天邪鬼盗賊と傾国の踊り子〜パラレルワールドキューピッド〜

桜羽根ねね

文字の大きさ
18 / 21
策略トリップ★四面楚歌

7:煽ってみよう

しおりを挟む
 場所は変わって、宿の一室。
 ナルーミが今晩泊まるために取った、少し値の張る宿である。
 そのためナルーミ自身がいるのは何の問題もないのだが。今この場には、ナルーミを含め四人の人物がいた。

「んっ、……ちゅ、ぅ、理玖、っ……」
「ッは、紫苑ちゃん、ちゅー、きもちい?」
「ふあっ、んく……っ、きもちいい……。とけてしまいそうだ……」
「……ほら、ナルーミとルゥリカワも。俺達の真似してみなよ」

 立ったままちゅっちゅちゅっちゅキスを交わす二人に既視感を覚えながら、ナルーミはそっと視線を横にずらした。自分と同じようにベッドに腰掛けるルゥリカワは、腕を伸ばせば触れてしまえる距離にいる。こんなに近付いたのは久しぶりで、柄にもなく緊張してしまう。瑠璃川と成海にそれぞれ強制的に拉致され連れて来られたのだが、話そうにもまず目線のやり場に困る。
 乱れた衣装から覗く二つの淡い飾りを彩るリングやら、瑠璃川達の絡みを見てほんのり色づき出した身体やら。何も考えずに暴いて犯して舐め尽くしていた頃がひどく懐かしく感じる。

「ん、むぅ、……ルゥリカワと神宮寺……ジーングゥジのことなら、浮気などではないと、説明しただろう?」
「お互いに恥ずかしがってちゃ、ン、先に進めないよ?」

 キスの合間にそう話しかけてくる瑠璃川達に、二人が返すのは無言の解答。キスどころか向かい合おうともしない彼等に、瑠璃川は「仕方ないな」と息を吐いて成海から身を放した。

「ヘタレなナルーミの代わりに、僕がやってやろうではないか」
「……は、んんっ!?」

 そして、すたすたと近寄ったかと思うと、ルゥリカワの頬を包んで上向かせ、自分は身を屈めてその潤んだ唇をちゅうっと覆った。唇を触れ合わせるだけの可愛らしい口付けをしながら、腰掛けているルゥリカワの膝の上に跨ってしまう。頬に当てていた手は首の後ろへ回し、ぎゅっと抱きつくと、互いの胸や下肢が布越しに擦れて、もどかしい刺激が脳を痺れさせた。

 テクニックがあるわけではない瑠璃川は、ただただ柔らかく食んで唇をふにふにと触れ合わせる。

「んっ、ふ、……ぁ……」

 瑠璃川とのキスはこれが二回目だが、どうも物足りなく感じてしまう。もっと荒々しく、呼吸すら奪われてしまわれそうなほど深く、はしたない音を立てて吸って欲しい。……ナルーミと、キスがしたい。きっとナルーミなら、自分が望む接吻をしてくれるはず。
 段々思考が桃色に染まっていったルゥリカワは、自らも瑠璃川に手を伸ばしてその果実のような唇をねっとり堪能する。なんとなくだが瑠璃川の考えを理解したのだ。手を出してこないのなら嫉妬させてしまおう、という安直な考えが。

 その作戦というべきか分からない行為は実を結ぶことになる、……のだが。

「……ルゥリカワ」
「紫苑ちゃん」

 それぞれの恋人から名を呼ばれ、は、と吐息を零しながら唇を離す。つうっと繋がった細い銀糸はすぐにぷつりと切れてしまった。顎を伝うそれをぺろりと舐めとったルゥリカワは、そこでようやく彼等の方へと意識を向けた。

 そして。

「……は?」
「なっ……!?」

 とろりと溶けていた思考が、一気に覚醒する。
 互いに驚愕して思わずきつく抱き合う瑠璃川達の前には、何かを企んでいるような悪い顔をした男が二人。その手には、ピンク色の何とも卑猥な玩具が握られていた。

 床に無造作に放られているのは、ジーングゥジから渡された布袋。今はぺちゃんこになっている、ということは十中八九中身がそれらだったということだろう。サグリラム舞踏会の優勝賞品に何というものを、という憤りと羞恥が混じった感情が湧き出てくる。そして中身を知っていながら押し付けてきたであろうジーングゥジにも、形容し難い怒りがこみ上げてきた。これは完全に好意ではなく嫌がらせの域だ。

 ふつふつと沸騰する思考に気を取られている内に、ルゥリカワ達は逃げ場を塞がれてしまった。まあ、元からこの状況で逃げようとしても無理な話ではあるのだが。

「ルゥリカワとちゅーするのそんなに好きなら、こっちでもちゅーさせたげるよ、紫苑ちゃん?」
「……悩んでたのが馬鹿らしくなってきたわ。嫌っていう程可愛がってやんよ、ルゥリカワ」

 わざと見せつけられる長くて太いピンク色の物体に、瑠璃川とルゥリカワは身を寄せあったままびくりと震えた。恐怖ではなく、快楽への無自覚な期待からだ。その証拠に、二人の陰茎は布地を押し上げて先端が擦れ合い、萎える気配を見せていない。

「……これは、少し……煽りすぎてしまったか? ジーングゥジではなく僕との触れ合いならそこまで本気にならんと思ったのに……」
「以前も似たようなことがあった気がするがな……」

 ……何にせよ。
 イレギュラーとはいえどナルーミと肌を重ねることが出来るという熱を帯びた期待が、ルゥリカワの胸と下肢を熱くした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい
BL
 若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。  昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。  年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。  リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。  

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

処理中です...