歯車の本

霜山 蛍

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第一章

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 歯車は回る回る、蒸気は踊る。街は灰色空は青、明かりは無色緑は茶。心は純白時々霞色。少年は笑い少女は踊る、男性は叫び女性は嘆く。チクタクチクタク時は止まらぬ、チクタクチクタク空は流れる。日は沈み空は暗黒、街は白色。少年少女は沈黙を描いて男女は矯正を閉鎖に響かす。然れど時は進みを止めず、永遠を進む。
 少女は問う、「貴方ははだぁれ?」
 鏡は答える、「私は貴方」
 鏡は問う、「貴方はだぁれ?」
 少女は答える、「私は貴方」
 幼子の少女は問い続ける、「貴方はだぁれ?」
 鏡は答え続ける、「私は貴方」
 鏡は問い続ける、「貴方はだぁれ?」
 幼子の少女は答え続ける、「私は貴方」
 歯車は止まることを許されず、時もまた許されず。蒸気は空気を荒らし、然れど空気は受け入れる。チクタクチクタク時は進めど少女は問いて鏡は答える。チクタクチクタク鏡は問いて少女は答える。
「今日の天気は雪か?」
「いい酒だ」
 男性は酒に溺れて会話を泳ぐ。然れど会話は男性を攫い、けれど二人は気づかぬ。
「今日は曇りか?」と男性、「歯車は元気だ」と別の男性。
「空はあるか?」と男性、「機関車は時間を行く」と別の男性。
 天気は晴れにて空は青、一人は一人で二人は二人。鏡は鏡で然れど生命を帯びる。魔法陣はゆっくりゆっくり右へと回転し、歯車は左へ回る。銃声が鳴けば鮮血が降り注ぐ。悲鳴を上げれば悲鳴は反響する。時は進む進む、止まることは許されない。歯車も回る回る、止まることが許されない。ある街の一丁目の五番地が誰であろうが、わからぬことはない。個人は個人で人は人。歯車は歯車で人は人。魔法陣はゆっくりゆっくり右へ回転し、時はチクタクチクタク前進む。
 少女は女性で、男性は初老。或いは死して時は止まらぬ。時刻は止まらぬ、歯車も止まらぬ。政治は止まり、然れど流れる雲もまた止まらない。魔物は異形で魔法は妖し。常識は増えど、減りはせぬ。文化は進化し、然れど退化する。空に最早青は無く、霞色は全てを覆う。賃金貧しく心身貧しい。然れど銃は何びとたりとて手放さず、魔法は最早蒸気に遅れなす。誰が呼んだか蒸気機関、魔法の世界は蒸気色、空は霞色。 
 女性は問う、「貴方はだぁれ?」
 鏡は答えず女性は答える、「私は貴方」
 鏡は問わず女性は問う、「貴方はだぁれ?」
 女性は答える、「私は貴方」
 鏡の奥の鏡の女性は爛漫に笑う、然れど女性は歪に微笑む。
 歯車は止まらぬ、時もまた止まらぬ。蒸気は空気を荒らし尽くし、然れどそれでも空気は受け入れる。チクタクチクタク時は進めど女性は問いて女性は答え続ける。鏡は爛漫に笑い、女性は歪に微笑む。止めることはなく、最早日常的行為にて不自然は存在せず。不気味なれど両親は既に居らず。食せども職は無し。されど女性は生き続ける、金品盗めど然れど開示はされぬ。殺傷はせども然れど開示はされぬ。鏡は爛漫に笑い、女性は歪に微笑む。
「今日の天気は雪か?」
「いい酒だ」 
 男性は酒に溺れて虚構と会話す。虚構は虚構で一人は一人。然れどそこに会話あり。
「今日は曇りか?」と男性、「歯車は元気だ」と虚構。
「空はあるか?」と男性、「機関車は時間を行く」と虚構。
 天気は晴れにて空は霞色、一人は一人で虚構は虚構。鏡は鏡で然れど生命を帯びた。魔法陣は依然回り続け、歯車も回り続ける。そうして少年はどこかで生まれ落ち、育ち、問いかける。
「貴方はだぁれ?」
 鏡は答えぬ、然れど映る虚像は微笑みかける。
「僕は貴方」
 少年は答え、そうして虚像はまた微笑む。
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