UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
208 / 281
ハウジングと第3エリア

52:どーん!

 ※今後の更新間隔の調整のため、こちらでは分割での投稿になります
 後半は明日の夜21.10に公開します
 ――――― 



 ガーディアントレントドールの枝から落ちて行ったそれは、元から酷くひび割れていたドールの表面。それが動くたびにガーディアントレントドールの表皮が砕け、剥がれ落ちているのだ。いや、枝から落ちてきている物の量から、表面の物だけでなく中の部分も崩れてきているのかもしれない。

『……鍵の存在を確認。日記の現所有者と補充された魔力の一致を把握』

 多分、というかほぼ確実にハウスに掛かっている幻影魔法が解かれると同時にこのドールは崩れるということなのだろう。

『一部機能の破損、また低下していることを確認。…………これからの動作には影響はないと判断』

 何というか機械的な言動が多いね。やっぱりそこまで良いAIは積んでいないみたいだ。まあ、人の手で作られた存在に一般的なNPC以上のAIが積まれていたら、さすがにどうかと思うし妥当なところなのかもしれない。

 動くたびにボロボロと崩れていく様を見ていると出来れば壊れないように動かないでほしい、と言いたくなるのだけどこの様子からして私の話を聞くとは思えないし、聞いてくれたとしてもまともに会話が成り立つとは思えない。下手に止めようとして触ると余計に崩れそうだし、強引に止めることは出来ない。それに止めたところで直す手立てもないのだからそれをする意味もない。

 もう少し攻略が進んだ状態でこの依頼を進めていたら何か結果は変わっていたのだろうか。

 そんなことを考えている間にも、ガーディアントレントドールは作業を進めていく。

『魔法の解除を開始。魔力による所有者の書き換えを開始…………終了』
『解除の際に障害となる物は周囲にはなし。これより魔法の解除を実行。…………あなたの名前は?』
「ん?」

 事務的というか機械的に作業を進めていたガーディアントレントドールから話しかけられたような? ぼんやり聞いていたせいではっきりと聞き取れたわけじゃないから聞き間違いかもいしれないけど。

『あなたの名前はなんでしょうか?』
「え、あ、アユです」

 えぇ……普通に話しかけてきたのだけど。

 今までの機械的な言動じゃなくて自分の意思で話しかけてきた感じだから、AIの性能が低いとかではなかったのか。
 あれか、今までのは作業だったから確認ついでに復唱していただけで、ちゃんとNPCと同じように自分の意思を持っているタイプだったと。だから普通に話しかけられたと?

 このゲームでのNPCの扱いがよくわからなくなるよ。

 NPCが作ったドールとはいえ、NPCと同じようなAI知能を持っているとか。もしかしてプレイヤーでも同じようなことができるのだろうか。
 この感じだと錬金術でホムンクルスとか作れそうな気がするし、現にゴーレムを修復したプレイヤーもいて、そのゴーレムがちゃんと戦闘で使えたって報告もあるのだよね。
 そういえばインベントリの中に入っているゴーレムの躰とコアも直さないとだね。

『ではアユ。今から魔法の解除を行うので、その場から動かないように……いや、そこから後ろに1歩、いえ、あなたのサイズからだと2歩下がって頂いてもよろしいでしょうか』
「あ、はい」
 
 指示された通りに2歩後ろに下がる。

『ありがとうございます。ではそこから動かないようにお願いしますね』

 これ、イベントキャラ扱いだからある程度しっかりしたAIが積まれている感じなのかも。もしくはそれっぽく見えているだけでテンプレートに当てはめただけの可能性もあるけど、指示の出し方とか自然な感じがするから多分前者かな。ちゃんと自律して言葉を選んでいる気がする。
 
「え?」

 幻影魔法の解除が始まったのか、ガーディアントレントドールのまとっている光が強くなると同時に地面が大きく揺れ始める。
 前触れなく揺れ始めたことに驚いて声をあげてしまったけれど、驚いている間にもその揺れは徐々に大きくなっていく。

 あれ、これ結構危険な感じ?
 障害物がないって言っていた後に動かないようにって指示されたから、単に今の場所から動くと障害物になって魔法が解除できなくなるだけだと思っていたのだけど、もしかしてハウスの出てくる場所に立っていると何かしらの影響を受けるパターンだった?
 最悪弾き飛ばされて死ぬとか?

 それと魔法の解除しかしていないはずなのに揺れが発生するということは、幻影魔法というのはそれだけ強力な魔法ということなのだろう。
 まあ、スタンピードが発生してもそのまま家を封印し続けられるだけのものだったから、それだけ強固に魔法をかけていたとのだろうね。
 あの日記の内容からしてここは何があっても壊したくなかったみたいだから当然か。

 そんなことを考えている間にも揺れが強くなっていく。立っていられない程ではないが動いたら足を取られて転びそうなくらいの揺れだ。

 これ他のプレイヤーにも同じように感じ取れるようになっているのかな。感じ取れるようになっているのなら、何かあったということが知られてしまうのだけど。
 幻影魔法がこの場所だけにかかっていたから外部にまでこの揺れが漏れていないはず。……そう思いたいなぁ。

 他のプレイヤーのことを気にしていたところで、突然揺れが収まる。

 そこからほんの少し遅れて、突如ガーディアントレントの向こうに巨大な何かが下から生えてくるように出現した。


 どーーーーーーん!!


 そんな感じの効果音がつきそうな感じで目の前にいきなり家が生えてきた。
 そう生えてきた。下から筍が生えてくるような感じで。勢いよく。音はほとんどしなかったけどさ。
 
 幻影魔法っていうから何か徐々にハウスの全貌が明らかに! みたいな感じに出てくるかと思ったのに、まさか地面の中に埋まっていたかのように出てくるとは思わないよね。
 まあ、地面が揺れ始めた段階で徐々にっていうのは無さそうだな、とは思ってはいたのだけど。

 ともかく、幻影魔法が解除されたことで目の前に大きな家が出現した。それに伴い今まで草原だった周りの景色も様相を変え、ハウスに付属する庭、家庭菜園や花壇、中にはガゼボらしき物も見える。

 この場所全体がハウスの一部だったのか。幻視魔法の蛇とかギミックもこの中にあったのだから、別に変なことではないしちゃんと考えれば先に気付けたことなんだよね。

 見た感じイングリッシュガーデンみたいかな? カントリーガーデンより自然が多い感じだから多分そっちよりな感じ。私も詳しくはないから絶対ではないけど。
 でも何か現実にあるおしゃれな洋風の家をモチーフにしたようなかなりおしゃれな感じでかなりいい。
 こういうのってテンション上がるよね。
 
 ……あれ? でも100年放置されていたにしては庭が整いすぎている気がするのだけど、どういうことなのだろう。


 ―――――

どうでも良い設定ですが、ガーディアントレントドールさんは女性人格です。性格設定的には騎士風です。騎士風です。それだけです。
陶器のような物で作られたガーディアントレントドールの体が100年程度で崩れた理由は、動けるように作られたのが主な理由ですが、幻影魔法の核となっていたのも大きく影響しています。
オートリペアが機能していたとしても今回の状況は回避できません。

あなたにおすすめの小説

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり
ファンタジー
【書籍化!】第17回ファンタジー小説大賞『癒し系ほっこり賞』受賞作です。 (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です) ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。