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女の子ですか、そうですか

法律って人のためにあるんだよね

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 描写もそこまでないので大したことはないと思いますが、一応グロ注意です
 ―――――


 咄嗟に庇うためにやったため全力ではなかったはずなのだが、男は盛大に吹き飛んでいった。

 冷静に考えてみれば、大木すら一撃でなぎ倒せる力で人を殴ればどうなるか。今回はそこまで力を入れていなかったにもかかわらず、成人男性が軽々と吹き飛んでいくほどの威力だったわけだ。
 というか全力で殴り掛かっていたらどうなっていたか。できれば想像はしたくない。

 吹っ飛んでいった男は少し先にあった樹にぶつかり、そのまま地面に落ちた。この一連の流れの中で男はうめき声一つ上げていない。

 嫌な予感、というよりも確信に近い感じであの男の状態が想像できる。そもそも殴ったときに大分やばい感触がしたのもあるが、地面に落ちた時に首が変な方向に曲げってしまっているから。
 あ、口から赤い何かが……

「お前! 獣ごときが俺たちに攻撃することがどういうことが分かっているのか!」

 残りの男は倒れた男の心配よりも俺が手を出したことの方が重要なようで、腰に携えていた剣らしきものを抜き、その剣先を俺に向けてきた。

「それはさっき言っていた、逆らうのは禁止されているとか、そういうのか?」

 そのつもりがなかったとはいえ、ひと一人殺めてしまったことに内心動揺しつつも、同時に忌避感をあまり覚えていない自分に驚く。

「そうだ。俺たちに手を出した以上、お前はこの場で殺す! そこを動くんじゃねぇぞ!」

 殺すと言われてそれに従うのはあり得ないと思うが、これがこの世界の当たり前なんだろうな。もう1人の男をすでに殴っているのに、男は俺から反撃をもらうとは微塵も思っていないようだし、それが当然とばかりに殺そうとしているしなぁ。

 もともとそれほど距離が離れていなかったこともあり、すでに俺に向けて剣を振り下ろしてきている。
 あまり剣を使うことに慣れていないのか、俺の身体能力が高いからなのか、男が振り下ろしてきている剣の動きがよくわかる。

 避けてもいいんだが、そうすると後ろで倒れている女の子がどうなるかわからない。少なくとも1度庇っているから、下手すれば人質みたいなこともされそうだ。

「んなっ?!」

 どうしたものかと思いながら、男の剣を指で挟んで止めてみた。
 前の体ではおよそ不可能なこともあっさりやれてしまうのは、やはりこの体のおかげなのだろう。

「お前たちは俺たちのことを人として見ていないのだろう?」
「だから何だ! さっさとこの手を放せ!」

 素手で剣を止められ、かなり苛立った様子の男が俺の手から剣を抜こうと藻掻きながら凄む。
 正直、この状況で凄まれても滑稽なだけなのだが、そんなことに気づくこともなく男は俺の手から剣を抜き取ろうと顔を赤くしながら頑張っている。

「法律ってさ、人のために存在するものだよな? だったら俺たち獣人はそれに従う必要はないと思うんだよ」
「は?」

 俺の言葉に何を言っているんだとばかりに男が怪訝けげんな顔を向けてきた。

「だってそうだろ。お前たちは獣人のことを人として認めず、獣として扱っているんだ。人間でない以上、法律に従う必要はないよな?」

 ここまで言って、男は俺が何を言いたいかを理解したのか、徐々に顔色が悪くなってくる。

「それにさ」
「あ?」
「法律云々関係なく、俺がお前を殺せば目撃者がいなくなるわけで、今から俺が何をやっても誰に知られることもない」

 そうだよな? と言って確認を取った俺が、男の瞳にどう映ったのかがわからないが、男の表情から血の気が一気に引いていったのは見て取れた。

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