歯車の本

霜山 蛍

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第一章

prologue.2

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 私を構成する人格の全てを、私は知らない。私は数多に存在し、その数と同じだけ、或いはそれ以上か以下かの人格を有している。
 触れられるものは情報――平面上に紡がれる文字列のみである。
 仮に世界が移り変わる一時を垣間見られるとすれば、それは紛う事なき幸福なはずである。変化という不可視の糸が、通俗的でいて、超俗的な創造の社会に捻りを加え、全くそうでないものを普遍へと昇華させ行くのだから。
 だが、幸福を幸福とは素直に感じられないように、その一時もまた、そうは感じられないと思うのが通過儀礼である。変化は罪だと、変化は悪だと見なす老人役人その他大勢とは、いつの時代においても必ず一定数いるものである。神は彼らに五枚目としての役割を授与したらしく、ならば我々はそれを非難する事が与えられた役割なのであろう。幸福を幸福として見なすことのできる一定の数の側というのが、我々のことを指すのであるから。
 であらば、我々における社会――通俗的とも、超俗的とも言い難い――における、過去の捻りの一時を垣間見る権利が我々にはあり、義務がある。
 ならば私は、未来ではなく過去を語ろう。それが道化の心意気であり、義務であり、かつ偽善であるのだから。
 それと共に私は、道化を演じるのではなく、演じきったと証明する必要もまた、存在するのだと。
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