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策略トリップ★四面楚歌
5:サグリラム舞踏会
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夜の帳が降り、美しき蝶達が舞うサグリラム舞踏会の始まりを告げる。
赤い天鵞絨の幕で囲まれた円形のホール内は、マルシャスを始め様々な町からやって来た観客達で溢れ返っていた。見られてナンボのこの世界、これくらいで緊張する程メンタルは弱くない。
前回優勝者としてトップバッターを飾ったルゥリカワは、いつも通りの静かで流麗な舞を完璧に踊りきった。四方から飛び交ってくる賞賛の声に笑顔で応え、ステージを後にする。バックステージへと引っ込むと、後に控える踊り子達がルゥリカワに尊敬の眼差しを向けてきた。
──ただ一人、あの緑青色を除いて。
並べられた椅子の端っこに座り、水分補給をしている緑青の踊り子は、黒く長いローブを羽織ったままぼんやりと宙を見つめていた。アンクレットをしゃらりと鳴らしながら近付くと、流石の彼もルゥリカワへと視線を向ける。
「……何か用ですか」
「私の踊りは素晴らしかっただろう? 見ていなかったとは言わせんぞ」
「あー……」
面倒くさそうに頭をかいた緑青の踊り子は、やがてぽつりと感想を口にした。
「欲求不満という感じでしたね」
「よっ……!?」
その答えは、ルゥリカワが望んでいたものとはあまりにもかけ離れていた。予想外の返答にかあっと顔が熱くなってしまう。 だって、間違ってはいないのだ。ナルーミから愛されたくて堪らない身体は、ずっと熱を溜め込んでいるのだから。
「……そ、そんなわけないだろう……!」
「顔、真っ赤ですよ?」
「身体を動かして熱くなっているだけだ」
「ふうん……。まあ、そういうことにしてあげますよ」
ふと。何か悪戯を思いついたかのようにうっすら口角を歪めた彼は、水を持っていない方の手をおもむろに伸ばしてくる。
すぐに反応が出来なかったのが、災いした。
「っひ……!?」
「んー、本当に熱くなってますね」
あろうことか、彼の手がルゥリカワの股間にぴっとり触れてきたのだ。しかも軽く揉んでくるというおまけ付きで。
唐突に性感帯を責められたせいで、顔どころか全身が熱くなってしまう。慌てて離れようとしたが、本格的にやわやわと揉み始めた彼の手がそれを許さない。周りの踊り子達とは距離がある上、ステージ袖は薄暗いためバレてはいないが、ここで変に声を出してしまったら確実にアウトだ。
「踊りながら半勃ちしていたの、気付いてなかったんですか?」
「ん、っう……、やめ、ろ、この、青錆……っ」
「錆だなんて酷いですね。……ああ、完全に勃起してしまったら、こんな小さな布じゃ隠しきれないでしょうね」
「ぐ、っ……、変態か、お前は……!」
「舞台でおっ勃ててる貴方の方が変態ですよ」
「ひぅ、んっ」
ピンッ、と膨らんだ性器を指で弾いたかと思うと、何事もなかったかのように定位置に戻って水を啜る緑青……改め青錆の踊り子。呆気なく終わった愛撫だが、ルゥリカワのそれは水色の布地を緩く押し上げるだけでなく、一部分だけ濃く色を変えてしまっていた。
こんなはしたない格好、周りにバレてしまったら。
赤面すればいいのか青白くなればいいのか分からない脳が混乱した末に出した結論は、とにかく一刻も早く着替えることであった。替えの踊り子衣装を持ってきていてよかったと切に思う。
「後で覚えていろよ、青錆……!」
「……錆じゃありませんよ。俺は蜘蛛です」
そんな会話になっていない言葉をぶつけた後、ルゥリカワは羽衣で前を隠しつつ控え室に向かって走り去っていった。
*****
──どうにか自身の昂ぶりを鎮め、新しい衣装を身につけて戻ってきた頃には、既に最後の踊り子がステージに立っていた。こんなに時間がかかってしまったのは、偏に自慰がなかなか終わらなかったせいである。あれ以来碌に慰めてこなかったからか、衝動を止められなかった。大会中だというのに裏でこんなことを、と羞恥に苛まれながらもトリを飾る踊り子を見やる。
「っ、あいつ……!」
黄色の淡いライトに照らされていたのは、あの青錆の踊り子。もさっとしたローブは既に脱ぎ捨ててあり、ほっそりとした肢体に纏うのは何とも妖艶な衣装だった。
上半身は装身具以外身につけておらず、宝石を模したガラス玉が幾重にも連なった首飾りがひときわ際立つ。更に胸には挟むタイプのニップルリング。その銀の輪っかからぶら下がる数本の鎖の先では、蜘蛛をモチーフにした銀細工が煌めく。
下肢を覆う黄緑色のパレオは足首までの長さがあるものの、深いスリットから覗く白さについ目がいってしまう。うっすらと透けているその下はどうやら紐パンのようだ。パレオの上にしゃらしゃらとした蜘蛛の巣状の飾りを着けてはいるものの、隠すといった効力は持っていない。
ルゥリカワとて露出が高い衣装を着てきた自覚はあれど、ここまでの物は着るどころか手にしたことさえなかった。思わずぽうっと見惚れてしまうルゥリカワの視線に気付いたのか、彼がふっと顔を向けてくる。
その表情は、まるで。
獲物を前にした、蜘蛛のようであった。
「It's show time」
鋭く響いた聞き慣れない言葉と共に、激しくスピーディな音楽がホール中に響き渡る。
凪いだ湖面のような踊りを得意とするルゥリカワとは真逆の、沸騰したマグマのような、情熱的な動き。それでいて手足はしなやかに伸び、右に左にと忙しなく動いているものの暑苦しさはまるで感じない。かと思えば静かにゆっくりと舞い始め、そうして溜めた後に勢いよく腕を振り上げてキラキラとした汗を散らす。
……巣を張り、獲物を待ち、捕食する。青錆の言っていた蜘蛛という言葉がルゥリカワの脳内でリフレインする。
「……本当に、蜘蛛なのだな……」
小さくぽつりと落とした声は、割れんばかりの拍手喝采によって誰に届くでもなく消えていった。
赤い天鵞絨の幕で囲まれた円形のホール内は、マルシャスを始め様々な町からやって来た観客達で溢れ返っていた。見られてナンボのこの世界、これくらいで緊張する程メンタルは弱くない。
前回優勝者としてトップバッターを飾ったルゥリカワは、いつも通りの静かで流麗な舞を完璧に踊りきった。四方から飛び交ってくる賞賛の声に笑顔で応え、ステージを後にする。バックステージへと引っ込むと、後に控える踊り子達がルゥリカワに尊敬の眼差しを向けてきた。
──ただ一人、あの緑青色を除いて。
並べられた椅子の端っこに座り、水分補給をしている緑青の踊り子は、黒く長いローブを羽織ったままぼんやりと宙を見つめていた。アンクレットをしゃらりと鳴らしながら近付くと、流石の彼もルゥリカワへと視線を向ける。
「……何か用ですか」
「私の踊りは素晴らしかっただろう? 見ていなかったとは言わせんぞ」
「あー……」
面倒くさそうに頭をかいた緑青の踊り子は、やがてぽつりと感想を口にした。
「欲求不満という感じでしたね」
「よっ……!?」
その答えは、ルゥリカワが望んでいたものとはあまりにもかけ離れていた。予想外の返答にかあっと顔が熱くなってしまう。 だって、間違ってはいないのだ。ナルーミから愛されたくて堪らない身体は、ずっと熱を溜め込んでいるのだから。
「……そ、そんなわけないだろう……!」
「顔、真っ赤ですよ?」
「身体を動かして熱くなっているだけだ」
「ふうん……。まあ、そういうことにしてあげますよ」
ふと。何か悪戯を思いついたかのようにうっすら口角を歪めた彼は、水を持っていない方の手をおもむろに伸ばしてくる。
すぐに反応が出来なかったのが、災いした。
「っひ……!?」
「んー、本当に熱くなってますね」
あろうことか、彼の手がルゥリカワの股間にぴっとり触れてきたのだ。しかも軽く揉んでくるというおまけ付きで。
唐突に性感帯を責められたせいで、顔どころか全身が熱くなってしまう。慌てて離れようとしたが、本格的にやわやわと揉み始めた彼の手がそれを許さない。周りの踊り子達とは距離がある上、ステージ袖は薄暗いためバレてはいないが、ここで変に声を出してしまったら確実にアウトだ。
「踊りながら半勃ちしていたの、気付いてなかったんですか?」
「ん、っう……、やめ、ろ、この、青錆……っ」
「錆だなんて酷いですね。……ああ、完全に勃起してしまったら、こんな小さな布じゃ隠しきれないでしょうね」
「ぐ、っ……、変態か、お前は……!」
「舞台でおっ勃ててる貴方の方が変態ですよ」
「ひぅ、んっ」
ピンッ、と膨らんだ性器を指で弾いたかと思うと、何事もなかったかのように定位置に戻って水を啜る緑青……改め青錆の踊り子。呆気なく終わった愛撫だが、ルゥリカワのそれは水色の布地を緩く押し上げるだけでなく、一部分だけ濃く色を変えてしまっていた。
こんなはしたない格好、周りにバレてしまったら。
赤面すればいいのか青白くなればいいのか分からない脳が混乱した末に出した結論は、とにかく一刻も早く着替えることであった。替えの踊り子衣装を持ってきていてよかったと切に思う。
「後で覚えていろよ、青錆……!」
「……錆じゃありませんよ。俺は蜘蛛です」
そんな会話になっていない言葉をぶつけた後、ルゥリカワは羽衣で前を隠しつつ控え室に向かって走り去っていった。
*****
──どうにか自身の昂ぶりを鎮め、新しい衣装を身につけて戻ってきた頃には、既に最後の踊り子がステージに立っていた。こんなに時間がかかってしまったのは、偏に自慰がなかなか終わらなかったせいである。あれ以来碌に慰めてこなかったからか、衝動を止められなかった。大会中だというのに裏でこんなことを、と羞恥に苛まれながらもトリを飾る踊り子を見やる。
「っ、あいつ……!」
黄色の淡いライトに照らされていたのは、あの青錆の踊り子。もさっとしたローブは既に脱ぎ捨ててあり、ほっそりとした肢体に纏うのは何とも妖艶な衣装だった。
上半身は装身具以外身につけておらず、宝石を模したガラス玉が幾重にも連なった首飾りがひときわ際立つ。更に胸には挟むタイプのニップルリング。その銀の輪っかからぶら下がる数本の鎖の先では、蜘蛛をモチーフにした銀細工が煌めく。
下肢を覆う黄緑色のパレオは足首までの長さがあるものの、深いスリットから覗く白さについ目がいってしまう。うっすらと透けているその下はどうやら紐パンのようだ。パレオの上にしゃらしゃらとした蜘蛛の巣状の飾りを着けてはいるものの、隠すといった効力は持っていない。
ルゥリカワとて露出が高い衣装を着てきた自覚はあれど、ここまでの物は着るどころか手にしたことさえなかった。思わずぽうっと見惚れてしまうルゥリカワの視線に気付いたのか、彼がふっと顔を向けてくる。
その表情は、まるで。
獲物を前にした、蜘蛛のようであった。
「It's show time」
鋭く響いた聞き慣れない言葉と共に、激しくスピーディな音楽がホール中に響き渡る。
凪いだ湖面のような踊りを得意とするルゥリカワとは真逆の、沸騰したマグマのような、情熱的な動き。それでいて手足はしなやかに伸び、右に左にと忙しなく動いているものの暑苦しさはまるで感じない。かと思えば静かにゆっくりと舞い始め、そうして溜めた後に勢いよく腕を振り上げてキラキラとした汗を散らす。
……巣を張り、獲物を待ち、捕食する。青錆の言っていた蜘蛛という言葉がルゥリカワの脳内でリフレインする。
「……本当に、蜘蛛なのだな……」
小さくぽつりと落とした声は、割れんばかりの拍手喝采によって誰に届くでもなく消えていった。
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