り出した屹立は既に臨戦態勢だ。意識せずとも脳内に浮かぶルゥリカワの痴態に、勃起した性器からはだらだらと先走りが溢れてくる。竿を強く扱いて先端に爪を立てると、呆気なく白濁を吐き出した。どろりと濃いそれを拭う度に、何とも空しい気分になってしまう。
「(……ったく、オレともあろうもんが、情けねぇ)」
避けてばかりではいけない。折角想いが通じ合ったのに、このまま一人で自慰を続けるのはあまりにも虚しすぎる。
さっさと後始末を済ませたナルーミは、砂漠の民の一般的で簡素な服を身に着け、ターバンを雑に頭に巻いた。装身具は必要最低限、首飾りのみに留める。まだ太陽が昇っている時分に町に繰り出す時は、目立たないようにするためいつもこのスタイルだ。最後に口元を覆い隠す布を着け、ナルーミは何かを決意したような表情で洞窟の外へ向かって歩き始めた。
「…………おはよう、ゴーシュ」
『どうしたルゥリカワ、体調でも悪いのか?』
「いや、大丈夫だ。少し考え事をしていただけだから、心配する必要はないぞ」
『そうか。……今日の朝食はお前が好きな物にしておいた。準備が出来たら降りてこい』
「ああ、そうするよ。ありがとう、ゴーシュ」
宿屋の主であるゴーシュのモーニングコールから、ルゥリカワの朝は始まる。かちゃり、と備え付けの通信具を置いたルゥリカワは、憂いを秘めた紫の瞳を太陽の光が射し込んでくる窓へと向けた。温かな光が窓の傍に置いている小さなサボテンを優しく照らす。鉢を踏まれかけて怒ったこともあったな、と脳裏に浮かぶのは愛しい彼の姿だ。
……ルゥリカワが望まずとも一週間に一回は勝手に開け放たれていた窓だが、この一ヶ月間、それが開かれることはなかった。
強姦紛いの関係から始まり、何度も身体を重ね、とある出来事によって恋人同士となれた義賊のナルーミ。恋人となる前から頻繁に窓から侵入して来ていたというのに、想いが通じ合った日からぱたりと音沙汰がなくなってしまったのだ。会いに来ないのなら自分が動けばいい話なのだが、どうも躊躇してしまう。勿論、嫌いになったわけではない。胸を燻らせる温かい炎は煌々と燃えている。
……理由としてあげるならば、ただ一つ。
「(ナルーミと会えたとして、一体、どんな風に接すればいいのだろう……)」
身体の交わりから始まってしまった関係故に、ルゥリカワは『恋』というものに対して戸惑いの感情を抱いていた。これまで、会えば即セックス、といった関係だったのだ。世の恋人のように愛を囁き合うところを想像すると、無性に恥ずかしく、むす痒くなってしまう。そうして、悶々と考えている内に結果として時間だけが過ぎていってしまっているのである。
会いたい、触れたい、繋がりたい。そういった気持ちはとめどなく溢れてくるのだが、最後の一歩がどうしても踏み出せない。
折角恋人になれたのにな、とルゥリカワは小さく独りごちる。
「……っと、そろそろ準備をしないと。朝食を食べる時間がなくなってしまう」
ばたばたと慌ただしく準備を始めたルゥリカワの脳内はすぐに踊りのことへと切り替わったが、心の中はナルーミに対する恋情で完全に染まりきっていた。それに気付かないフリをして、ルゥリカワはシンプルな普段着に着替え、身なりを整えると、踊り子の衣装等が詰められた布の鞄を肩から下げ、食堂へと足を早めていった。
──同時刻、砂漠にひっそりと存在する洞窟にて。
むくりと上体を起こしたナルーミは、中心が熱を持っていることに気が付いて自嘲めいた溜息を吐き出した。
「……夢精しなくなっただけいいけどぉ」
薄いベージュのアラビアンパンツは、一部分だけうっすら濡れてテントを張っている。ここ最近、朝勃ちが通常運転になりつつあるくらいには、ナルーミはルゥリカワに飢えていた。
これまでルゥリカワと会う度にセックスしてきたからか、あの快楽は自分の身体が嫌というほど覚えてしまっている。夢の中であられもないルゥリカワを組み敷くのは、一体これで何度目だろうか。現実の世界でもそう出来ればいいのだが、『恋人』という関係がナルーミの足を止めてしまう。会って、身体を繋げるだけならば今までにも幾度となくヤってきた。だが、恋人となった今、逆にどう接すればいいのか分からなくなってしまったのだ。元々、愛を囁くキャラではないし、だからといってセックスだけ強要する獣に戻りたいわけでもない。
どうすっかなぁ、と考えつつも、右手は勝手に下肢へと伸びていた。パンツをずらして取り出した屹立は既に臨戦態勢だ。意識せずとも脳内に浮かぶルゥリカワの痴態に、勃起した性器からはだらだらと先走りが溢れてくる。竿を強く扱いて先端に爪を立てると、呆気なく白濁を吐き出した。どろりと濃いそれを拭う度に、何とも空しい気分になってしまう。
「(……ったく、オレともあろうもんが、情けねぇ)」
避けてばかりではいけない。折角想いが通じ合ったのに、このまま一人で自慰を続けるのはあまりにも虚しすぎる。
さっさと後始末を済ませたナルーミは、砂漠の民の一般的で簡素な服を身に着け、ターバンを雑に頭に巻いた。装身具は必要最低限、首飾りのみに留める。まだ太陽が昇っている時分に町に繰り出す時は、目立たないようにするためいつもこのスタイルだ。最後に口元を覆い隠す布を着け、ナルーミは何かを決意したような表情で洞窟の外へ向かって歩き始めた。
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