(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

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これから貴方と過ごす場所

閑話 断罪

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 国王視点

 ―――――
 
 私が今この場所に居られるのはあの娘のお陰なのは間違いない。

 幼いころから碌に魔法が使えなかった私が、不運にも国王の地位に就いてしまったのが30を過ぎたころ。今から10年近く前のことだが、当時の王であった父親と時期王と目されていた王太子である兄が何者かによって暗殺された。平和な世になっていたとはいえ、国王の周囲は厳重に守られている中での暗殺だった。
 明らかに内部に協力者がいるのは明確だったが、未だにそれを実行した犯人は捕まっていない。

 そして、唯一王族の地を引いていた私が急遽王の座に座ることになったのだが、当然魔法をまともに使えなかった私が王になったところで付いてくるものは殆どいなかった。
 あのまま、状況が改善していなければ既に王宮は当時あった3大公爵家のどれかに乗っ取られていただろう。有力なのは当時の私へ真っ先に妃を送りつけて来たファニール家あたりか。次点でアガナ家。当時のアイゼンリスト家は影響力が低く無理だったろうが。

 ともかく、あの娘が私の症状を治したことによりそんなことは起こらずに今へ至るのだが。

 アガナは後に起こした問題で消滅し、それにより影響力を増したアイゼンリストも今は伯爵の位だ。今残っている公爵家がファニール以外にないのは少々どころではない問題だが、すぐにどうにか出来る問題ではない。

 私としてはあの娘に公爵の爵位を与えて少しでも均衡を保ちたいところだが、そんなことが無理なのはわかり切っている。あの娘が貴族の社交に向いていないのは話していれば理解できるし、そもそも他の貴族がそれを認めないだろう。無理に爵位を与えてしまえば何が起こるかわからない。
 今回の件に無理やり関わらせることができたため、辺境伯の位を与えるための口実を作ることが出来たが、どうしてもそのことに反発する者が出来るのは仕方がない。

「何故私がこのような処罰を受けなければならないのか」

 未だに、自らが犯した罪を罪として認識できていない男が、そう言葉を漏らす。この場が断罪の場だということ、国王である私の前だというのに、よくそんな言葉を漏らすことが出来ると感心する。それと同時に私が軽く見られていることを実感する。

 秘書として使っていた分には問題ない働きはしていた。ただ、所々ではあるが、不自然な動きをしていたが、仕事の出来を鑑みれば目をつぶれる範囲だった。
 しかし、今の様子を見る限り果たしてあの仕事をこの者が直接やっていたのか疑問しかない。いや、既に一部の仕事は他の者に無理やり押し付け、その成果を自分の物として報告していたのはわかっているのだが。

「この場はお前の言葉を聞くところではない。許可のない発言をするな」
「ふんっ」

 この場に同席している法務官が窘める。それに対し男は悪態をつくことで返事をした。

「お前に対する処罰は既に決まっている。何を言おうともそれに変更はない」
「私を排除したらどうなるかわかりませんよ? それに何をしようグッ!」

 男を拘束している兵士が発言の許可は出していないと、物理的に男の発言を止めた。 

「それについても問題はない。お前が何をしようとしていたかの情報は既に把握している。それに、領地に仕掛けられていた魔術は既に解除済みだ」
「なっ?!」

 自分が捕まった際に交渉で使うつもりだったのか、それともただ被害を出すために設置していたのか、設置された位置を見ればどちらとも言えるだろうが、少なくとも今は交渉のために使うつもりだったのだろう。

「今回の調査でお前の人望の無さが子細わかって愉快な気分だった。そんな中、あそこまで計画を練れたことは称賛に値するが、その熱を別の事に回していればと思うこともある。今更だがな」
「そう思うなら私を王宮から追放した者が無能だったということだ」

 そう零す男を拘束している兵士に指示を出す。これ以上話していても時間の無駄なのは最初から分かっていたことだ。
 指示を聞いた兵士が男の事を無理やり立たせる。

「意図的にスタンピードを起こし、自ら収めていた領地とはいえ多大なる被害を与えたお前に与えられる刑は、処刑以外ない」
「は?」

 男は何を言われたのか理解できないという表情でそう音を漏らした。どうやら自分が犯した罪の重さも自覚がないらしい。

「碌に被害がなかったというのにこの刑は重すぎではないか」
「領地に住む民に多大な被害を与えておいて碌にとは、よく言えるものだな」
「平民がいくら死のうと被害には当たらないだろう? あれは私たち貴族よりも多く存在しているのだから減ったところで問題はないはずだ」

 どうやら考え方が根本的に違うらしい。

「民あっての地、民あっての国だ。それを王である我が蔑ろにすることはない。連れて行け」

 私のその言葉をもって、その男は私の前から姿を消した。これからあの男が連れて行かれるのは独房の中。そしてその先は断頭台になるだろう。



―――――
次話から終章になります
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