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ペンダントは義妹の胸元

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 翌日、朝食の時間がやって来たので食堂の方へ移動します。

 我が家は一応伯爵家です。ただ、格としては伯爵家でも下位に位置しています。長い事、経済状況が宜しくなかったのです。

 そのため、数年前の段階でお父さまは第2夫人を取る必要が出てきました。普通であればお金がない状況で第2夫人を迎えることは出来ませんが、第2夫人の実家からの援助を求めての物なのです。

 ただ、援助してもらえることになったのは良いのですが、第2夫人の方の実家は貴族家ではなく商家なのです。そのため、貴族としての作法がおざなりと言いますかよくありません。

「あら、ミーシャさん。お早いですねぇ」
「貧乏人は忙しいから早く食事を済ませたいのよね」
「貴方たちが遅いだけではないでしょうか」

 家族全員が揃うまで朝食を食べることが出来ないため待っていると、最後の人物たちがようやくやってきました。

 遅れていたというのにその一切悪びれず、むしろ上から物を言う人物が第2夫人になります。その後ろにいる、私たちの事を貧乏人と言った者が第2夫人の連れ子である義妹に当たります。

 2人は自分たちの方が立場が上と思っているようですが、実際はこの家での中では最下位に当たります。他の家族は反論できないのではなく、色々と言いたいことがあっても呑み込んでいるだけです。現状、ある事情から商家からの援助を必要ないくらいには我が家は安定した生活を送ることが出来ていますので。

「早く座りなさい」
「ええ」
「うっふふー」

 何やら義妹の機嫌がいいですね。普段は朝起こされて不機嫌なことが多いというのに、不思議なことがあるもので……ん?

 義妹の胸元に見慣れたアクセサリーがあることに気付きました。

「貴方、それは」
「あ、これ? いいでしょう! ようやく手に入れたの!」
「……そうですか」

 容易に手に入る物ではないのですが、まあ盗んで手に入れたという事でしょう。ですが、これでペンダントが無くなった原因がわかりました。

「あら、あらあら? そう言えばお義姉さま。いつもしているペンダントはどうしたのですか? 見当たりませんけど!」

 心配している様子なく明らかに事情を知っている感じに嬉々とした表情で義妹はそう聞いて来ました。

 これはわかっている上で煽って来ているのでしょうね。他の家族が居るというのによくやります。お父さまの表情がかなり剣呑な物になっていますよ?
 とは言え、この場でことを荒立てる必要は無いでしょう。何時までも食事が始められませんから。

「色々あるのですよ」
「そうなの。見つかると良いわね!」

 誰も無くしたとは言っていないのですけれどね。隠す気が無いのでしょうか。それとも上手く行くという自信でもあるのでしょうか。……どちらでもいいですね。

 とりあえず、義妹からペンダントを取り戻す手立てを考えなければなりません。
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