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第一章
挨拶は基本ってやつ
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「……さすがに寝過ぎた」
夕方に寝たと思ったらまた夕陽が部屋に差し掛かっていた。
「体のだるさ的にもこりゃ丸一日寝てたな」
ぐーすか寝ている間に誰かが気を利かせてくれたのか、トールが置いていった花はきちんと花瓶に挿してあるし、保存魔法を掛けられた薬や水、軽食がベッドサイドに置いてあった。
「本当の意味での魔法瓶だよなぁ」
人は寝ている間に夢という形で記憶を整理するらしい。もちろん俺の脳も長い睡眠を無駄にすることなく記憶の整理を行なってくれた。……前世の記憶と俺の記憶や体験が混ざってだいぶトンチキなことになっていた点に目を瞑れば、ある意味睡眠学習と言えそうな内容だ。俺は魔法によって若干のきらめきを帯びた水差しをなんとなくつついた。ほんと、魔法って便利なもんだ。
……って待てよ、なんで魔法がかかってるからって水差しがきらきらして見えるんだ?
「夕陽の反射でもないし、なんか不自然というかそれこそゲームのエフェクトみたいな感じだし……」
夢の中でもやっていたゲームとやらに出てきた数々のアイテム。俺にとっては日常生活でよく見るものがそのゲームの中ではものすごい物として扱われていたり、なんだかきらきら輝いていたりと面白かったのだが、その輝きが現実にまで浸食してきてしまっている。
「いや、寝すぎなのはわかるけど夢の内容がここまで影響するか?」
一人でうーんと唸っていると、突然視界に光る物体が飛び込んできた。
「うわなんだ虫か!?」
中々のスピードで飛び回る光る物体を仕留めるために両手を構え、タイミングをうかがう。
……よし、今だ!
「おりゃっ!」
「いててててっ!」
ばちんと良い音と共に息絶えたと思った光る物体は逆にその輝きを増し、そのうえ何か声まで聞こえてきた。
……前世を思い出したら虫の言葉までわかるようになるのだろうか。
思わず手を開くと、光る物体は勢いよく飛び出し、俺の目の前で八の字を描くように激しく飛び回り始めた。
「このおばか! 私を虫と一緒にするなんてありえない!」
「ご、ごめん」
「ふん。あのアホ犬がなんだか騒がしいから様子を見に来たけどこんなに物を知らないボウズだったとはね」
相変わらずただ光っている物体にしか見えないが、なんとなくその勢いに負けて謝ってしまった。虫じゃないと言ってるけど、じゃあ一体何なのだろう。
「あんた妖精も知らないの? 私の姿が見えてるのにわからないなんてほんとにバカなのね」
「いや、だってただ光る物体にしか見えてないし」
「はぁ!? なんで見えてないのよ!」
「俺に言われても……」
相当疑問が顔に出ていたのか、自ら妖精だと名乗り始めた。まあ妖精という名前や存在自体は知っているけど、一般人には姿を見ることはできないはずだし、見るためには特別な手順が必要だったはずだ。なんだか理不尽に怒られているが、俺は悪くないし……。
「まったくしょうがないわねえ。……特別サービスよ!」
「うわまぶしっ!」
突然至近距離でさらに輝き始めた妖精とやらに思わず目を瞑ってしまう。少しして目を開けてみると、そこには透明な羽が生えた小人が腰に手を当てて浮かんでいた。
「あーすごく妖精っぽいね」
「だから言ってんでしょ! てか普通もっと驚かない? ありがたがらない?」
「ごめんなんか親近感が先に来ちゃった」
「どういうことよ! まったく、なんでここの人間はこうもおかしいのかしら」
妖精という言葉がぴったりな、ほんとに妖精と言う言葉を聞いて浮かぶイメージ通りの姿に、感動や驚きは吹っ飛んでしまった。うんたらベルみたいなお団子に自然な感じの服がよけい既視感に拍車をかけている。
「てか妖精って普通見ようと思って見れるものじゃないんじゃなかった?」
「普通はね。さっきも言ったけど今回は私のサービスよ。……てか馴れ馴れしいわね」
「俺は相手に合わせて話せる十歳なんで」
「別に褒めてないんだけど? まあいいわ」
なんだか人間くさいため息を吐きながら妖精は近くにあった水差しに腰かけた。
「開花した人間は久々だから見学に来たけど、全然自分についてわかってないのね」
「出た開花。トールも言ってたやつだ」
「あのアホ犬に説明は受けたんでしょ?」
聞き馴染みのある言葉に思わず反応すると、妖精はまた浮かび上がり、俺の鼻先をつんつん突いてきた。説明はたしかに受けたけど、その後爆睡して今に至るというか、全然まだ現実として理解しきれてないというか……。
「まだあんまりわかってないみたいね。そういえば、私が光って見えるって言ってたわよね」
「うん。今も若干まぶしいくらいには」
「それ、疲れるからやめた方が良いわよ」
そう言うと妖精はどこからか取り出したステッキを振り、俺の頭を二回ほど軽く叩いた。
「え、なになに? ……あ、光がなくなった」
「あんた、自然に魔力を可視化してたのよ。なんか人間はそれに大層な名前を付けてた気がするけど何かは忘れた」
妖精の不思議行動の後、すぐに光が収まった。水差しの輝きも失われ、若干のだるさも軽減した気がする。ずっと寝てたことでだるいと思っていたが、どうやら別の理由もあったらしい。
「なんか体軽くなった気がする。ありがとう」
「なによ、礼は素直に言えるのね」
「俺は良い両親に育てられた十歳だからね」
「なんか鼻につくのよね……」
妖精はステッキをどこかにしまうと、また水差しに腰かけた。足をぷらぷらさせながら、うーんと唸っている。俺はそれを横目に、段々マーブル色になっていく外を眺めた。起きてからずっと喋っていたからか、なんとなく疲れを感じながらうすーく浮かび上がる二個目の月を眺め、もうそろそろ夜が来るなあなんて考えていると、妖精も考え事が終わったのか俺の肩に乗ってきた。
「とりあえずまた明日来るから」
「いや何がどうなってそうなったの?」
さも当たり前のことのようにさらっとそんな話をされたので驚いてしまった。
「だってあんた全然自分の状況わかってないじゃない。一応あんたの一族とは縁があるし、色々教えるついでに躾ようと思って」
「なんか色々スルー出来ないこと言われた気がするけど、とりあえず名前教えてよ。あ、俺はリュヌ」
シ ツケだとか一族がなんたらとか色々気になることはあるが、これから新たな関係が始まるのなら名前くらいは知っておいた方が楽だろう。ずっとあんたとかバカって呼ばれるのも嫌だし、こっちからさっさと名乗ってしまった。
「あんたねぇ……まあ良いわ。それも追々教えるとして、私はリリーよ」
よろしくと言いながら手を差し出すと、リリーは小さな手を上にちょこんと乗せてきた。なんとなくひんやりとした感触を感じていると、一瞬、ほのかにリリーが光ったように見えた。
「(あれ、可視化ってやつはリリーが止めてくれたはずなのに)」
首を傾げる俺を気にせず、またねと言いながら飛んでいくリリーに手を振っていると、コンコンとノックが聞こえた。
「はーい」
「リュヌ! やっと起きたのね。体は大丈夫?」
返事をすると軽食ののったトレーを片手に母さんが入ってきた。そういえば俺倒れたんだったと母さんの心配そうな顔を見て思い出す。もうなんともないよと返しながら軽食を受け取ると、母さんはベッドに腰かけ、俺の手を優しく握った。
「一回起きたと思ったらまたずっと寝て本当に心配したんだから……とにかく、もうなんともないなら良かった」
「ごめんね心配かけて。父さんや兄さんたちもきっと心配してくれてるよね」
「もう皆思い思いに薬やお守りを作り始めて大変よぉ。ま、リュヌのためを思ってることはわかってるからそんなに強くは言えないけどね」
「へへっ、こりゃ明日の朝は大変なことになりそうだね」
「そうねぇ、きっと全員からぎゅーっと抱きしめられてフォルンには鼻水まで付けられるかも」
「フォル兄相手でもそれはちょっと嫌かも」
母さんとくすくす笑いながら軽口を叩き合う。あー、俺、ヘイアン家に生まれて良かったなあなんて、変なことを考えてしまった。
「とにかく、少しでも食べて、また倒れてしまわないようにしっかり栄養をとるのよ? あと、少しでも何か変だと思ったらすぐに母さんや父さんを呼ぶこと」
「うん。わかったよ母さん。……ごめん、ほんとはもう仕事に行かなきゃいけないよね」
「我が子より大切な仕事があるもんですか。母さんたちのことは気にせず、自分の事だけ考えて良いんだからね」
母さんに優しく頭を撫でられ、布団を掛けられるとあれだけ寝たのにまた眠くなってくる。
「あらあら、まだ眠たいのね。寝る前に少しでも何か口に入れるのよ?」
「うん、ありがとう母さん」
瞼が重くなってくるのに抗っている様子を見かねて、何か食べるように念押しされてしまった。それに返事をしながらとりあえず水を飲むと、少しは安心したのか母さんは部屋を出ていった。……さすがに何か食べとこう。俺はサンドウィッチを少し食べ、それから本格的に横になった。
「そういえば、リリーはいつ頃来るんだろう」
明日また来るとは言っていたけど、具体的な時間帯を聞いていなかったなと思い出す。もう明日には普段通り体を動かしたいし、部屋にずっといるわけじゃないからすれ違いになりそうだな。
ぼけーっと天井を見つめながらそんなことを考えている俺にはわからなかった。明日、リリーと一緒にトールが来て、めちゃくちゃ不機嫌になることも、図らずも商人として一歩を踏み出していたことも。
「まあ明日になればなんとかなるか」
俺は呑気にあくびを一つし、眠りについた。
夕方に寝たと思ったらまた夕陽が部屋に差し掛かっていた。
「体のだるさ的にもこりゃ丸一日寝てたな」
ぐーすか寝ている間に誰かが気を利かせてくれたのか、トールが置いていった花はきちんと花瓶に挿してあるし、保存魔法を掛けられた薬や水、軽食がベッドサイドに置いてあった。
「本当の意味での魔法瓶だよなぁ」
人は寝ている間に夢という形で記憶を整理するらしい。もちろん俺の脳も長い睡眠を無駄にすることなく記憶の整理を行なってくれた。……前世の記憶と俺の記憶や体験が混ざってだいぶトンチキなことになっていた点に目を瞑れば、ある意味睡眠学習と言えそうな内容だ。俺は魔法によって若干のきらめきを帯びた水差しをなんとなくつついた。ほんと、魔法って便利なもんだ。
……って待てよ、なんで魔法がかかってるからって水差しがきらきらして見えるんだ?
「夕陽の反射でもないし、なんか不自然というかそれこそゲームのエフェクトみたいな感じだし……」
夢の中でもやっていたゲームとやらに出てきた数々のアイテム。俺にとっては日常生活でよく見るものがそのゲームの中ではものすごい物として扱われていたり、なんだかきらきら輝いていたりと面白かったのだが、その輝きが現実にまで浸食してきてしまっている。
「いや、寝すぎなのはわかるけど夢の内容がここまで影響するか?」
一人でうーんと唸っていると、突然視界に光る物体が飛び込んできた。
「うわなんだ虫か!?」
中々のスピードで飛び回る光る物体を仕留めるために両手を構え、タイミングをうかがう。
……よし、今だ!
「おりゃっ!」
「いててててっ!」
ばちんと良い音と共に息絶えたと思った光る物体は逆にその輝きを増し、そのうえ何か声まで聞こえてきた。
……前世を思い出したら虫の言葉までわかるようになるのだろうか。
思わず手を開くと、光る物体は勢いよく飛び出し、俺の目の前で八の字を描くように激しく飛び回り始めた。
「このおばか! 私を虫と一緒にするなんてありえない!」
「ご、ごめん」
「ふん。あのアホ犬がなんだか騒がしいから様子を見に来たけどこんなに物を知らないボウズだったとはね」
相変わらずただ光っている物体にしか見えないが、なんとなくその勢いに負けて謝ってしまった。虫じゃないと言ってるけど、じゃあ一体何なのだろう。
「あんた妖精も知らないの? 私の姿が見えてるのにわからないなんてほんとにバカなのね」
「いや、だってただ光る物体にしか見えてないし」
「はぁ!? なんで見えてないのよ!」
「俺に言われても……」
相当疑問が顔に出ていたのか、自ら妖精だと名乗り始めた。まあ妖精という名前や存在自体は知っているけど、一般人には姿を見ることはできないはずだし、見るためには特別な手順が必要だったはずだ。なんだか理不尽に怒られているが、俺は悪くないし……。
「まったくしょうがないわねえ。……特別サービスよ!」
「うわまぶしっ!」
突然至近距離でさらに輝き始めた妖精とやらに思わず目を瞑ってしまう。少しして目を開けてみると、そこには透明な羽が生えた小人が腰に手を当てて浮かんでいた。
「あーすごく妖精っぽいね」
「だから言ってんでしょ! てか普通もっと驚かない? ありがたがらない?」
「ごめんなんか親近感が先に来ちゃった」
「どういうことよ! まったく、なんでここの人間はこうもおかしいのかしら」
妖精という言葉がぴったりな、ほんとに妖精と言う言葉を聞いて浮かぶイメージ通りの姿に、感動や驚きは吹っ飛んでしまった。うんたらベルみたいなお団子に自然な感じの服がよけい既視感に拍車をかけている。
「てか妖精って普通見ようと思って見れるものじゃないんじゃなかった?」
「普通はね。さっきも言ったけど今回は私のサービスよ。……てか馴れ馴れしいわね」
「俺は相手に合わせて話せる十歳なんで」
「別に褒めてないんだけど? まあいいわ」
なんだか人間くさいため息を吐きながら妖精は近くにあった水差しに腰かけた。
「開花した人間は久々だから見学に来たけど、全然自分についてわかってないのね」
「出た開花。トールも言ってたやつだ」
「あのアホ犬に説明は受けたんでしょ?」
聞き馴染みのある言葉に思わず反応すると、妖精はまた浮かび上がり、俺の鼻先をつんつん突いてきた。説明はたしかに受けたけど、その後爆睡して今に至るというか、全然まだ現実として理解しきれてないというか……。
「まだあんまりわかってないみたいね。そういえば、私が光って見えるって言ってたわよね」
「うん。今も若干まぶしいくらいには」
「それ、疲れるからやめた方が良いわよ」
そう言うと妖精はどこからか取り出したステッキを振り、俺の頭を二回ほど軽く叩いた。
「え、なになに? ……あ、光がなくなった」
「あんた、自然に魔力を可視化してたのよ。なんか人間はそれに大層な名前を付けてた気がするけど何かは忘れた」
妖精の不思議行動の後、すぐに光が収まった。水差しの輝きも失われ、若干のだるさも軽減した気がする。ずっと寝てたことでだるいと思っていたが、どうやら別の理由もあったらしい。
「なんか体軽くなった気がする。ありがとう」
「なによ、礼は素直に言えるのね」
「俺は良い両親に育てられた十歳だからね」
「なんか鼻につくのよね……」
妖精はステッキをどこかにしまうと、また水差しに腰かけた。足をぷらぷらさせながら、うーんと唸っている。俺はそれを横目に、段々マーブル色になっていく外を眺めた。起きてからずっと喋っていたからか、なんとなく疲れを感じながらうすーく浮かび上がる二個目の月を眺め、もうそろそろ夜が来るなあなんて考えていると、妖精も考え事が終わったのか俺の肩に乗ってきた。
「とりあえずまた明日来るから」
「いや何がどうなってそうなったの?」
さも当たり前のことのようにさらっとそんな話をされたので驚いてしまった。
「だってあんた全然自分の状況わかってないじゃない。一応あんたの一族とは縁があるし、色々教えるついでに躾ようと思って」
「なんか色々スルー出来ないこと言われた気がするけど、とりあえず名前教えてよ。あ、俺はリュヌ」
シ ツケだとか一族がなんたらとか色々気になることはあるが、これから新たな関係が始まるのなら名前くらいは知っておいた方が楽だろう。ずっとあんたとかバカって呼ばれるのも嫌だし、こっちからさっさと名乗ってしまった。
「あんたねぇ……まあ良いわ。それも追々教えるとして、私はリリーよ」
よろしくと言いながら手を差し出すと、リリーは小さな手を上にちょこんと乗せてきた。なんとなくひんやりとした感触を感じていると、一瞬、ほのかにリリーが光ったように見えた。
「(あれ、可視化ってやつはリリーが止めてくれたはずなのに)」
首を傾げる俺を気にせず、またねと言いながら飛んでいくリリーに手を振っていると、コンコンとノックが聞こえた。
「はーい」
「リュヌ! やっと起きたのね。体は大丈夫?」
返事をすると軽食ののったトレーを片手に母さんが入ってきた。そういえば俺倒れたんだったと母さんの心配そうな顔を見て思い出す。もうなんともないよと返しながら軽食を受け取ると、母さんはベッドに腰かけ、俺の手を優しく握った。
「一回起きたと思ったらまたずっと寝て本当に心配したんだから……とにかく、もうなんともないなら良かった」
「ごめんね心配かけて。父さんや兄さんたちもきっと心配してくれてるよね」
「もう皆思い思いに薬やお守りを作り始めて大変よぉ。ま、リュヌのためを思ってることはわかってるからそんなに強くは言えないけどね」
「へへっ、こりゃ明日の朝は大変なことになりそうだね」
「そうねぇ、きっと全員からぎゅーっと抱きしめられてフォルンには鼻水まで付けられるかも」
「フォル兄相手でもそれはちょっと嫌かも」
母さんとくすくす笑いながら軽口を叩き合う。あー、俺、ヘイアン家に生まれて良かったなあなんて、変なことを考えてしまった。
「とにかく、少しでも食べて、また倒れてしまわないようにしっかり栄養をとるのよ? あと、少しでも何か変だと思ったらすぐに母さんや父さんを呼ぶこと」
「うん。わかったよ母さん。……ごめん、ほんとはもう仕事に行かなきゃいけないよね」
「我が子より大切な仕事があるもんですか。母さんたちのことは気にせず、自分の事だけ考えて良いんだからね」
母さんに優しく頭を撫でられ、布団を掛けられるとあれだけ寝たのにまた眠くなってくる。
「あらあら、まだ眠たいのね。寝る前に少しでも何か口に入れるのよ?」
「うん、ありがとう母さん」
瞼が重くなってくるのに抗っている様子を見かねて、何か食べるように念押しされてしまった。それに返事をしながらとりあえず水を飲むと、少しは安心したのか母さんは部屋を出ていった。……さすがに何か食べとこう。俺はサンドウィッチを少し食べ、それから本格的に横になった。
「そういえば、リリーはいつ頃来るんだろう」
明日また来るとは言っていたけど、具体的な時間帯を聞いていなかったなと思い出す。もう明日には普段通り体を動かしたいし、部屋にずっといるわけじゃないからすれ違いになりそうだな。
ぼけーっと天井を見つめながらそんなことを考えている俺にはわからなかった。明日、リリーと一緒にトールが来て、めちゃくちゃ不機嫌になることも、図らずも商人として一歩を踏み出していたことも。
「まあ明日になればなんとかなるか」
俺は呑気にあくびを一つし、眠りについた。
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