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これから貴方と過ごす場所
完了
しおりを挟むあの子に辺境伯を運んでもらったこともあり、日が暮れる前に辺境伯を町のギルドへ運ぶことが出来た。
途中、移動の際に牙が体に食い込んだのか辺境伯が危ない感じのうめき声を上げていたけれど、回復魔法を使ったら収まったから大丈夫だったのでしょう。
そして、町の中に入る前と入ってからギルドに着くまでにも色々あった。
最初はこの子が町に近付いたことによって町の衛兵や兵士が出てきてしまったこと。その所為で町に入る前に足止めを食らってしまったけれど、確かに何の連絡もないまま連れて来てしまったからあの対応は悪くない。あの子は大きさも普通の魔物より大きいし、そのまま町の中へ入れるのも街にいる人たちを無駄に怖がらせるだけなので、今は町の外で待機してもらっている。
それと一応、辺境伯はこの辺りの領主であるわけだから、それがロープで撒かれた状態で運ばれていたら事情を知らない人は驚くだろうし、何事かと思って見に来るのは理解できる。
ただ、事情を聴いてからすぐに解放されたことは理解できなかった。だって、魔物を連れて来た上にこの土地の権力者、しかも領主を魔物にくわえさせて、しかもロープで縛って身動きできないようにしていたのよ。そんなの事情を聞いたくらいで受け入れられるようなものではないと思うのだけど。
まあ、色々聞かれるよりは断然楽だから良いのだけれど、どうも釈然としないところがある。
まあそんな感じで今はギルドの中に入ったところなのだけれど、さすがに目の前にある光景を一切予想していなかった状況に私は少し戸惑いと驚きを隠せなかった。
いや、だって、ギルドに入ったら国王が仁王立ちしているなんて状況、誰が想像できるの? どう考えてもおかしい以外ない光景よね? 途中でギルドの関係者を助けた時にこの後の予定を報告していたから、関係者が辺境伯の受け取りに来ているかもしれないとは思っていたけど、国王本人が来るなんて普通は考えないでしょう。
「……何で貴方がここに居るのです?」
驚きつつも国境であったことの焼き増しのような光景に、やや呆れながらもその一言を捻り出す。
「そろそろ対処が済んでいると思ったからだ。現にその報告をするためにここに来たのだろう?」
「ええ、まぁそうですけど」
ああ、そう言えば国王って、予知の魔法なり能力を持っているのではないかと思う程、昔から勘が良かったわね。それも第六感が優れているとかのレベルではないくらいに。
まあ、そんなことがあったとしても今の状況は説明がつかないのだけどね。
さっき衛兵がすんなり私たちを解放した理由は、ここに国王が居ることで大体察することが出来る。おそらく、事前に国王が話を通していたからだろう。さすがにあの子のことは予想していなかったでしょうけれど。
「まあ、いいです。とりあえずこれを受け取ってください」
「ああ、まさかこれが今回のスタンピードを引き起こしていたとはな」
言葉とは裏腹に国王の表情は一切驚いた感じはなかった。これはどう見ても元から辺境伯が犯人であると確信していたのだろう。まあ、国境の関所の段階で凡そ察していたことではあるのだけどね。
「しかし、どうしてこ奴はこんな状態になっているのだ?」
辺境伯があの子のよだれで酷い状態になっていることを疑問に思っていたらしく国王がそう聞いてきた。
「まあ、運ぶ時に色々ありまして」
「よくわからんが、その辺りは後で聞くことにしよう」
そう言って国王は近くに居た付き人の1人に指示を出した。おそらくその人がこの後私から話を聞くことになるのだろう。
「何故、私がこんな目に合わねばならんのだ」
ロープでぐるぐる巻きにされた上にあの子のよだれでべちょべちょになっている辺境伯が、未だに納得できないといった様子でそう言葉を漏らした。
「どう考えても自業自得だろう」
「うぐっ」
ギルドの床に横たわっていた辺境伯のつぶやきを聞いて、国王はこれ以上辺境伯の口を閉ざさせるためなのか、割かし強めに手に持っていた杖で殴った。そしてその後その杖を魔法で綺麗にしていた。
まあ、今殴ればよだれがついてしまうから仕方ないわよね。
「これで私の役目は終わりですよね?」
「ああ、後日褒賞を与える。それと、契約に関しても後日だな。さすがにここで手続きは出来ん」
「わかりました」
今の段階で契約を履行するのが出来ないのは理解できるので了承する。まだ、辺境伯の席は空いていないし、私が貴族籍に入るにしても手続きがあるから仕方がない。
「では、俺はこれで戻ることにしよう」
国王はそう言って付き人やその他諸々を連れてギルドから出て行った。当然私たちが引きずって来た辺境伯も外に運び出されて行く。
そうして、私が国王から契約によってやらされた事態はこれにて幕を閉じた。
あ、そう言えば、あの子が私に懐いてくれたのなら名前を付けた方が良いと思うのだけど、何て名前にしたらいいかしらね。
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