俺はただ怪しい商人でいたかっただけ

みるこ

文字の大きさ
11 / 15
第二章

ドキドキ学園生活

しおりを挟む
「あんたさぁ、私の忠告、忘れたわけ?」
「い、いやぁ、まさかこんなことになるなんて、ね?」
 きっと俺がローブや眼鏡を取ってしまったことに怒っているのだろう。いや、まじであれは軽率だったな……。
「何この妖精。うるさいんだけど」
「はぁ……ほんとに厄介ね」
 無事に入学試験を終え、結果が出るまでの待機時間で俺はリヒトと昼ごはんを食べることになった。なんだろう、めちゃくちゃ自然に一緒にいるんだけどもう慣れてきちゃったというかそこまで拒否感が無いというか……。
「む、
「ふん、小童が私を鑑定できるわけないでしょう」
「はい、ちょっと待ってくださいお二人さん」
「「なに」」
 おお、案外息ぴったりじゃんなんて言葉は胸中にとどめつつ、俺は当たり前に会話をしているリリーとリヒトに待ったをかけた。
「あのさ、普通にリリーと話してるのもそうだけど鑑定がどうとかこうとかなんか色々おかしくない?」
「? 僕にとってはこれが普通」
「あんたは黙ってなさい! まあ一般的ではないわよね」
 はーあと何度目かわからないため息を吐きながらリリーは説明を始めた。

「あのね、このガキんちょはあんたと同じでしてる。それに加えて持ちよ」
「リュヌ、お揃い?」
 ニコニコするリヒトと対照的に顔を顰めるリリーの言葉に思わずぽかーんと口を開けてしまった。いやいや、そんな人間にすぐ出会うとかおかしくないか?
「再確認なんだけどさ、開花した人間って相当稀なんだよね? てかだからリヒトも名乗りって知ってたわけ?」
「うん。かなり特殊らしい。でもリュヌとお揃いなら良い。名乗り、交わす?」
「いやだから人間とは交わさないしリヒトとは友達!」
「友達……。まあ今はそれで良い」
「なんだよ今はって……」
「あーあ、あのアホ犬の牽制が効かない人間を一発目で引き当てるなんて……運が良いんだか悪いんだか」
「てか加護持ちって何?」

 俺がそう言うと、リヒトは突然前髪を上げてずいっと顔を近づけて来た。
「まてまて近い」
「? 加護見せようとしただけ」
 鼻先がくっつくんじゃないかという距離感にびっくりしたが、リヒトの言葉に冷静になり改めて目の前の顔を眺めてみる。うわ、まつ毛長いし肌綺麗だしこりゃモテるわ……ってあれ?

 美術品を鑑賞するような気持ちでその整った顔面を眺めていると、右の瞳に何かきらりと光った気がした。
「なあ、なんか目に模様? みたいなのあるんだけど」
「うん。それが加護」
「ほぉん……綺麗だな」
 思わず目の下に手を添えて見入ってしまった。青い瞳の中に光輪のようなものが輝いていて、陽だまりのような暖かみまで感じられる。
「うん、やっぱり綺麗だ……ってどうした?」
「い、いや。なんでもない」
 柔らかな外見とは裏腹にはっきりとした物言いのリヒトにしては、珍しく(といっても初対面からそんなに時間は経っていないが)口ごもってしまった。ほんのり頬も赤い気がする。
「ああ、ごめんよくわからん奴に触られたら気持ち悪いよね」
 失敬失敬と言いながら俺は慌てて離れた。途中からまじで鑑賞気分だったからな……距離感つかみ損ねた。

「ちなみにこの加護、あんたと相性最悪よ」
「え? 相性とかあんの? てか最悪ってなんで?」
 リリーは何かぶつぶつ呟いたかと思うとそう言い放った。
「あんた、てかあんたら一族にも加護はあるけど、その加護と相性が悪いのよ」
 リリーは俺の耳元でリヒトに聞こえないようにそう囁いた。……あんたらってことはヘイアン家に関わることなのか。だからこっそり耳打ちしてきたんだな。
「ちなみにその加護って?」
「……まだ教えない」
「えーなんでだよ! ケチ!」
「ケチで結構。まあいずれ自然とわかるわよ」

「お知らせします。入学試験を受けた方は校舎正門へ集まってください。繰り返します。入学試験を受けた方は――」
 なんだか続きが気になる話の終わり方になってしまったが、入学試験の結果発表のアナウンスが入ったため俺達は人の波に乗って校舎の正門へ向かった。俺達の加護かぁ。名乗りとはまた違うんだよなきっと。
「リュヌ、同じクラスだと良いね」
「おぉ、そうだなぁ」
「私は嫌だけどね」
 なんか結構君たちの掛け合い軽妙だし相性良さそうだけどね、とはさすがに言えなかった。
 でもなあ、多分同じクラスは無理だと思うんだよな。俺、魔力量とか体力とか多分一般的だもん。それに引き換えリヒトが検査受けてるときなんかざわついてたしな。きっとこいつは主人公クラスの奴なんだ。

 正門前はかなり広いのにも関わらず、結構な人でごった返していた。結果発表というイベントに皆興奮しているのが伝わってくる。まあ、俺も結構ワクワクしている。少々ミーハーなところがあるためこうしたあまり日常にはないイベントには子供らしく興奮してしまうのだ。
「あ、あそこ見て」
「ん? おお! あれにどこのクラスか書いてあるのか」
 リヒトが指さす先を見ると、大きな紙が何枚か張り出されていた。人混みをかき分けて近づくと、話に聞いていた通り三クラス分の名簿と、兄達のような飛び級をした人なのか特別枠のような紙も貼りだされている。
「どれどれ……あれ、まじ?」
「うんうん、この私がついてるんだから当たり前の結果よね」
「良かったリュヌ、同じクラスだね」
 俺の予想とは裏腹に、俺達の名前はルーナクラスのところにあった。……え、でも特に検査官になんも言われなかったし、あれだけ場をざわつかせたリヒトと同じクラスだとは思えないんだけど。
「あんた、自分を過小評価しすぎなのよ」
「えぇ、だって俺なんも準備してないし……」
「あのね、まず魔力量は開花してる時点で基準値を大幅に超えてるわけ。体力はそこまで、かもしれないけど十分ルーナクラスになる素質はある。それに、あんた十歳にしては学力あるでしょ」
「でも全然なんも言われなかったよ?」
「そりゃそのローブの効果でしょ。成績は残るけど向こうからしたらあんたの印象は残らないのよ」
「なるほどね……」
 そういうことだったのか。なんというかこう、派手に「俺何かやっちゃいました?」って感じではないのが中途半端というかなんというか……。いやまあ一番上のクラスなのは十分嬉しいんだけどね。
「同じクラス、嬉しいね」
「あんたそればっかね。私からしたらあんたみたいなのが初等部にとどまってる方が不思議なんだけど」
「それは……お願いした」
「あぁ、まったくこれだからあの子の加護持ちは……」
 そうだよな。あのざわつき具合はもっと上の成績でもおかしくない。それをとやらで初等部に留まるとは……恐ろしい子!

「クラスを確認した人はそれぞれの教室へ向かってください」
 とりあえず俺たちは繰り返されるアナウンスに従い、ルーナクラスの教室へ向かった。
 おお、ついに学園生活が始まるんだな……!
 俺は一人不安とワクワクを抱えながら、平然としている二人と一緒に歩みを進めた。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた

雪兎
BL
あらすじ 全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。 相手は学年でも有名な優等生α。 成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに—— めちゃくちゃ塩対応。 挨拶しても「……ああ」。 話しかけても「別に」。 距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。 (俺、そんなに嫌われてる……?) 同室なのに会話は最低限。 むしろ避けられている気さえある。 けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、 その塩対応αだった。 しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。 「……他のαに近づくな」 「お前は俺の……」 そこで言葉を飲み込む彼。 それ以来、少しずつ態度が変わり始める。 距離は相変わらず近くない。 口数も少ない。 だけど―― 他のαが近づくと、さりげなく間に入る。 発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。 そして時々、独占欲を隠しきれない視線。 実は彼はずっと前から知っていた。 俺が、 自分の運命の番かもしれないΩだということを。 だからこそ距離を取っていた。 触れたら、もう止まれなくなるから。 だけど同室生活の中で、 少しずつ、確実に距離は変わっていく。 塩対応の裏に隠されていたのは―― 重すぎるほどの独占欲だった。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

悪役令嬢の兄、閨の講義をする。

猫宮乾
BL
 ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

処理中です...