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生産したい、色々作りたい

運営裏話・3

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 第1回目のイベントが終わり、数日が経過した日テリUWWO運営管理部の一室。今日も忙しなく指を動かし、ユーザーから来る要望やバグ報告、通報などを対処していく。
 まあ、バグ報告や通報の大半は上位プレイヤーへのやっかみからの物が多いため、多くはスルーされるものだが、中にはちゃんとした報告も含まれているため気を抜ける作業ではない。

「うおっ」
「どうしたの?」

 部屋の中に居る人たちが黙々と作業する中でいきなり声を上げた男に、隣で作業していた女が身を乗り出し興味深げに男に聞く。

「っ、ああ…いや」

 いきなり顔が近付いて来たことで男は声を詰まらせた。
 この部署、というよりは別の部署もそうだが、基本的に男が多い。しかも大学在学中の大半をゲームやプログラミングなどの趣味に費やしていた、女にあまり免疫のない男が多くを占めているのだ。
 この男の反応も、それ故に出たものである。

 序でにこの女には特別、この男に対して何を想っているということは無い。単に単純作業に飽き、この男が何か面白そうな反応を上げたため、その内容に興味を持っただけである。

「何かあったか?」
「あ、主任」

 男の声を聞きつけた主任が来たことで、女の視線が主任へ逸れた。それを見て男はそっと胸を撫でおろし、主任に対し報告する。

「先ほど土属性ドラゴニュートのプレイヤーが第2エリアに到達しました」
「へー」
「ようやくか。最初に第3エリアから第2エリアへ移動したプレイヤーが現れて、1週間以上遅れるとはな。想定時間外か?」
「調べてみます」

 光と闇の属性を除くドラゴニュートがチュートリアルに到達するまでに想定されている時間は、ゲーム内時間で3週間。最初に第2エリアに移動したアユがゲーム内時間2週間程なのは明らかに早いが、それはあくまでもゴフテスとの相性が良かった故の結果である。
 それと、女は興味のない内容だったのか、既に元の作業に戻っている。

「うーん、とりあえず想定されたものよりは少し早いくらいですかね。そもそも最初に移動したプレイヤーが早すぎただけで、その所為で遅く感じているだけだと思います」
「そうなのか?」
「プレイ時間を見る限りそうですね。年齢からみてもおそらく会社勤めの方でしょう」
「ああなるほど。確かに社会人だとそれくらいの時間になるのか。あのヴァンパイアの子はプレイ時間がおかしいからな。どう見ても日中、フルでログインしているプレイ時間だ」
「まあ上には上が居ますが、そうですね。年齢からして学生でしょうから、冬休みだからこそのプレイ時間でしょう」
「学生だとすれば、少し心配になるが、それはこっちがするようなことではないな」
「ええ」
「チュートリアルに到達していない他のプレイヤーはどうだ?」
「ちょっと待ってください。出します」

 主任の言葉に男は手元を動かし、該当するプレイヤーの情報を探す。

「……うーん、1.4倍RACEのプレイヤーたちは問題ないですかねぇ。ドラゴニュートの火と風のプレイヤーは一緒にいるようですし、他のプレイヤーもそろそろエリア移動できそうな感じです」
「1.5の方はどうだ?」
「こっちはまだかかりそうですね。ただ、まだ想定時間内なのでこちらから手を出すことはしない方が良いかと思います。一応、観察はしておきます」
「そうか。よろしく頼む」
「はい」
「プレイヤー全員に楽しんでもらいたいところだが、これに関しては最初から決まっていたことだからな。事前に忠告はしているし。
 ただ、もしこれからリタイアするなら、何かしらの補填はした方が良いだろうな。他の数日でリタイアしたプレイヤーに比べたら損失が大きすぎる」
「そうですね。補填の方もいくつか候補を挙げておきます」

 ・

「第3エリアに到達したプレイヤーもそれなりに増えましたね」
「そうだな。やや想定よりも遅いところだが、そもそも第2エリアに到達するのが遅かったからな」
「ですねぇ」
「廃村の復興の進捗はどんな感じだ?」
「現在は10…2%と言ったところです。まだ、大分時間は掛かりそうですね」

 第3エリアの初めにある廃村の進捗を監視していた職員が、そう言葉を漏らすと進捗の確認に来ていた主任がそれを聞いて声を掛けた。

 現在、職員が監視しているモニターに表示されている第3エリアに到達しているプレイヤーの総数は500を少し超えたところ。
 前日に表示されていた到達人数2桁前半に比べれば大分増えたとは言えるが、村を1つ復興させるためには当然プレイヤーの数は足りていない。
 それに第3エリアに到達したからと言って、必ずしも復興の手伝いをしなければならない訳ではないのだから、当然村の復興を無視して我先にと先に進んで行くプレイヤーが存在している。
 そのため、実際に村の復興を進めているプレイヤーは第3エリア到達者の4割に届かない程度しかいない。

「この進捗だと、完全に復興するのは第2回イベントの後くらいになりそうだな」
「そうでしょうね。特にイベント前になれば、復興よりもイベントを優先するプレイヤーが多くなりますから」
「だな」

 先のことを見るなら、この廃村を出来るだけ早く復興させ、リスポーンポイントとして使えるようにした方がプレイヤーにとっては有用であるはずだが、そのことに気付いているのは、率先して復興を手伝っている一部のプレイヤーだけだ。いや、気付いていてもあえて無視しているプレイヤーも居そうではある。

「しかし、第2回イベントの内容はあれでよかったんですか? 既に第1回イベントの2日目に似たようなことをしていますし」
「2回目のイベントがPVP大会になる事は、元から仮ではあるが決まっていたことだからな。それに変に奇をてらうイベントにしたところで、それが上手く行くとは限らないだろう」
「そう…ですね。それにまだ2回目ですから、後のことを考えると堅実にやった方が良いのでしょうね」
「そう言うことだ。それに、PVPに参加しないプレイヤーにも楽しめる要素は入れているしな」
「あー、ギャンブルですね。賭けの対象が偏りそうな気もしますが、好きな人は好きですからね。ただ、そうなると掲示板が荒れそうなので、掲示板の監視を強化しないといけませんか」
「しないと拙いだろうな。しかし、それよりも……」
「どうしました?」
「ああ、いや、気にしないでいい。他の所も見て来ないとな。君はこれまで通り廃村の復興の監視をよろしく。……っと、ああ、すまない。修正の件はしっかり進んでいるのか知っているか?」
「修正……イベントの時のですかね。あれなら生産スキル関連のシステムと同時に修正済み、と報告が来ています」
「ならいい」
「はい。廃村については監視しておきます」
「頼む」

 主任はあることへの懸念を抱きながらも、他の職員の進捗を確認するためにその場を離れていった。
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