天邪鬼盗賊と傾国の踊り子〜パラレルワールドキューピッド〜

桜羽根ねね

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策略トリップ★四面楚歌

4:たっぷりのキスを添えて

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 ──ルゥリカワが緑青の踊り子とエンカウントした一部始終を、ナルーミは苛々した様子を隠そうともせずに二階の窓から見下ろしていた。

 踊り子である彼がマルシャスに行くことは調べ済みだったため、先回りして宿を取ったのだが、あまり見たくない場面を見てしまった。内容はともかく、あんな近くで親しげに話していた男に嫉妬の念が湧く。実際はそこまでフレンドリーではなかったのだが、ルゥリカワ不足な今のナルーミには敵としか認識出来なかった。
 自分の心の狭さに自嘲している暇はない。今はともかく、サグリラム舞踏会に優勝するであろうルゥリカワと、どうやって恋人らしい行為になだれ込もうかと考えるだけで精一杯だ。

 はぁ、と吐かれた短い溜息は、

「ほう! この世界にも神宮寺がいるのだな! こっちでは短髪なのか……。短い髪の神宮寺もなかなか格好いいではないか」
「紫苑ちゃん、俺の前で惚気るないでくれる?」
「ああ、すまんね。可愛がっていた後輩だから、つい、な。格好よくて、それでいて大好きなのはお前だけだぞ、理玖」
「ん、あんま嫉妬させないでよね」

 すぐ隣から聞こえてきた声によって霧散した。

「………………は?」
「久しぶりだな、ナルーミ!」
「随分ヘタレになってるみたいだから、お手伝いしに来てあげたよ」
「はあああああああああぁ!!?」

 まるで魔法のように現れた二人は、ナルーミとルゥリカワが付き合うきっかけとなった人間達だ。名前がほぼ一致している上に容姿も似通っている、異世界の住人。もう会うことはないだろうと思っていたのに、タイミングよく出現した彼等を前にして、ナルーミはただただ驚くことしか出来ない。そんな彼をにっこりと笑顔で見つめる二人は、例によって全裸である。取り敢えず服が必要だと頭の冷静な部分が思考するが、混乱したままの身体は上手く動いてくれない。

「出来ればすぐに服を用意してほしい……って言いたいところだけど、丁度いいからこのままやっちゃおっか。ベッドもあるし」
「む、こんなに早くか……?」
「嫌?」
「嫌ではないが……、うむ、そうだな。早期解決するのはいいことだからな」
「……おい、てめぇら、一体何しに来たんだ。もうこっちのことは関係ないだろ」

 勝手に何事かを始めようとする二人に、どうにかそれだけ伝えると、成海からにやりとした含み笑いが返ってきた。

「折角恋人になれたのに、ルゥリカワちゃんのことを想って朝勃ちして右手のお世話になってるナルーミちゃんが見てられなかったからさ、俺達が実践で教えてあげようと思って来たんだよ」
「なっ、んで、それを……っ!?つーか、ハァ!!? 実践!?」
「そ、実践。紫苑ちゃんと俺のいちゃいちゃっぷりを見て勉強しようね」
「見られるのは恥ずかしいが、お前達のためにこの瑠璃川紫苑、一肌脱いでやるぞ!」
「フフッ、もう脱いじゃってるでしょ、紫苑ちゃん」
「っあ、ん。も……、耳は弱いと言っているだろ……っ、ひゃっ」

 くらり、とした眩暈を感じたのはきっと気のせいではないはずだ。
 唐突に現れたかと思えば、ナルーミの意思などお構いなくいちゃつきだした二人を、胡乱げな瞳で見やる。

 何が実践だ、見せつけてるだけじゃねぇか。

 そう口の中で毒づくも、互いに夢中になっている成海と瑠璃川には届かない。

「……紫苑ちゃん、ベッド座ろっか」
「は、うっ……、だから、みみ……っ」
「ナルーミはちゃーんと見ててね。俺の紫苑ちゃんが蕩けちゃうと・こ・ろ」
「んっ! は、恥ずかしいぞ、理玖……んむっ」

 耳への愛撫から流れるように口付けへとシフトした成海は、何度も何度も軽いキスを瑠璃川へと贈る。後頭部を手で柔く固定し、舌は入れずに柔らかい表面をなぞるように唇を押し付け、ふにふにと優しく甘く食む。流されていた瑠璃川も自分からキスを仕掛けたり、ぺろりと悪戯に舌で舐めたりと、成海の情欲を煽っていく。ちゅ、ちゅ、と控え目に響くリップ音に、止めることを諦めたナルーミはなるようになれとばかりに備え付けの椅子にどかりと座った。
 ナルーミが傍観の姿勢になったのを横目でちらりと確認し、うっそりと笑んだ成海は軽い触れ合いだったそれをやめ、唐突に深く激しく貪りだした。

「ん、ううっ! っは、あ、……っむ!」
「紫苑ちゃん、べろ引っ込めないでよ」
「……ら、らって……、んっ、い、いきなり、だったから……」
「ほら、べーってして? ぺろぺろされるの好きだもんねぇ?」
「…………否定は、しない」

 照れながらも舌をちろりと出した瑠璃川に、成海は迷うことなくかぷりと噛み付いた。咥内に招き入れた熱を、唇で食みながら自らの舌で愛撫する。わざと音を立ててくちゅくちゅと絡ませると、気持ちいいのか瑠璃川の瞳がとろりと蕩けてくる。甘噛みする度にぴくんと反応する感じやすい恋人に、成海の欲は一層高まった。

「っあ……、ふ、りく、ぅ、もっとぉ……」

 物足りない、とでもいうように、されるがままだった舌を深く絡め、じわじわとした快楽に酔っていく。
 口の端からつうっと垂れた唾液をも舐められ、敏感な上顎を擽られ、生理的に唇から溢れる短い嬌声は全て成海に食べられていった。

 いつまでも続くように思われた行為が小さなリップ音と共に終わりを告げた頃には、瑠璃川はくたりと力をなくしてしまっていた。成海に寄りかかって恍惚とした息を吐く彼からは、発情しきった甘い匂いが漂ってくる。瑠璃川のふっくらぽってりと潤んだ唇を指でなぞりながら、成海は目線だけを横へとずらした。

「……こんな風にキスから始まるのが鉄板だよ。愛撫でもいいけどね。ルゥリカワは紫苑ちゃんと似たようなところあるから、ちゅーだけでとろとろになっちゃうかもね」
「…………そーかよ」
「あ、その反応だとあんまりルゥリカワとちゅーしてないでしょ? ヤることヤってるくせに変なとこで初心だよね」
「……、うっせ」

 どこか力なく返してくるナルーミが気になりつつも、成海は物足りなさそうに見上げてくる恋人の額にちゅっと唇を落とした。
 そのまま瞼、鼻、頬、と口付けをしていきながら、後頭部に回していた手をつうっと胸に滑らせる。胸の頂点で主張する淡い色の突起をピンッと弾くと、瑠璃川の口から蜂蜜のような声が零れた。

「ひゃ、んっ……、そこ、くすぐったい……」
「くすぐったく感じるトコは性感帯の素質があるんだよね」
「ふ、うぅ……っ」
「ほら、ぷっくり勃ってきたよ? 紫苑ちゃんに似て可愛い乳首だね」
「りっ……、理玖、やだ、なんか……むずむずして、変になりそ……っ」
「ン、美味しそぉ」
「ひゃうっ!! っあ、んう…っ!!」

 片方の飾りを指でころころと刺激しながら、もう片方をぱくりと唇で咥える成海。舌先でつつくように舐め、咥内でねっとりと味わっていく。こそばゆいだけだったそこは次第に快感を拾い始め、素直な下半身は簡単に反応してしまった。触られてもいないのにむくりと勃起を始めた陰茎からは、透明な雫がぷくりと湧き出てくる。

 早く触って、扱いて、イかせてほしい。……そんな瑠璃川の熱情とは裏腹に、成海は瑠璃川の下肢には手を伸ばさず、ひたすら胸を責め続ける。乳首を弄られるのは気持ちいいが、それだけでイく程開発されているわけではない。たっぷりと時間をかけた口付けや愛撫で蕩けた思考は、自分で触ればいいという考えにすら辿り着けない。瑠璃川は喘ぎながらもうっとりとした瞳を細め、成海に懇願した。

「あ……、りくっ、お願い……、した、触って……」
「下って、この涎だらだら零しちゃってる紫苑ちゃんのおちんちんのこと?」
「……ん、……そ、うだ、とろとろになってる僕のおちんちん、イかせて、理玖……っ」
「……っは、仰せのままにぃ」

 瑠璃川の屹立に柔く手を添えた成海は、そのままくちくちと上下に扱き出す。びくびくと震える瑠璃川からはひっきりなしに甘い声が溢れ、先端からもカウパーがとめどなくが滴ってくる。
 次第に激しくなる水音と共に、限界もじわじわと近づいてきていた。

「あっ、ひゃ、う……っ! も、だめ……ぇ、イっちゃ、う……からぁっ……!」
「イっていーよ、紫苑ちゃん。……ナルーミに、紫苑ちゃんが可愛くイくとこ見てもらわなきゃね」
「ん、うう、っ! ひああああぁっ!!」

 乳首をかぷっと甘噛みされると同時に亀頭を強く擦られ、瑠璃川は白磁のような喉を晒しながら呆気なく果てた。ぱたぱたと散った精液が、瑠璃川の腹や成海の手を白く汚す。

「はぁ、はあ……っ、んぅ……、ふぁ……っ、理玖……っ、ちゅう、ちゅー、したいっ……」
「ほんとちゅーが大好きだね、紫苑ちゃんは」
「んむっ」

 砂糖漬けにされたようなふにゃりとした相貌でキスをねだる恋人に、軽い口付けを何度も贈る。戯れに白く汚れた指を差し出すと、頬を赤く染めながらも猫のようにぺろぺろと舌を這わせる瑠璃川が愛しくて堪らない。

 ……さて、自分も気持ちよくしてもらう前にナルーミの反応を見ておこう。そう思ってナルーミへと視線を向けた成海は、予想外の光景に思わず目を見開いた。面倒くさそうにガン見しているか、若しくは瑠璃川の痴態に股間を膨らませているナルーミの姿しか想像していなかっただけに、つい不服めいた声を発してしまう。

「……ちょっと。何で頭抱えてんの。折角恋人同士のえっちを教えてんのに無視しないでくれる?」
「ん……、ふぁ、理玖のおちんぽ、おっきくなってる……。なあ、舐めていいか……?」
「っ! いいよ、紫苑ちゃん。いっぱい味わってね」

 思考が甘ったるくショートして既に成海のことしか頭にない瑠璃川は、床の上に膝をつけると、嬉しそうに成海の股間へと顔を埋めた。勃起した肉棒にすりすりと頬ずりし、ぴちゃぴちゃちゅぷちゅぷ水音を立てて舐め始める。可愛い奉仕をしてくれる恋人の頭を撫でつつ、成海は今だ頭を抱えたままのナルーミをじとりと睨む。

「……言ってくんないと分からないんだけど? まさかえっちを直視出来ない程ピュアになったとか言わないよね? 紫苑ちゃんとルゥリカワの可愛い絡みを楽しんでたのにさぁ」
「…………す、……ねぇ……」
「聞こえないんだけど?」
「──っ! だからっ!!」

 バッッ、と勢いよく顔を上げたナルーミは、迷子になった子供のような表情をしていた。どうしていいのか分からない、そんな思いを顔に張り付けて、彼は声を絞り出す。

「……キス、したことねぇ」
「…………は?」
「くっそ、自分で言って虚しくなってきやがった……」
「え、うっそ、一回も……?」
「チッ……、ああそーだよ!! 全身舐めまわして突きまくったけど、口にキスは……。だからおめぇらのセックスは参考になんねぇんだよ! 分かったらさっさと帰れガキ共!!」

 半ばヤケクソにそう叫んだナルーミは、そのままの勢いで部屋を出て行ってしまった。
 元から荒療治のつもりだったが、逆効果になってしまったようだ。キスばかり見せつける行為がナルーミの感情を悪い方へと揺さぶってしまったのだろう。

「んー……、どうしよっかなぁ」
「っむ、りきゅ……?」
「……ま、考えるのは紫苑ちゃんとイチャイチャした後でもいっか」

 二人の関係を良くしたいと思う気持ちは変わらないが、今はまず愛しい恋人との触れ合いが最優先である。ギリギリまで昂った身体を鎮めないことには動けそうもない。
 陰茎を頬張りながら自らの乳首とペニスを弄りだした無自覚淫乱な瑠璃川を見下ろし、成海は恍惚とした笑みを浮かべて頬の内側に自身をごりっと擦りつけた。
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