(完結)婚約破棄ですか…いいでしょう!! おい国王! 聞いていましたね! 契約通り自由にさせてもらいます!!

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
55 / 66
終章

ベッド

しおりを挟む
 
 辺境伯の屋敷が空くまでの期間。辺境伯領の様子を見て回る前に屋敷に持ち込む物などを買うことにした。

 先に買っておけば、屋敷が空き次第運び込めばいいし、特注の物であれば今の内に発注しておけば丁度屋敷が空く位に出来上がるだろう。それに私は空間収納を使えるので、先に物を買いこんでも問題はないのだ。

 そんな訳で、ロイドと一緒に王都にある屋敷関係の物が集まる商店が多く建ち並ぶ場所へ来ていた。

「ロイドは、どういう感じの家具がいいのかしら」
「俺は別にこだわりがあるわけじゃないし、レイアが領主になるわけだから、自由に選べばいいと思うよ」
「それはそうなんだけど、ロイドも一緒に使うわけだからあまり好みではない見た目の家具は使いたくないでしょう?」

 屋敷の構造とか、雰囲気とかはまだわからないから大き目の家具は変えないけれど、小さ目のチェストとかなら買っても大丈夫なはず。

「そうかもしれないけど。それに、他の人が来る場合もあるわけだから、無難な見た目のものがいいんじゃないかな」
「それはわかっているわ。そういうんじゃなくて、私たちの寝室に使う家具のこと。それなら他の人に見られるようなこともないし、自由に選んでもいいでしょ?」

 人が訪れるような場所は無難な見た目の家具の方がいいのはわかる。でも、私室であればその辺を気にするようなことは必要ないわよね。

「ああ、まあそうだね。じゃあやっぱりレイアの好きなように選んだらいいんじゃない?」
「だから、私とロイドの部屋に使う家具を選びたいって言っているのだけど」

 ここまで言わないとわからないのかしら。明言しなかった私も悪いと思うけれど、なんのためにロイドと一緒にこんな場所に来ているのかくらい少しは考えてほしいところね。

「そういうことか。といっても、自分の好みって正直わからないんだよな。昔から俺が使っていた物はおさがりが多かったし、自分で選んだ物ってほとんどなくて」

 そういえばロイドって魔法が使えなかったから立場が弱かったんだったわ。まあ、私も公爵家にいたときは自由に物を選ぶなんてできなかったけれど、養子に入る前は自分で物を選ぶこともあったしその差が大きいかも。

「ならこの際に自分がどういったものが好きなのか、確認してみるのもいいかもしれないわね。これからは身の回りの物をすべて選んでもらうなんてできないだろうし」

 一応私が辺境伯になってロイドはその配偶者になるわけだからその辺りはしっかり把握しておかないといけないと思うのよね。今回は単に私がロイドと一緒に買い物をしたかっただけなのだけど。

「それもそうか。立場を考えるなら、自分のことを他の人に任せるのはよくないよな」
「そうね。他の人に任せっぱなしだと変な物を買わされるかもしれないし、お金の横領とかをされていても気づきづらいから」

 私もその辺はしっかり気を気を付けないとね。ともかく。ロイドが買い物に前向きになってくれたならよかったわ。

 そうしているうちに最初の目的地にしていた家具屋に到着した。

「あの、レイア。ここって…」
「寝室で使う家具を売っているお店ね」

 私たちが最初に訪れたのは王都でも一番か二番目に大きな寝具店。特にベッドを多く扱っているお店だ。
 最初に出てきた店主の案内をそこそこに、私たちは2人で店内に置かれているベッドを見て回ることにした。

「あのレイアさん?」
「ベッドって大事だと思うのよね」

 睡眠のためにも、今後のことを考えても。

「大きい方がいいわよね。ロイドはどう思う?」
「えっと、それは一人で寝るのにも大きい方が快適ってことかな」

 そんなわけないでしょう。まあ、意図はわかっているみたいだけど、焦った表情をしているロイドも悪くないわね。ちょっといじめたくなるわ。

 実のところ、今まで同棲しいている時も一緒のベッドで寝たことはあまりないのよね。日中くつろぐ時なんかは一緒のベッドでくっついたりはしていたのだけど、夜に一緒のベッドで、ってことはほとんどなかったし。

「ロイドは別々のベッドがいいの?」
「え、普通はそうじゃないかな」
「普通って言っても、全員が全員そうというわけではないでしょう?」
「それはそうだけど」
「ロイドは私と一緒のベッドで寝たくないっていうのね」

 少しだけ悲しんでいる風を装って顔を下に向ける。

「あーいや、そういうのじゃなくて」

 あれ? 想像していたのとは違う反応ね。もうちょっと照れた感じの反応が返ってくると思っていたのだけど。

「そういうの?」
「恥ずかしいとかじゃないんだけど…」
「うん」
「ちょっと加減ができなさそう、というか……」

 ロイドがそう申し訳なさそうにかつ、恥ずかしそうに頬をかきながら言う。

 加減? 何を? 首を傾げそう考えたところで私はそれが何を指すのかに思い至る。
 まさかの返しに顔が熱くなるのを感じながらロイドの顔を見上げる。そこには少しはにかみながらもしてやったり、みたいな表情をしているロイドがいた。

「からかった?」
「いや、割と本気……かな。普段も結構抑えているから」

 あれで? 過去の記憶を呼び起こしながら何度も、そう思う。
 ほぼ婚約者の状態で1年以上も同棲していれば、そういうことは1回や2回やそれなりの回数はあるわけで……

「ろ、ロイドがそうしたいのならいいわよ」
「本当に?」

 おかしいわね。さっきまでは私が攻めていたような気がするのだけど、いつの間にか立場が逆転しているような気がするわ。

「え、えぇ。いいわ」
「そうか。それならしっかり選ばないとな。あぁでも、見た目の方はやっぱりレイアが好きなものでいいよ。俺は見た目にこだわりはないから」
「う、うん。わかったわ」
「それじゃあまだ見ていない物から見ていこうか」

 いつの間にか主導権がロイドに移っていたことに困惑しながら、ロイドに連れられて店内に飾られているベッドを見て回ることになり、最終的にベッドは私好みの白系の木材を使った、見た目がおとなしめのもので一番大きなものを注文することになった。





 ―――――
 今日の21時頃の更新をもってこの作品は完結となります。残り3話となりましたが、最後までお付き合いしていただけたら幸いです。

 ※今日の更新は12時過ぎ・18時過ぎ・21時過ぎ頃になります
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします

鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。 だが彼女は泣かなかった。 なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。 教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。 それは逃避ではない。 男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。 やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。 王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。 一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。 これは、愛を巡る物語ではない。 「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。 白は弱さではない。 白は、均衡を保つ力。 白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

婚約破棄は了承済みですので、慰謝料だけ置いていってください

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢アナスタシア・オルステッドは、第三王子アレンの婚約者だった。 しかし、アレンは没落貴族の令嬢カリーナと密かに関係を持っていたことが発覚し、彼女を愛していると宣言。アナスタシアとの婚約破棄を告げるが── 「わかりました。でも、それには及びません。すでに婚約は破棄されております」 なんとアナスタシアは、事前に国王へ婚約破棄を申し出ており、すでに了承されていたのだ。 さらに、慰謝料もしっかりと請求済み。 「どうぞご自由に、カリーナ様とご婚約なさってください。でも、慰謝料のお支払いはお忘れなく」 驚愕するアレンを後にし、悠々と去るアナスタシア。 ところが数カ月後、生活に困窮したアレンが、再び彼女のもとへ婚約のやり直しを申し出る。 「呆れたお方ですね。そんな都合のいい話、お受けするわけがないでしょう?」 かつての婚約者の末路に興味もなく、アナスタシアは公爵家の跡取りとして堂々と日々を過ごす。 しかし、王国には彼女を取り巻く新たな陰謀の影が忍び寄っていた。 暗躍する謎の勢力、消える手紙、そして不審な襲撃──。 そんな中、王国軍の若きエリート将校ガブリエルと出会い、アナスタシアは自らの運命に立ち向かう決意を固める。 「私はもう、誰かに振り回されるつもりはありません。この王国の未来も、私自身の未来も、私の手で切り拓きます」 婚約破棄を経て、さらに強く、賢くなった公爵令嬢の痛快ざまぁストーリー! 自らの誇りを貫き、王国を揺るがす陰謀を暴く彼女の華麗なる活躍をお楽しみください。

『婚約破棄?結構ですわ。白い結婚で優雅に返り咲きます』

鍛高譚
恋愛
伯爵令嬢アリエルは、幼い頃から決まっていた婚約者――王都屈指の名門・レオポルド侯爵家の嫡男マックスに、ある宴で突然“つまらない女”と蔑まれ、婚約を破棄されてしまう。 だが、それで終わる彼女ではない。むしろ“白い結婚”という形式だけの夫婦関係を逆手に取り、自由な生き方を選ぼうと決意するアリエル。ところが、元婚約者のマックスが闇商人との取引に手を染めているらしい噂が浮上し、いつしか王都全体を揺るがす陰謀が渦巻き始める。 さらに、近衛騎士団長補佐を務める冷徹な青年伯爵リヒトとの出会いが、アリエルの運命を大きく動かして――。 「貴族社会の窮屈さなんて、もうたくさん!」 破談から始まるざまぁ展開×白い結婚の爽快ファンタジー・ロマンス、開幕です。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした

まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】 その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

処理中です...