(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

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貴方と共に歩むには

閑話 ロイド兄

 
 本当にロイドとは久しぶりに会ったな。俺も騎士団の隊長になってから忙しくしていたし、最後に会ったのが家を追い出される前だったはずだから、少なくとも1年以上は経っているのか。

 しかし、ロイドの魔力が少なかった原因が魔力放出障害だったとは。この国だと最近知られ始めた情報、と言うか報告を聞く限りおそらく情報の出所はレイアさん辺りだろう。そもそも俺がこれについて知ったのはギルド長経由だしな。

 さて、ロイドたちとの話も終わったから家に報告に行かなければ。



「俺だ。すまない兄さん。今時間はあるか?」

 家に帰り、最低限の身支度を整えてからすぐに当主の執務室、もとい兄さんの仕事部屋のドアをノックする。すると、数秒もしない内に部屋の中から了承の返事が聞こえて来た。
 俺はその言葉を聞いてから部屋のドアを開け、中に入った。

「お前は、毎度のことだが入室の許可を取る時はしっかり名乗れ。俺以外が中に居た時、恥をかくのはお前だぞ?」
「いや、つい癖で。すまない兄さん」

 騎士団に居る時はしっかり出来ているのだが、どうも家に居る時は気が抜けているというか、リラックスしている所為で忘れがちになる。兄さんが言うように早めに矯正しないと近い内に恥をかくことになりそうだ。

「それで、お前が来たのはロイドとの話し合いの結果についての報告か?」
「ああ、そうだ」

 兄さんはまだ書類の処理をしているので常にこちらに視線を向けることは無い。しかし、時折こちらに視線を向けているので聞き流される、と言うことはなさそうだな。

「話し合いだけど、大体兄さんの予想通りの内容になった。ただ、レイアさんの予定については少しだけ相違点があったけど」
「どの辺りだ?」
「兄さんの予想だと、どこかの侯爵なり公爵の養子になる、だった。しかし実際は完全に独立して爵位を与えられるようだ。それもいきなり伯爵位か侯爵位らしい」

 さすがに独立で爵位を与えられる程とは思っていなかったのか、今まで書類を見ながら話していた兄さんの視線がこちらに向けられた。

「それは本当か?」
「ああ、レイアさん本人が言っていたことだから、ほぼ確実だ。ただ、何事もなければ、とも言っていたから、完全に確実という訳ではないようだったけど」
「何事もなければ、というのはどう言うことだ? まさか公爵に…いや、それはないな。少なくとも公爵になるには血筋が必要である以上、彼女が例外だったとしても不可能だ。と言うことは、……まさか辺境伯!?」
「いやいや、さすがにそれはないと思う。おそらく他の大多数の貴族に反対されたら、伯爵になるとかそんな感じだろうよ。さすがに既に存在する貴族位を増やすようなことは無いと思う」
「ぬ、まあ、そうか。いや…しかし、確かあそこの辺境伯は……」

 何か隣国の辺境伯に気になる所があるのか、少し考え込むような仕草をして兄さんがブツブツ何かを呟いている。

 声を掛けて兄さんの意識をこちらに戻した方が良い様な気もするけれど、少し喉が渇いたので執務机の上に置いてあった飲み物を少しだけ拝借する。
 飲み物は、普通の水だった。出来ればワインなんかが良かったが、さすがに仕事中に飲むものではないから仕方がないか。

「そう言えば」
「何だい兄さん」

 いつの間にか意識がこちらに向いていた兄さんに声を掛けられ咄嗟に返事をした。まだ、飲み物を勝手に拝借したことには気付かれていないようだ。

「ロイドの予定については想定通りだったか?」
「ああ、ロイドについてはほぼそうだった。ただ、レイアさんの方が何とも言えなかったから、おそらくロイドの方もそれに釣られると思う」
「まあ、そうだろうな。とは言え、それもそこまで重要ではないか。……お前から見て彼女、レイアはどう言う人物に見えた?」
「どういうって、そうだなぁ。まあ、少なくともまっすぐ、と言うか結構素直な子だった。少なくとも普段から人を騙したり貶めたりするようなタイプではないな。それに保有魔力故か割と自信家…と言うか、自分の力を信じている感じか。後は相手のことをしっかり見ているようだった。自分が強いからといって慢心するような子でもないな」
「そうか。魔力的にもロイドの相手は大丈夫なのか? ロイドも今だと俺たちと同じくらいの魔力量だろう?」
「あー、それは。はっきり言ってこっちが釣り合っていない。と言うかおそらくレイアさんに釣り合うような奴は居ない。そう断言できるくらいに魔力差があった。貴族主義で無くなったとしても、平民がいきなり王族の婚約者になるだけのことはあるって感じだったな」
「それほどか」

 兄さんはそう呟いてまた書類の方に視線を戻した。いや、別に書類を見ているわけではなさそうだ。考え事か?
 そう思っていると兄さんがいきなり顔を上げこちらを見て来た。

「ああ、そう言えば先程騎士団の方から報告が上がってきている」
「奴ら関係?」
「そうだ。予想通りあの隊の隊員は全員処分の対象になった。その上で剣を振り上げた者は処刑。その他の元隊員に関しても、他の余罪もちらほら出て来たらしい。そのため騎士団内での処分に加え、余罪が多い物は鉱山での強制労働になるそうだ」
「なるほど。それは良かった」

 まあ、妥当か? いや、あいつらの所為で騎士団が受けた風評被害を加味すると少し生温い気もするがこれ以上となると処刑以外なくなるから、これが限界か。
 騎士団でも平民街の見回りを担当している所は無駄に貴族としての誇りが高いからな。それゆえの暴走もよく聞くし、問題が多い。そもそも、そういった隊を構成している隊員は貴族の中でも魔力が低く、それゆえに貴族であることに縋っている者も多い。だからこそ、自分たちが上に立つことに強い意欲を持っていて、それゆえに立場の低い者に対して高圧的に出ることが多い。

 状況が変わった中で、自然にその辺りの意識を改善してくれればいいのだが、残念ながらその辺りが出来ていない連中だったから、被害に遭ったレイアさんには悪いけどちょうどよく排除できる理由を見つけられてよかったとも思う。

 そう少しだけ申し訳なく思いながら、弟の隣に立っている彼女の姿を思い浮かべた。

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